男の痰壺

映画の感想中心です

映画感想【い】

IZO

★★★ 2004年8月21日(土) ホクテンザ1 甦った稀代のテロリストが斬るべきはリアルな何かであるべきで、シンボライズされた政財軍学の象徴ではダメなのだ。学芸会めいた構成を誤魔化すのに依って立つ時空を行き交う構成がこれ又未整理で友川の怨節だけが異様に…

怒りの日

★★★ 2022年1月9日(日) テアトル梅田1 そもそもに、その強烈な怒りが向けられるべきは夫ではなく姑ちゃうのんとの思いがある。そりゃ娘ほどの歳の差の妻を娶った夫はどうかと思うが、そんなに悪い男でもなかろうに。 この映画は、そういった時代の婚姻風土…

犬猫

★★★★ 2005年2月8日(火) テアトル梅田2 自己嫌悪に打ちのめされても風吹けば気を取り直し駆けていくしかない犬型人間と自動制御的に人生をかわす猫型人間。どっちが良い悪いではなく自分は自分で生きてくしかないという退いた視座。ただ対比の効かぬ繰り返し…

ICHIGEKI 一撃

★★ 2005年4月13日(水) CINEMAしんげき2 哀感や悲愴美と無縁のセガールだから物語を追って脳内で孤独性を追補せねばならぬのは愛嬌で許せる。人身売買という時代性ある題材をチョイスしたのもいいが、1対1の古典的対決で決めポーズされたって…。肝心…

1969

★★ 1992年9月19日(土) 毎日文化ホール これを70年代にやったならまだしもだが、20年後に糞真面目にやったからってなんだっていうのだろうか。余りに直截な出し遅れ感が救いがたい。先鋭が敷いた軌道で懐旧に浸ったって何がどういうこともない。(cinemasc…

いつかギラギラする日

★★★ 1992年9月20日(日) 日劇会館 萩原健一が稼業人生の年季と哀感を醸し出しす前半は良いが陳腐なカーチェイスや世代ギャップある荻野目の回想をセンチに描いた後半でものの見事に失速。原田の殺し屋も付け足し感濃厚で活かされていない。(cinemascape) keni…

インド夜想曲

★★★ 1992年10月3日(土) 毎日文化ホール 殊更に作家性を主張せぬコルノーのスタンスが偶然にもインドの悠久のリズムと同期し、この奇想譚に完全な統一感をもたらしたとも言えるが、余りに悠久に同期し過ぎて1歩間違えば激しく睡魔に引きずり込まれる。だが、…

硫黄島からの手紙

★★ 2006年12月14日(水) 梅田ブルク7シアター1 絶望的敗走劇の中から絞り出される何ものかは遂に無く、紙芝居のようなステロタイプの日本兵が今風の役者演技でトレースされただけ。未だしも戦争の2重構造に言及した『星条旗』に比して余りに単視眼的で遠…

インランド・エンパイア

★★★ 2007年7月21日(土) 梅田ガーデンシネマ1 入れ子の物語が均質で一体な戦慄に昇華するには、ポーランド劇中劇の比較的平易なエモーションがバランスを欠き、ローラ・ダーンのマジ怖い顔面演技全開ぶりだけでは楔効果は不足。瞬間的には戦慄すべき即物感…

インドへの道

★★★★★ 1991年9月8日(日) ホクテンザ2 性的な抑圧と異文化との邂逅という余りに隔たった命題を、これ程にてらい無く品と格式を横溢させて誰が描けるだろうか。クライマックスをスッパリ切った演出を筆頭に今更と思ったリーン14年ぶりの遺作は、これこそが…

怒りのタッチダウン 人質奪回作戦

★ 1991年9月23日(月) 新世界国際地下劇場 謂れなく無頼の徒の手に囚われた娘を救出するため熱き男達が立ち上がる。のはいいのだが、何でフットボーラーやねん。しかもボーグナインが大将では救えそうになくて萎える。低予算のくせに一人前のことをやろうとし…

いろはにほへと

★★★★ 2008年4月5日(土) 日劇会館 どうみたって立派な詐欺師の話をどっかピカレスクなダーティヒーローみたく橋本忍が描き佐田啓二が演じるのが時代を思わせ笑える。まあいい。終盤の伊藤の涙は紛れもなく本物だし、何と言っても役者力のガチンコ味。三井で…

インベージョン

★★★ 2008年4月5日(土) 新世界国際劇場 何の新味も刺激もない今更の題材で、時制をシャッフルする編集も意図不明の小賢しさだが、執拗に我が子を探し求める母ものとして神経症的ムーアや狂気のフォスターをキッドマンが3馬身差でぶっちぎった。そのクール…

イースタン・プロミス

★★★★ 2008年6月19日(木) シネリーブル梅田1 ナオミ・ワッツの困惑ではないが、実際あんた、どっち行きたいねんと思える半端な終幕に唖然ともした。が、にしても、このドップリとロンドンのマイナーコミューンに浸りきったクローネンバーグの描写の数々。…

イン・ザ・ハイツ

★★★★★ 2021年8月2日(月) TOHOシネマズ梅田7 上映前の予告篇でスピルバーグの「ウエスト・サイド・ストーリー」をやっていて、見た感じ全然期待できそうにないと思ったのは、まんまオリジナルの劣化トレースとしか見えなかったからで、現代の複層化し…

インディ・ジョーンズ クリスタル・スカルの王国

★★★ 2008年7月12日(土) TOHOシネマズ梅田9 正直、懐旧の想いより爺いの冷や水的一抹の寂寥が拭いがたく、又冒頭からの見せ場も場当たり的で乗れない。中盤以降の釣瓶打ちは流石とも思うが、行き着けばナスカに宇宙人と出し殻材料。新味無き『聖櫃』な…

偽りの晩餐

★★★ 1990年2月4日(日) セントラル劇場 良い題材なのだが、ブルジョワを描くにブニュエルのような徹底したアイロニーにもフェリーニのような大仰なカリカチュアにも欠けるのでどうにも歯痒い。かと言って少年たちに寄ったポジションでもない。オルミ自身によ…

E.T.

★★★ 1990年3月31日(土) 朝日会館 使い廻しめいたUFO始めスピルバーグにしてはお手盛りの廉価ムービー。ET造形の逆説と少年少女の純粋な庇護欲の対置は鯔の詰まりピーターパン症候群なメルヘン描写に帰結する。そこには計算はあってもワンダーは無い。サ…

1秒先の彼女

★★★★ 2021年7月19日(月) シネリーブル梅田2 チャン・ユーシャンは90年代後半に出遅れの台湾ニューウェイブ的な現れ方をした人で、ホウ・シャオシェンから10年、エドワード・ヤンから5年遅れて2本の作品を撮って消えた。 っていうと、我が日本にも似…

インクレディブル・ハルク

★★★ 2008年10月1日(土) 新世界国際劇場 プロットごとには意欲的な演出が多く結構な出来なのだが、間引きしたような端折りが嘗めている。大体、このハルクって野郎の「キングコング」や「フランケン」系統のメロウぶりがいただけない上に好みの問題だろうが…

イーグル・アイ

★★★★ 2008年11月5日(水) 梅田ピカデリー1 『北北西』から『知りすぎた男』へとヒッチ再構築の演出は巧緻だ。テロ連鎖の契機が米大統領の誤決断と断じる一見正論も新たな専制主義によってしか断罪し得ない。ポリティカルなアクションが2流のSFネタに堕…

博奕打ち いのち札

★★ 1990年4月15日(日) 日劇会館 義理と人情の狭間で煩悶する仁侠映画のロジックは後方に退けられ単線的な男と女の話になってしまった。意図としては良しとしても、大時代なアナクロ臭が鼻について乗れない。その帰結がラストの70年代的前衛風味な殺陣では…

刺青

★★ 1990年10月14日(日) 十三ロマン 墜ちて行く女の描き方がワンパターンな『赤い教室』の弛緩し切った再生版。石井と水原の欠落は補いようがなかった。切欠の方便としてしか「刺青」が意味為さぬなら谷崎原作を持ってくる必要など更々ないわけだ。耽美とは程…

インテルビスタ

★★ 1989年1月22日(日) セントラル劇場 『ローマ』や『道化師』で遣り尽した筈のドキュメントとフィクションの融合を今更ながらに又も繰り返し尚且つ先鋭さを失い弛緩している老醜ともいうべき作品。ここには光明の欠片も無い。同じことを繰り返す老人の自慢…

異人たちとの夏

★★★★★ 1989年4月23日(日) 長崎東映シネマⅡ 主人公宅を名取が訪れる場面や寄席の外での片岡との邂逅シーン等、尋常じゃない世界との接触を日常に埋没させる山田の巧妙な台詞回し。浅草シークェンスは全て突出するが、マンションのパートも都会の孤独を表出さ…

インディ・ジョーンズ 最後の聖戦

★★★ 1989年7月23日(日) 長崎宝塚劇場 インディの親爺がショーン・コネリーだなんて意外性もくそもなく、てんで面白くない。加えて1作目のオカルト趣向も2作目の密教的神秘も無くなり、それなりに見せはするものの普通の大戦裏話的なものになったのが物足り…

イングロリアス・バスターズ

★★★★ 2009年11月23日(火) TOHOシネマズ梅田1 一触即発のみを追求した沸点臨界の5幕物の、わけても永久保存的第4章でピークアウトする脚本の練り甘。終章では果たされる報復と充たされぬ愛欲と真摯な使命とお追従とシラケと大殺戮のカオスが必要だっ…

インディア・ソング

★ 1987年4月5日(日) SABホール ド素人がアラン・レネしましたって感じで、さっぱり訳わからん上に、映画的美が決定的に欠如している。退廃し滅びゆく階級に対し耽溺し切っているので興味さえも涌かない。コンセプトだけでは映画は成立しないのだ。担保す…

インビクタス 負けざる者たち

★★★ 2010年2月16日(火) 梅田ピカデリー4 加被虐に彩られた民族史を統べるポリティカルな手腕をSPの男達の融和描写で茶を濁す錯誤とダメチームの南ア代表が世界の頂点に立つ過程が何ら説得力ないお座なり感。愛すべき役者力を感じる一方救いがたき類型の…

イエローキッド

★★★★ 2010年2月20日(土) シネヌーヴォX 多重に錯綜するルサンチマンが剃刀状のエッジで相互に切り合う皮膚感覚に鳥肌が立ちそうな前半であったが、それがカタルシスへ昇華せずどっかで見たような既定路線上でまとまってしまったのが惜しい。コミックとの…