男の痰壺

映画の感想中心です

映画感想【か】

かいじゅうたちのいるところ

★★★★★ 2010年1月27日(水) 梅田ブルク7シアター4 正直、島での物語が少年の魂の救済に寄与する枠組みは見えてこない。が、この愛と孤独にのたうつ者たちのコミューンの崩壊と再生譚は60年代カウンターカルチャーの愛すべき芳香に充ちている。キャロルの…

カティンの森

★★★ 2010年1月28日(木) シネリーブル梅田2 深度ある撮影と真摯で節度ある演技。時系列に単線な展開の前半は良い。しかし、「その時」を経過し分散された物語は暗澹たる閉じた過去と未来へとのみ向けられる。それが悪いとも思わないが、なら収斂する作劇無…

哀しみのトリスターナ

★★★★ 1986年3月9日(日) SABホール 2転3転する力関係の力学的帰結にブニュエルが興味ある訳なく因果応報の無限地獄の提示こそが旨なのだ。濡れた古都トレノの佇まいが叙情的で、ヒッチ垂涎のブロンド美女の「ああ…脚が…」といったサディスティックフェチ…

カントリー

★★★★ 1986年2月15日(土) 大毎地下劇場 労働を描き声高に抑圧に抗することを描くと左がかる。『怒りの葡萄』から『プレイス・イン・ザ・ハート』に至るまで巧みにそれを回避し得たのは抑制でありこの映画にもそれがある。ラングのピークを形成する作品であり…

カポネ大いに泣く

★★ 1985年2月16日(土) 観光会館地下劇場 オフビートな安っぽさを狙うには実は戦略的周到さが要件なのに露骨に安さが画面を牛耳ってしまった。監督がアホしても熟練のスタッフが支えた日活時代をまんまシステム崩壊後の80年代にリピートしようとしても通じ…

カケラ

★★ 2010年5月20日(木) 梅田ガーデンシネマ1 性差ではなく個の人格だと言う割に拘る自分を醜悪に露呈する場当たりと、モラトリアムな受動的生き方に信もなく時折自己都合で曲がる身勝手。余りに女性的とも言えるワンサイドな言い様を全て否定したくもない…

カム・アンド・ゴー

★★★★ 2021年3月12日(金) シネリーブル梅田3 大阪キタを舞台に9ヶ国の人たちが織りなす群像劇ってことで、まあ、これはリム・カーワイにしか撮れない題材だよなと思う。 もしかしたら、日本人のクリエイターでも取材を重ねてこういう企画は立てられるのか…

ガンズ・アキンボ

★★★★ 2021年2月27日(土) TOHOシネマズ梅田8 自慢じゃないけど「ハリー・ポッター」を1本も見てない。シリーズ終焉後にダニエル・ラドクリフが己が生きる術をこういう方向に見出したことに特に感慨もないが、それでも嘗ては2の線でメガシリーズを牽…

★★ 1985年7月27日(土) 今津文化2 時代の背景を伴わない低予算密室劇では映画文体の拡張力は抑止されテーマのみが抽出されるが、マゾヒシズムが性的衝動を喚起するというだけでは解りやすいものの今更なのだ。どうにもな時代錯誤感が横溢しじめついて全然面…

川の底からこんにちは

★★★★ 2010年7月29日(木) 梅田ガーデンシネマ1 自虐的モラトリアム女が開き直って一念発起し自己再生するベタな規定路線上の物語は余り説得力もないのだが、日常的におっさんとオバハンがまぐわう土俗環境の今村が降臨したかの如き描写の魅力と徹底的なダ…

カンパニー・マン

★★ 2010年9月11日(土) トビタシネマ 冒頭から30分は幾何学的構図も決まり物語世界への期待も持続する。しかし、2転3転する展開に感じ始めた既視感は、やがてウンザリ感へと転ずる。カタルシスも悪寒も感じない終盤の帰結。気障な凡庸。(cinemascape)

風の谷のナウシカ

★★★★★ 1984年4月21日(土) 渋谷東急 地政学的広がりと歴史的時間軸を精緻に設定して巨大なクロニクルの一端を垣間見たようなロマンティシズムが発生。清冽な風吹く空と澱む腐海の高低差の表現とそこを縦横に飛翔するダイナミズム。ナウシカの無為と余りに人間…

海炭市叙景

★★★★ 2011年1月8日(土) 第七藝術劇場 夜間撮影の暖色感あるライティングが特筆の侯孝賢や市川準の仕事の高度な追随作だとは思う。全ての挿話は孤絶にまみれ崇高の域にまで達しているが、終盤に若干シンクロしかける仕掛けを施すなら何らかのカタルシスへ集…

ガープの世界

★★★★ 1984年12月9日(日) 大毎地下劇場 リブもジェンダーもロイ・ヒルにとっては関心事ではない。空に舞う無垢なる赤ちゃんの笑顔の如くに自然体で生きることは難しく偏向した思想はそういう個人の生き様を圧殺する。それを怒りや皮肉でなく優しさで被う視線…

伽倻子のために

★★★★ 1984年12月23日(日) 三越劇場 在日であることのアイデンティティは寧ろ物語の方便としてのみ機能してると見るべきで、特化して描かれるのは社会から孤絶した静謐な世界での恋人同士の時間の絶対的至福。水道管検査人を始め、それを際だたせるアイテムが…

隠された日記 母たち、娘たち

★★★★★ 2011年4月23日(土) 高槻セレクトシネマ2 母娘の確執の物語として始まった物語は、祖母の大過去が点描され出してから俄かに女性の社会的自我確立に対するクロニクルとしての巨視感を得る。時制の混在が生む映画的語り口の醍醐味。そして、真っ当に冷…

神々と男たち

★★★ 2011年4月9日(土) 梅田ガーデンシネマ2 「神々と」と言う割には高次な命題ではなく、曳かれ者の小唄的に矮小な世界観にしか立脚していない。それでも、「白鳥」の余りにと言うしかない自己陶酔なセンチメンタリズムの強引な押し付けには若干捻じ伏せ…

家族ゲーム

★★★★★ 1983年7月21日(木) 三番街シネマ3 盛り込むではなく削ぎ落とすアプローチで60年代ゴダール的ポップへの回帰が図られた上でボソボソ声の優作が止めを押す。十三・さおりの硬軟助演の妙もハマり全てが理想的な上、ブニュエルな晩餐から終末示唆の午睡…

帰って来たヨッパライ

★★★★ 1983年12月17日(日) 伊丹ローズ劇場 軽佻が底知れぬ痛みに根ざす『地下鉄のザジ』的スラプスティックをクタール的ポップな色使いとゴダール的コラージュで彩る。全きトレースだとしても大島なりの才気ほとばしった希有作。バカ話にも『絞死刑』を経た者…

哀しき獣

★★★★ 2012年1月14日(土) 梅田ブルク7シアター5 ラストで民族哀史とでも言うべき『ディア・ハンター』的構造に気付かされたりするが、メルヴィル的殺人顛末からローリングして『ターミネーター』的破綻に至る韓国シークェンスの力技。無謀と思える展開を…

陽炎座

★★ 1982年2月20日(土) 梅田コマゴールド 『ツィゴイネルワイゼン』が10年以上寝かせた特上のワインだとすれば、こいつは即席のカストリ酒だ。ペラい役者が織りなす清順歌舞伎というより紙芝居。余裕の無い優作は木偶の坊にしか見えなく、陽炎座の部分も冗…

ガントレット

★★★ 1982年3月12日(金) シネマ温劇 撮ることへの意識過剰なき衒い無さは芸がないこと紙一重であり、数多あるB級アクションの領域に留まる。ファーストシーンのジャジーなムードが最高。前段と終盤に用意された弾幕過剰が作家性というより自棄のやん八的本能…

鵞鳥湖の夜

★★★★ 2020年9月27日(日) シネリーブル梅田1 この監督の前作「薄氷の殺人」は、どうにも表層的な感じがして好きになれなかった。これも相変わらず気障ったらしいポーズが鼻につく部分がある。 のであるが、中国アンダーグランドに於けるグループ間の抗争を…

風にそよぐ草

★★★ 2012年3月17日(土) 梅田ガーデンシネマ1 ど変態を曝け出すのは結構だが言いたいことは見えてこないレネ節。悪意や愚昧、憐憫や諦観といった感情の寸止めばかりが綿々連なる、可愛げの欠片もない爺さんと自意識過剰ハイミスの恋愛駆け引きもどき劇。終…

カッコーの巣の上で

★★★ 1982年3月27日(土) ビック映劇 後半は一応盛り上がりを見せるが、軽度にせよ精神病院ってこんな普通の連中ばかりか?という疑問。体制へのプロテストも余りに捻りが無い。しかし、今更の知れた題材を名優たちを誂えて真正面から十二分な押し出しで語り名…

風とライオン

★★★ 1982年3月12日(金) シネマ温劇 ルーズベルトとの対立軸は申し訳程度の扱いで、物語はひたすら女目線と子供目線で男コネリーを描くことに奉仕する。正直つまらん。異文化との邂逅は『アラビアのロレンス』を踏襲、馬の描写はミリアス信奉の黒澤チック。新…

海燕ホテル・ブルー

★★★★ 2012年4月21日(土) テアトル梅田1 象徴には遠い安価なホテルのロケセットの寂寥感が意外に棄て難く、吸引力の無い片山瞳の木偶人形ぶりも案外に好ましい。そういう紙一重な未達感が、解ったようで解らん世界を心地よく覆う。今の時代、こんなもんは…

怪描トルコ風呂

★★★★ 2020年8月23日(日) 新世界東映 監督の山口和彦ってあんまり取り上げられない人だが、デビュー作の「ずべ公番長 夢は夜ひらく」を数年前に見て佳作だった覚えがある。ってことで期待して見ました。 これも、佳作といっていい。 買春禁止法施行の前夜か…

崖っぷちの男

★★★★ 2012年7月8日(日) MOVIXあまがさき3 正直、野次馬を巻き込んだ劇場型犯罪としての緻密な構成には遠いし、ワーシントンのキャラ設定もクールと緩さの間で今いち半端。が、一方で実行部隊のベル&ロドリゲスコンビが絶妙なダサ格好良さで随所で映…

かぞくのくに

★★★★ 2012年8月11日(土) シネマート心斎橋1 300%の理不尽が罷り通る現実に、遣る瀬無い怒りと、憤怒の彼方に到達した諦念と、心の揺れを圧殺する服従とで向き合う3人。そして、その家族・友人の押さえても噴き出る感情の吐露の慎ましさ。この日本的…