男の痰壺

映画の感想中心です

2019-01-01から1年間の記事一覧

第三夫人と髪飾り

★★★ 2019年11月30日(土) テアトル梅田1 若い女性監督が、女性が虐げられていた時代を描く。 ってのが、そもそもに胡散臭いのであって、なぜなら今現在の作家の内実からほとばしる魂の叫びってのが物語を希求したものではないように思えるのである。 富裕…

謎解きはディナーのあとで

★★★★ 2013年8月20日(火) 大阪ステーションシティシネマ9 汚点とさえ思われたTVでの役との遊離も、劇画に平伏したクソ演出が功を奏し真面目に見る気を萎えさせマイナス二乗で吉と出た。この緩く賑々しいお祭り気分こそ正調昭和お盆映画の復刻。赤いドレ…

アタラント号

★★★★ 1981年5月21日(木) 関西学院大学学生会館大ホール 1992年5月10日(日) ルネサンスホール 上流から下流へ田舎から都会へと小さな船で下って行くってのがミソで、流れる景観は開放と希望を表象する。船内密閉空間でも気の置けぬ爺さんとガキに囲まれ若夫…

マリッジ・ストーリー

★★★★★ 2019年11月30日(土) シネリーブル梅田1 夫婦の離婚をめぐるあれやこれやを描いて、ほぼ夾雑物はない。 真っ向勝負の力作であって、このテーマを描いた傑作群の中でも新たなマスターピースになると思われる。 なんでかって言うと、だいたいそういの…

メリー・ポピンズ

★★★ 2013年8月24日(土) 大阪ステーションシティシネマ6 彼岸から来たメリーに対し此岸にもヴァン・ダイクがいるのがミソで、子供放ったらかしで2人でよろしくやってるのが教条主義臭を廃してる。それでも結局は人間性の回復なぞ謳うしかない限界。総じ…

ザ・ウーマン

★★ 1981年5月18日(月) 伊丹グリーン劇場 モラルに囚われず奔放な性遍歴を重ねる主人公なのに生へのバイタリティも突き動かされる情念も感じ取ることは出来ない。かと言って、ひたすらに隠微な世界に没入し切ることも適わず凝った撮影や美術のみが虚しく浮…

痴人の愛

★★★ 2019年11月23日(土) プラネットスタジオプラス1 谷崎の作品ではなくサマセット・モームの「人間の絆」の映画化作であり、なんでも日本公開の10年ほど前に谷崎作品が新聞連載され好評を博したとこから、配給会社がいただいて邦題にしたんだそうな。 …

ワールド・ウォーZ

★★★★ 2013年8月18日(日) MOVIXあまがさき9 おっ広げただけではなく、有事の際の情報伝播の覚束なさと、収束への可能性を絶望的不確実性のなか探る旅路を描いた点に於いて新しい。韓国→イスラエル→スイスという地理展開にある種キナ臭さを感じぬでも…

チャンス

★★★ 1981年5月17日(日) 梅田ロキシー 無茶ぶりできるセラーズに純粋結晶なプレーンキャラを当てたセンスはいいとして、彼が浄化する政界がもっと激しく汚濁に塗れててくれぬと物語は転がらずカタルシスも生まれない。高級感は滅法あるが薄味な割烹料理みた…

殺さない彼と死なない彼女

★★★★★ 2019年11月27日(水) 梅田ブルク7シアター5 女子向け映画が隆盛を極めている感があって、正直、食指動くわけないし、おじさんが1人で見に行くってのは敷居が高いんですが、それでも映画を見るにジャンル横断主義を掲げる俺やないかと自らを鼓舞し…

ペントハウス

★★★★ 2013年4月13日(土) トビタシネマ 出がらしを集めて絞れば案外美味い出汁が出た的妙味もあるのだが、存外に素晴らしいトランプタワーのロケ効果とリアルな感謝祭パレードを取り込んだ臨場感。ラトナーの演出力も舐めたもんじゃないと思わせた。ランデ…

なんとなく、クリスタル

★★ 1981年6月1日(月) 伊丹グリーン劇場 浮気したけどバレなかったよーん的形骸化したものしか残っていないから耐え難い。時代を撃つなり身を委ねるなりをしなければ意味を成さない企画。アイデアも同時代感覚が欠如した松竹の老害体質の露呈。せめて東宝な…

IT THE END “それ”が見えたら、終わり。

★★★ 2019年11月25日(月) 梅田ブルク7シアター4 前作のヒットで予算が上がったんだろうが実に堅牢な作りで、昨今のワンアイデア勝負のこの手のジャンルムービーの中では格が上だと思う。 ただ、それは見てくれの格であって、堅牢なだけでは満足するかって…

RETURN ハードバージョン

★★★★ 2013年8月24日(土) テアトル梅田1 半端な原発への言及や極右的コングロマリットの胡散臭さなど相変わらずの原田の信用できなさではあるが、一方アンナ筆頭の極悪3姉妹の千葉=大友イズム継承や椎名のカポエラの粗の見えなさ。歪な魅力には事欠かない…

バタフライはフリー

★★★ 1981年5月23日(土) 毎日文化ホール ヒッピー娘っ子に良識派旧世代はギャフンという良くも悪くもフラワームーヴメントな背景抜きには語れない題材。しかし、終盤の展開に、そういった世代間の相克が直結していかないのでカタルシスがない。ゴールディの…

ひとよ

★★★★★ 2019年11月21日(木) TOHOシネマズ梅田4 展開的に何か見たことないような綾があるわけでもない。 むしろ、母息子の確執に限って言えば、なんやねんやっぱそういうことやんか。 ということなのであるが、それにしても一家ととりまく地域社会の濃…

風立ちぬ

★★★★★ 2013年8月25日(日) MOVIXあまがさき11 恋も仕事も限定期間の最も美味しい部分のみを抽出し、人の一切の邪心・悪意は隠蔽される。水彩画のように儚い今際の際の美しいだけの思い出は、それでも黄泉の国と隣接し境界は融解してる。出会いと再会…

人情紙風船

★★★★★ 1981年5月20日(水) 関西学院大学学生会館大ホール 1982年9月22日(水) 新世界東宝敷島 出口無しの貧乏地獄でも人々は矜持と楽観を手放さない。多くの人物を交錯させつつ、それらを抽出した脚本の妙と中村・河原崎の体現する豊穣なダンディズム。ペシ…

ブライトバーン 恐怖の拡散者

★★★ 2019年11月24日(日) MOVIXあまがさき9 どうもなあな出来だと思う。 【以下ネタバレです】 それまで人間として育てられた少年が、何かの契機で覚醒するのだが、そのことに対してのアイデンティティの確執はほとんどない。 スーパーマンの裏返しと…

男はつらいよ 幸福の青い鳥

★★★ 2013年8月17日(土) トビタ東映 庇護者と化した寅が最早、物語を牽引するに適わぬことは知れたことなのだが、にしても途中、別映画かと思える悦子・長渕への尺の割き方で、これが又相も変わらぬ時代錯誤感を纏うのも毎度のこと。筑豊シークェンスが総じ…

少女娼婦 けものみち

★★ 1981年6月4日(木) 毎日ホール 少女が男を乗り変えるに際してのスッタモンダを持って回った観念劇エッセンスで修飾して可愛げが無い。加えて、母親との関係描写がでてくると益々何が何だか解んない世界で、煙に巻く寺山なら未だしも神代では見てられない…

アイリッシュマン

★★★ 2019年11月25日(月) シネマート心斎橋2 以前、スコセッシはフィルムへの拘りを語る作家だった。 はずであるが、そういう拘りの人なら、当然にスクリーン投影の映画館主義であってもいいはずなのに、NET配信映画になびいた。 かわりに、明後日の方…

日本の悲劇

★★★ 2013年9月5日(木) 第七藝術劇場 このテーマに対して爺さんの懐旧譚的アプローチしかないんかいと思えてしまう。システムの破綻や生存力の劣化など息子サイドからしか見えないものが抜けてる。後姿ばかりで大芝居を封殺された仲代は好演だが北村は違う…

ええじゃないか

★★★ 1981年5月18日(月) 伊丹グリーン劇場 空前のスケールに於き今村一世一代の大勝負だが見事に外した。騒乱に収斂されていく多様な人間群像が余りに図式的。大オープンセットも象も「それふけ小屋」も姫田とは思えぬ平板さ。役者は総花的だが意外性も無い…

雷鳴の湾

★★★★★ 2019年11月23日(土) プラネットスタジオプラス1 ここ何年かアンソニー・マンの映画を折にふれ見てきてるけど、これは傑作だと思う。 まあ、大傑作だってのとはちょっと違うと思うが、大好き作ではあります。 冒頭、よれよれになって田舎道を歩いて…

マン・オブ・スティール

★★★★ 2013年9月5日(木) MOVIXあまがさき5 実存としてのスーパーマンを曲りなりにも描く試みが高踏的で退屈であったとしても買ってみたい気がしたが、恋人や母の危機を救うのに怒りに任せてボコ殴る変調を契機にここまでやるかの一大都市破壊ショーの…

裁かるゝジャンヌ

★★ 1981年6月14日(日) SABホール 一旦乗り遅れてしまうと最早収拾がつかないまでに顔の接写が連続し数億光年の彼方に置き去りにされてしまいアホみたいに多少もう少し色っぽかったらなんてことばかり思い続けてしまう。気持ちのテンションさえ維持でき…

T-34 レジェンド・オブ・ウォー

★★★★ 2019年11月20日(水) 梅田ブルク7シアター3 まあ、言いたいことは山ほどある。 昨今の映画はみんなそうだが、展開が性急すぎてタメがないので、なんとなく総集編を見せられているようなサクサク感で、それって時代の要求なんだろうが、コクがない。 …

フリーランサー NY捜査線

★★★★ 2013年5月13日(月) 新世界国際劇場 復讐譚的骨子は便宜に過ぎないと思えるほどにプロット毎の即物的叙事性が秀でている。その暗黒の海の底で獲物を窺うデ・ニーロの邪悪は流石の安定だが、白眉はウィテカー。善悪の境界は一元ではない。作り手はイヤ…

ブリキの太鼓

★★★★ 1981年5月22日(金) 三番街シネマ3 自ら成長を止めた割に傍観するだけのオスカルは或る意味歯痒く、歴史に翻弄される欧州地方小国家のメタファーだとしたら、この爛れた性関係ばかりを追った展開はかなりに悪意に充ちて自虐的。外連に充ちたナチスの…