男の痰壺

映画の感想中心です

2021-01-01から1ヶ月間の記事一覧

KCIA 南山の部長たち

★★★★ 2021年1月23日(土) シネリーブル梅田2 何とか悪い流れを断ち切って、あるべき方向に変えたい、ともがいてもどんどん状況は悪くなっていき、挙句はのっぴきならない顛末を招いてしまう。 いくつかの任侠映画の達成を思わせるし、現在放映中の大河ドラ…

汚れた英雄

★★ 1983年1月12日(水) トーエイ伊丹 削ぎ落としたのではなく描ける内容が限られてるから無機的になった。結果的に女をこますこととバイクを走らせることという事象に特化して純粋映画になることもできたろうに哀しくも角川の精神支柱はどうしようもなく浪花…

冷たい雨に撃て、約束の銃弾を

★★★ 2011年3月12日(土) トビタシネマ 序盤のホテルでの襲撃シークェンスのスタティックな構図とローリングするカメラ使いに期するが、又かの仲良し親爺どもの青春遊戯のリフレインに心折れる。100年前の開拓時代の信義則を信奉するジョニー・トーにピエ…

消しゴム

★★ 1984年12月8日(土) 千日会館 言いたいことは解るのだが、直截的すぎでだからどうした?としか思えない。勿論だからどうしたの映画は世に幾らでもあるが、最低限そこを新奇で斬新なイメージで補追して欲しい。本作は従来の寺山キーワードの使い回しでしか…

ヒッチャー

★★★ 2021年1月17日(日) シネマート心斎橋2 カルティックな評価を受けた作品で、それだからこそ40年弱の歳月を経て再上映されたんだろうが、やっぱ少なからず風化してると思う。初見です。 車の運び屋が主人公ってところが「バニシング・ポイント」を、…

冷たい熱帯魚

★★★★★ 2011年2月19日(土) シネリーブル梅田1 正直黒沢・神楽坂・梶原のミニスカ揃い踏みな女趣味だけで充分堪能してしまうが、この世界構築への確信的腹の据わり方には陶然とする。ダメなもんは破壊し尽くせというアナーキーな主張を一転ピンキーバイオレ…

山猫

★★★★★ 1983年1月17日(月) 戎橋劇場 階級闘争の必然を頭で理解しつつ、しかし心は没落の鎮魂歌に拠っている。ヴィスコンティの立ち位置の余りに明晰な映画構造とのシンクロ。全ての思いの混濁を飲み込み圧縮破壊する40分の舞踏会の熱暑と重厚。その男の意地…

ビッチ・スラップ 危険な天使たち

★★★★ 2011年3月12日(土) 新世界国際劇場 『チャリエン』と『デス・プルーフ』を掛け合わせ劣化させたあと、お下劣な女権信仰を全面開花させ押しまくる破廉恥だが戦略的な潔さ。無意味な時制往還もアホだし強烈なサブキャラ群も嬉しくもゲスだが、ラストは…

キル・チーム

★★★ 2021年1月23日(土) シネリーブル梅田3 実話に基づいてるって重みを加味しても尚、手垢のついた題材。米軍隊内部の腐敗を描いたものは「プラトーン」や「カジュアリティーズ」など枚挙にいとまがない。 しかも、低予算であるから派手な戦闘シーンなど…

ディーバ

★★ 1984年12月9日(日) 大毎地下劇場 キャラクターの配置がまずありきなことを了承しても、バックヤードの肉付けこそ生命線なのに、驚くほどの脳内箱庭世界に留まり安住する安易さ。黒人歌姫・郵便配達人・殺し屋・ベトナム少女といった記号は思わせぶりであ…

ヒア アフター

★★★★ 2011年2月26日(土) 梅田ブルク7シアター7 拠り所を失い彷徨う魂のミクロな邂逅の物語がスペクタクルを混じえた巨視的視座で語られつつ、でも、あくまで奥床しいあたりがキェシロフスキ的とさえ思わせる。達観したかのような新たな境地を垣間見せた…

伽倻子のために

★★★★ 1984年12月23日(日) 三越劇場 在日であることのアイデンティティは寧ろ物語の方便としてのみ機能してると見るべきで、特化して描かれるのは社会から孤絶した静謐な世界での恋人同士の時間の絶対的至福。北海道という地勢が生む清涼感と水道管検査人を始…

わたしは金正男を殺してない

★★★ 2021年1月14日(木) 新世界国際劇場 事件の前、実行者に信じ込ませるために、何度もイタズラ動画の撮影を行ったとか、事件後、拘束された彼女達が裁判でどのような顛末に至ったか、など興味深いっちゃあそうなんだが。 まあ、しかし、この事件の構図は…

あしたのジョー

★★★ 2011年3月6日(日) MOVIXあまがさき8 原作がそうなのだから言っても詮無いが、ファイト場面がノーガードのクロス狙い一辺倒で芸無く、決めもCG塗れのケレンを強要され不快。だが、それ以外の世界のトレースは巧緻で、キャストも香川を筆頭に敢…

次郎長青春篇 つっぱり清水港

★★★ 1983年1月4日(火) 伊丹ローズ劇場 手垢のついた題材を手垢のついた役者を揃えて賑々しくリニューアルというアイデアは正月映画らしくて悪くない。しかし、何がつっぱりなのか解らん坊ちゃん中村主演ではカラーワイドの画面をはみ出すような躍動感は生じ…

シリアスマン

★★★★★ 2011年3月17日(木) テアトル梅田2 ついてない男のスケッチを、得意の一見意味深な無意味ネタで彩ってみせるが、『バーン・アフター』以上の精緻さを獲得した小技の応酬は最早名人芸と言うしかない。緩やかに奈落に向かう顛末は一抹の救いを見せた後…

大コメ騒動

★★★ 2021年1月19日(火) TOHOシネマズ梅田5 どこが「大」やねん、寧ろ「未満」ちゃうん。 俺の中にある米騒動のイメージは、民衆が米屋に押しかけ、戸板を打ち壊し蔵になだれ込み埋蔵米を掠奪する。 そんな感じなんだが、この映画の騒動は女たちが米屋…

さすらい

★★★ 1983年1月22日(土) 神戸青少年会館研修室 一応は起点があり終点のある物語なのだが、間に挟まれた2時間強に物語を転がすものがほとんど無い。ミューラーの暖調モノクロ映像とロックミュージックに補完された親爺2人の長い無言旅からは気恥ずかしさを相…

ウルフマン

★★★ 2011年3月12日(土) 新世界国際劇場 辛うじてホプキンスが変奏を担うが、所詮何の新味もない企画であり、又かのリック・ベイカーフィーチャーの変身も今更。ロンドンのCG多用もうんざりだが、美術は特筆だと思うし、それを明晰な光で捉えた撮影も良な…

伊賀忍法帖

★★★ 1983年1月12日(水) トーエイ伊丹 確信的にやってるのか、或いは『ワタリ』や「赤影」のテイストを伝統の名のもと天然で踏襲しているのか知らないが、ただただ一言レトロであって、煎じ詰めれば良い。ただ、哀しいことに第三の新人渡辺典子にオーラが大し…

グンダラ ライズ・オブ・ヒーロー

★★★★ 2021年1月14日(木) 新世界国際劇場 マーベルやDCユニバースの映画を見ても、セントラルキッチンで調理されたファミレスの料理みたいなもんで、もはや何の刺激も感じなくなった俺であるが、インドネシア産のこれは、プリミティブな情動が充ちている…

アンチクライスト

★★★★ 2011年3月17日(木) テアトル梅田1 再生が語られるかと思うそばからの予想外の急展開。「マタイ受難」な落としどころを擦り抜け最果てに提示される全否定。その意味することの可否や好悪を乗り越え、世界に1人背を向けて立つトリアーの孤絶感。少な…

父と子

★★★ 1983年1月23日(日) 伊丹グリーン劇場 力のある役者を揃えて端正な画角で丁寧に作られているとは思うがとにかく地味。父と息子の相克が和解に向かって1点の謎解きに収斂されて行くのが社会的メッセージ性を露呈させ純粋人間ドラマの醍醐味を後方に追い遣…

タイムリミット

★★★ 2011年3月12日(土) トビタシネマ 二重三重の苦境が釣瓶打つ追い込まれ型サスペンスの良作なのだが、追い込むエヴァが主人公を憎からずなのが仄甘くて悪くもないにせよ、でもやっぱり構造を緩める。痛し痒しとでも言おうか。匙加減の按配の微妙なズレが…

鼻出しの我欲と権利

「そこのあなた、マスクずれてるから、ちゃんと鼻まで覆ってくれるかな」 「…」 「うーん、聞こえた?適正な着用が決まりだから、鼻出てるとダメなの」 「…」 「あなただけが受けてる試験じゃないから、決まり守ってくれないと」 「…」 「なるほど、そういう…

迷宮譚

★★ 1984年12月8日(土) 千日会館 映画とはフィルムに内包された世界で完結はしないという趣旨は同意するが、それがドアというメタファーで表象されるのがピンとこないし安易で稚拙だと思う。無味乾燥な主題が天井桟敷風味のグロとエロで味付けされただけで、…

トゥルー・グリット

★★★★ 2011年4月9日(土) TOHOシネマズ梅田10 対話による交渉を主なモチーフとした前半は微妙な間も活き、俯瞰のロングで処理される待ち伏せの静謐の妙も冴える。しかし、プロットを支配したニヒリズムは後段では失われ規定の安寧なモラリズムへと収束…

ファイブ・イージー・ピーセス

★★★ 1983年2月25日(金) 伊丹ローズ劇場 ラズロ・コヴァックスの画面には守旧派的伝統美とニューシネマのモラトリアムが絶妙のバランスで混在して良いのではあるが、殊更に脱出願望を顕わにする主人公のそのしがらみが断罪すべきまでとも思われず切実味がない…

チャンシルさんには福が多いね

★★★★ 2021年1月13日(水) シネリーブル梅田4 昨年の日本映画「私をくいとめて」と極めて似ているが、俺はこっちの方がいいと思いました。 だって、アラサーの可愛い女子の悩みなんてたかが知れてるし、まだまだいける年齢だと思いますが、アラフォーの普通…

ラスト・ソルジャー

★★★ 2011年3月12日(土) 新世界国際劇場 それなりの大作なのだろうが、哀しいまでの今更感が横溢する題材の中、ジャッキーのオチャラケにも最早シャレとして微苦笑を送る気も失せる。それでも、真面目な彼は確信的で揺るぎは無さそう。それこそが後世に神話…