男の痰壺

映画の感想中心です

ヘアー

★★ 2023年1月16日(月) 大阪ステーションシティシネマ

1979年の製作当時にも証文の出し遅れ感が濃厚な映画だった印象がある。そんなんで、そんときは見てないし、今回見た印象もなんだかなーです。

1969年にブロードウェイで初演されたミュージカルだそうで、ベトナム戦争真っ只中の膠着状態が厭戦の一大ムーブを巻き起こした頃だ。「ウッドストック」の年であり「イージーライダー」が作られた年。そんな中で作られてこそ意味があったんだろう。75年にベトナム戦争終結し、同年の「タクシードライバー」を経て79年には「ディアハンター」「地獄の黙示録」で全否定で総括される。その同年に本作は製作された。明らかに今更である。

79年当時の視座から69年を再解釈するくらいの大鉈が必要であった。映画は舞台からずいぶん改変されてはいるらしいが、ヒッピー稼業は楽しいなみたいな域を出ておりません。

 

田舎から従軍する為に上京した主人公をカウンターカルチャーの波が見舞う。でも、結果的に彼は変心するわけでもなく、なんとなく馬鹿騒ぎが面白く可愛い子がいて束の間楽しんだだけ。ちゃんと真面目に軍隊に行く。これが何かに目覚めて軍務を放ったらかしてトンズラこくってのならまだしもなんですが、映画はほとんど意味不明のブラックコメディもどきの展開を迎える。なんじゃこりゃです。コメディにも風刺にも諧謔にも届かない残尿感だ。

 

ミュージカルとしての醍醐味もほぼ無いっす。ミロス・フォアマンは「アマデウス」っちゅう傑作があったけど、あれもミュージカルじゃないしね。

 

ベトナム従軍の為に上京した青年をカウンターカルチャーの波が襲うが感化され変心するでもない。一夜の狂騒にお付き合いして楽しかったレベル。で意味不明のブラック展開にもつれ込むが皮肉にも繋がらない。ヒッピー讃歌への共振を喪失した証文の出し遅れ。(cinemascape)

 

kenironkun.hatenablog.com