男の痰壺

映画の感想中心です

2019-11-01から1ヶ月間の記事一覧

風立ちぬ

★★★★★ 2013年8月25日(日) MOVIXあまがさき11 恋も仕事も限定期間の最も美味しい部分のみを抽出し、人の一切の邪心・悪意は隠蔽される。水彩画のように儚い今際の際の美しいだけの思い出は、それでも黄泉の国と隣接し境界は融解してる。出会いと再会…

人情紙風船

★★★★★ 1981年5月20日(水) 関西学院大学学生会館大ホール 1982年9月22日(水) 新世界東宝敷島 出口無しの貧乏地獄でも人々は矜持と楽観を手放さない。多くの人物を交錯させつつ、それらを抽出した脚本の妙と中村・河原崎の体現する豊穣なダンディズム。ペシ…

ブライトバーン 恐怖の拡散者

★★★ 2019年11月24日(日) MOVIXあまがさき9 どうもなあな出来だと思う。 【以下ネタバレです】 それまで人間として育てられた少年が、何かの契機で覚醒するのだが、そのことに対してのアイデンティティの確執はほとんどない。 スーパーマンの裏返しと…

男はつらいよ 幸福の青い鳥

★★★ 2013年8月17日(土) トビタ東映 庇護者と化した寅が最早、物語を牽引するに適わぬことは知れたことなのだが、にしても途中、別映画かと思える悦子・長渕への尺の割き方で、これが又相も変わらぬ時代錯誤感を纏うのも毎度のこと。筑豊シークェンスが総じ…

少女娼婦 けものみち

★★ 1981年6月4日(木) 毎日ホール 少女が男を乗り変えるに際してのスッタモンダを持って回った観念劇エッセンスで修飾して可愛げが無い。加えて、母親との関係描写がでてくると益々何が何だか解んない世界で、煙に巻く寺山なら未だしも神代では見てられない…

アイリッシュマン

★★★ 2019年11月25日(月) シネマート心斎橋2 以前、スコセッシはフィルムへの拘りを語る作家だった。 はずであるが、そういう拘りの人なら、当然にスクリーン投影の映画館主義であってもいいはずなのに、NET配信映画になびいた。 かわりに、明後日の方…

日本の悲劇

★★★ 2013年9月5日(木) 第七藝術劇場 このテーマに対して爺さんの懐旧譚的アプローチしかないんかいと思えてしまう。システムの破綻や生存力の劣化など息子サイドからしか見えないものが抜けてる。後姿ばかりで大芝居を封殺された仲代は好演だが北村は違う…

ええじゃないか

★★★ 1981年5月18日(月) 伊丹グリーン劇場 空前のスケールに於き今村一世一代の大勝負だが見事に外した。騒乱に収斂されていく多様な人間群像が余りに図式的。大オープンセットも象も「それふけ小屋」も姫田とは思えぬ平板さ。役者は総花的だが意外性も無い…

雷鳴の湾

★★★★★ 2019年11月23日(土) プラネットスタジオプラス1 ここ何年かアンソニー・マンの映画を折にふれ見てきてるけど、これは傑作だと思う。 まあ、大傑作だってのとはちょっと違うと思うが、大好き作ではあります。 冒頭、よれよれになって田舎道を歩いて…

マン・オブ・スティール

★★★★ 2013年9月5日(木) MOVIXあまがさき5 実存としてのスーパーマンを曲りなりにも描く試みが高踏的で退屈であったとしても買ってみたい気がしたが、恋人や母の危機を救うのに怒りに任せてボコ殴る変調を契機にここまでやるかの一大都市破壊ショーの…

裁かるゝジャンヌ

★★ 1981年6月14日(日) SABホール 一旦乗り遅れてしまうと最早収拾がつかないまでに顔の接写が連続し数億光年の彼方に置き去りにされてしまいアホみたいに多少もう少し色っぽかったらなんてことばかり思い続けてしまう。気持ちのテンションさえ維持でき…

T-34 レジェンド・オブ・ウォー

★★★★ 2019年11月20日(水) 梅田ブルク7シアター3 まあ、言いたいことは山ほどある。 昨今の映画はみんなそうだが、展開が性急すぎてタメがないので、なんとなく総集編を見せられているようなサクサク感で、それって時代の要求なんだろうが、コクがない。 …

フリーランサー NY捜査線

★★★★ 2013年5月13日(月) 新世界国際劇場 復讐譚的骨子は便宜に過ぎないと思えるほどにプロット毎の即物的叙事性が秀でている。その暗黒の海の底で獲物を窺うデ・ニーロの邪悪は流石の安定だが、白眉はウィテカー。善悪の境界は一元ではない。作り手はイヤ…

ブリキの太鼓

★★★★ 1981年5月22日(金) 三番街シネマ3 自ら成長を止めた割に傍観するだけのオスカルは或る意味歯痒く、歴史に翻弄される欧州地方小国家のメタファーだとしたら、この爛れた性関係ばかりを追った展開はかなりに悪意に充ちて自虐的。外連に充ちたナチスの…

嘆きの天使

★★★★ 2019年11月17日(日) プラネットスタジオプラス1 子供の頃にTV放映で見て、トラウマになるくらいの衝撃を受けた記憶がある。 それから随分と歳経てどうやろかと思ったが、サディスティックなまでの甚振りと嗜虐の怒涛の流れは、まあ、そこに特化し…

ドラゴン・タトゥーの女

★★★ 2013年6月8日(土) トビタシネマ 請負仕事を無難にこなしているが、抽斗の範囲に留まり新たな何かを模索した形跡は感じない。事件を追う主人公と無関係なリスベットの描写が並立する前半に穴があるのだから、どうせなら、もっと解体再構築するべき。彼…

アリスのレストラン

★★★★ 1981年5月23日(土) 毎日文化ホール 反体制というほどの気構えもないフラワーなヒッピーライフは同年の『イージー・ライダー』と合わせ鏡でベトナム時代の楽天主義も一方の真実だったのだろう。良血アーロ・ガスリーの品良いおぼっちゃん顔が見た世界…

最初の晩餐

★★★★ 2019年11月9日(土) テアトル梅田2 シャレのようなタイトルであるし、家族ものってことでワイワイガヤガヤのコメディチックなものかと思ったら、予想外に、これは静謐に真摯に家族の在り様を描いたものであった。 2人の子持ちのチョンガー男と1人の…

ムービー43

★★★★ 2013年8月24日(土) テアトル梅田1 睾丸や下痢便をモチーフにする高度に幼児的単線ギャグが冴え序盤で鷲づかみにされかけたが、中盤以降は変態度がスーパーとまではいかずシュールの域に留まる。若干ダレかけたところでド腐れ猫が登場し立て直した。…

乾いた湖

★★ 1981年6月19日(金) 今津文化 テロリストの誕生を語るのに社会的敗者を対比させるのが青臭い。しかも寺山はファッションとしてのテロルに憧れるだけで、それをヒトラー崇拝等の形骸でしか表現し得ない。そして否応なく彼の本質が敗者の側にあることを露…

ターミネーター ニュー・フェイト

★★★ 2019年11月10日(日) MOVIXあまがさき6 「2」の正統な続篇だそな。 でも、俺は「3」の方が、ちゃんと地続きで正統に思えた。なんといってもサラが退場してジョン・コナーが継承した物語であったわけで、それがイケメンから非イケメンに役者が変…

やがて哀しき復讐者

★★★★ 2013年6月24日(月) トビタシネマ 傲慢でイケ好かない親爺とパープー娘がどうなっても知ったこっちゃないが、そんな親子に粛々と仕えるリッチー・レンの佇まいが粋。過剰なセンチやプロットの安さはあるが、開発担当の部下やシングルマザーの内通者や…

泥の河

★★★★★ 1981年6月17日(水) 梅田東映ホール 高度成長期の端緒は人々が未だ哀しみを噛み殺していた時代でもあったという述懐で、少年は幾度もの喪失を乗り越えやがてモーレツ時代の洗礼を受ける。出会いに始まり別れで終わる泥河べりの物語は慈しみに充ちた作り…

解放区

★★★★ 2019年11月9日(土) テアトル梅田2 5年近くもお蔵入りになったという、この映画をめぐる背景についてだが。 そもそも大阪市が母体となって運営されているCO2という映像制作にかかわる助成団体に企画を通して製作されたが、西成のあまりにアンダー…

サイド・エフェクト

★★★★ 2013年9月11日(火) TOHOシネマズ梅田7 アングルやサイズのジャストミート感や編集リズムの快楽といった語り口の次元に於いて、ソダーバーグは現在進行形では最高ランクのアルチザンになった。正味、惚れ惚れするのだが、広げた大風呂敷を凡庸に…

魔性の夏 四谷怪談より

★★ 1981年6月1日(月) 伊丹グリーン劇場 一種の群像劇的アプローチを試みたはいいが、結局は相変わらずの伊右衛門の虚無的心情に依存しているのでは何も新しいものも無く、ショーケンも蓮司も多分にルーティーンで気障な前衛風味だけが意味なく空回りする。ピ…

スエズ

★★★ 2019年11月9日(土) プラネットスタジオプラス1 朝、家を出るときには、この映画はスルーしてギャスパー・ノエの「クライマックス」を見ようと思っていたのだが、電車の中で何気なくフェイスブックを開くとT氏がプラネットの「スエズ」の記事をシェア…

アフター・アース

★★★ 2013年9月14日(土) 新世界国際劇場 「帰れ」という父の言葉を無視する崖の場が転機となり物語が転がるはずが、ありきたりな展開を消化するだけに終わってる。伝承譚としても世代交代の説話としても父スミスの役不足が決定的。しかし、ジェイデン可愛い…

明日に向って撃て!

★★★★ 1975年6月1日(日) 阪急プラザ劇場 1976年4月18日(日) 伊丹グリーン劇場 どうやっても躱し切れない追手の松明の灯りにアウトローであることの虚飾ない居た堪れ無さが心に沁みる。無口な人嫌いが絞り出す「泳げない」の一言と眼差しの哀しみ。この中…

永遠の門 ゴッホの見た未来

★★★★ 2019年11月8日(金) 大阪ステーションシティシネマ7 多分、全篇の9割くらいが手持ちカメラで、これが頻繁にパンニングする。被写体を追ってのそれではなく、被写体A→B、B→Aといったのをやるのでイラつく。 元来、手持ちの妙味ってのはライブ感で…