男の痰壺

映画の感想中心です

映画感想【ああ~あこ】

青い春

★★★★ 2002年8月17日(土) 梅田ガーデンシネマ2 ありがちな家庭環境とかの背景を一切削ぎ落としたのは映画の純度を高めてはいるし、語り口も切れが良いが、傍系人物のわかり良さに比べ主人公の虚無感がどうにも借り物臭い。演じる松田龍平が所詮ボンボンだか…

赤いシュート

★★ 1993年2月11日(木) 扇町ミュージアムスクエア がむしゃらにやって来たが突如これで良かったのかと振り返る自分史。魅力的な構成だが、どっちつかずのモレッティの風貌同様にアプローチが緩くて上滑りにしか感じられない。『81/2』級の映画的造形への拘り…

赤線地帯

★★★ 2002年9月9日(月) 高槻松竹 ピークを迎えた女優と忘れられクスブってる女優を、その通りの配役で使う冷徹さが溝口の溝口たる所以だったのだろうが、京と若尾の挿話は図式的で木暮と三益の部分が胸に沁みるのも溝口だったからこそとも言える。(cinemascap…

赤穂城断絶

★★ 1993年2月28日(日) トビタ東映 何でもありの『柳生』の次に「忠臣蔵」とは企画力が圧倒的に貧困で約束事の名場面集を寄せ集め俳優を使って深作流の或る意味バタくささで形成しただけに過ぎない。東映が狼煙を上げた時代劇復興の掛け声は2作目にして夢の…

OUT

★★★★★ 2002年10月21日(月) 梅田ピカデリー1 誰もが一線を越えたいと思っているし越えてしまえるのだということ、そして、その後には刹那であるにせよ人は解放される。日本版『テルマ&ルイーズ』めいてもディテールの巧さがカバーし切る。原田は良くて当り…

愛について、東京

★★ 1993年3月21日(日) テアトル梅田2 ある意味したたかに生き抜いていく在日外国人達に抗する日本人がインポテンツに悩める半端ヤクザってのが余りに偽悪的であり被虐趣味にしか見えない。バブル真っ直中の90年代の「東京」はもとより「愛」についても描…

赤い夕陽の渡り鳥

★★★ 2002年10月26日(土) トビタ東映 白木マリを軸にした三角関係の横っちょで旭とルリ子はあくまで明朗に光輝く。正統派のヒーロー・ヒロインってのはそういうものなのだろうけど、穢れどこ吹く風情は感情移入の余地なく何となく物足りない。磐梯山の雄大な…

赤い影

★★★ 2022年4月25日(月) シネヌーヴォ イタリア資本下のジャーロ風味を感じるという点でダリオ・アルジェントを、音楽ピノ・ドナジオからデ・パルマをと、影響されたんじゃないかと思って調べてみると「サスペリア」や「キャリー」より前の作品なんですね、…

続・新悪名

★★★ 1993年6月13日(日) 日劇シネマ いいかげんなタイトルが甚だしく興を削ぐし、最早シリーズの根幹を左右する事件も起きる訳でもない。だが、シリーズ主幹田中徳三の再登板もあり安定的な円みと弾力が全篇を支配。スタッフもキャストも4作目ともなると最も…

アカルイミライ

★★★★ 2003年2月15日(土) シネリーブル梅田1 暗喩としての「友人」や「クラゲ」は生硬と感じるが突然視野が開けて世界観が変わるのは解る気がする。前世代の屍を足掛かりに閉塞から殻を破って飛び立つ主人公は、やがて次なる世代に乗り越えられるだろう。そ…

洲崎パラダイス 赤信号

★★★★★ 1993年6月20日(日) サンポードアップルシアター 虚無とか不毛とか殊更に言わずとも地に足をついたアンチドラマチックな日常のドラマを描きながら例えようの無い無常感が滲み出ている。ちんけな憐憫も同情も拒絶したそれは川島が狙ったものではなく本質…

赤と黒の接吻

★★★ 1993年8月29日(日) 第七藝術劇場 大真面目に撮られたもので演出の力量もあるとは思うのだが、何もかも入れ込みたいと思う余りに骨子も据わらなかった。若い主人公ではなく親父世代に物語が帰結してしまう辺りが構造的欠陥。これでは散漫の謗りも免れない…

愛の奴隷

★★ 1993年9月14日(火) 第七藝術劇場 遠くで革命の嵐吹き荒ぶ政治の季節に享楽映画を撮り続けるが時代に背を向ける矜持があるわけでもない。末端シンパに女優をオルグらせてみせてもミハルコフの本質は快楽イズムにあることは透けて見える。ただラストシーク…

赤い航路

★★★★★ 1993年9月25日(土) 池田映劇 冒頭の乳白色の海の深みに誘われ突入する目眩く変態性欲世界は文学情緒満載で時制の構成も巧緻。依存と乖離を往還しながら堕ちてゆく男と女の腐れ縁の帰結はそれ以外にあり得ない必然。そして突き放す。物語のバイブレーシ…

the EYE [アイ]

★★★ 2003年6月7日(土) 梅田ガーデンシネマ1 下手なCGに依存せず超望遠レンズの駆使で見せるところに作家魂を感じたし、もの哀しい孤独な叙情感の表現にも惹かれたが、新旧古今東西の映画や漫画のアイデアを凌駕するものが1つでもいいから欲しかった。 ke…

IP5 愛を探す旅人たち

★★★ 1993年11月27日(土) ACTシネマテーク 昔の恋人に会いに行きたいと思う老人の情熱が疲れヌーボーとしたモンタンから感じ取れず、彼に随行する若者2人の心情にいたっては作為的で全く共感できない。世間体への阿りに支配されている。再三の凝った画作…

赤西蠣太

★★★★ 2003年12月2日(火) 高槻松竹 『博士』のセラーズもかくやの千恵蔵2役。特に稀代のピカレスクヒーロー原田甲斐には参った。伊丹演出もここぞとばかりの仰々しきハッタリをかまして絶品。少々クドい諧謔趣味を割り引いてもモダニズムの残滓は余りある。(…

アイデン&ティティ

★★ 2004年1月6日(火) テアトル梅田1 タカビー女と幻影に依存し続けるヘタレ男が能書きだけは一丁前に垂れてはみたが言うだけ番長というダメさ加減に共感は皆無。田口に「転がる石ころ」という自覚があったのならディランで締めたエンドは逆説的に意味を成す…

青べか物語

★★★ 1992年3月22日(日) 日劇シネマ 川島が今村の師匠であったことを考えれば決して不似合いな世界とも思えないし、ごちゃごちゃした世界を捌く手際は認めるが、何分淡泊に過ぎるし、大体森繁がミスキャストと思う。語り部に徹するには俗世の垢にまみれ過ぎて…

悪霊喰

★★★ 2004年3月2日(火) 天六ユウラク座 ヘルゲランドは『ペイバック』『ROCK YOU!』と見る限りフランケンハイマーの再来とさえ思っていたのに、絶倫爺イーストウッドと2本組んで精も根も吸い取られたのだろう。出し殻みたいなダブルフォーカスの縦構…

赤目四十八瀧心中未遂

★★★★ 2004年4月14日(水) 第七藝術劇場 無骨とも言える骨太な話法に惹かれる。文学崩れの青年の厭世観がそのフィルターを通して構築された異世界「尼」から拒絶される前半は痛い位に納得性があるが、寺島しのぶに絞っていく後半ではそのフィルターが邪魔。取…

愛と死の間で

★★★ 1992年5月9日(土) 高槻セントラル ヒッチタッチならぬデ・パルマ風が関の山のブラナー演出は結局のところ出涸らし感横溢する物語を信じていないのだと思う。ロビンやハンナ・シグラなんかまで引っぱてきたキャストの厚みは演じる夫婦の柄じゃない感が帳…

アイ,ロボット

★★★★ 2004年10月16日(土) 梅田ブルク7シアター1 再三描かれた機械支配の未来観の勃興期的前史に感慨を覚える。機械のアイデンティティと言うテーマは陳腐だが、奇を衒うことなくオーソドックスを貫いた正々堂々振りに押し切られた。CGの汚し具合やウィル…

赤坂の姉妹より 夜の肌

★★ 1992年6月13日(土) みなみ会館 落日の寂寥も伸し上がりの活力も決定的に欠ける。東宝的硬質さでは大映的艶やかさが要件の物語を御しきれないので、所詮はブラジルや北海道といった新天地に希望を見出す民青的終焉に帰結してしまう。男を手玉に取ってなん…

悪名

★★★ 1992年6月27日(土) 高槻松竹 ガキ大将がまんま大人になったみたいな勝新や無理くりヤンキーな田宮といったキャラ適合した役者の魅力が100%の構成要因であって、今更展開に作劇的な醍醐味はまずもって無い。女介在比重が高すぎ何だか大して盛り上がら…

悪なき殺人

★★★★ 2021年12月3日(金) シネリーブル梅田1 素晴らしく凡庸な邦題をつけられた作品だが、これは予想の斜め上を行く出来だと思います。 時間と空間という映画表現の最大の特質を十二分に利していると思われる。 状況を視点を変えて反復する。最近公開され…

愛人 ラマン

★★★ 1992年10月24日(土) 池田映劇 植民地に於いて貧困領主が富裕領民に犯されるという被虐も少女が中年男にという背徳も全て絵画のようなフォトジェニーで粉飾されスルーされて行く。おばあさんの理想化された過去は綺麗事にならざるを得ない…にしても溜息も…

ああ爆弾

★★ 1991年1月19日(土) ルネサンスホール ヒッチ=トリュフォー系譜のウーリッチ原作なら喜八ラインは有りなのだが、1昔前のドタバタに能や狂言や浪花節や御詠歌でどうやって乗れと言うのか。趣味的過ぎてムカつきさえする。一種の実験映画なんだろうが…しん…

あゝひめゆりの塔

★★★ 2007年1月20日(土) 日劇会館 乙女気分が横溢する前半が良い。そこに「対馬丸」の悲劇を挿入して戦火の切迫を巧みに構成している。しかし、今井版と同期する後半は力は入ってはいるが所詮はステロタイプとなり且つ拡散してダラダラ長い。描写を少女たち…

アゲイン 明日への誓い

★★★ 1991年4月7日(日) トビタシネマ そもそも『挽歌』シリーズに思い入れも無いので前日譚のもたらす感慨も無く単なるアクションロマンスの1本なのだが、うらぶれた映画館で「夕焼けの歌」を聞いたとき走馬灯のようにうらぶれた人生が脳裏をよぎって涙が止…