男の痰壺

映画の感想中心です

映画感想【き】

ギフト

★★★ 2001年6月18日(月) 梅田ピカデリー3 『シンプル・プラン』にも通底する弱者への慈しみが基調にあり、ケイトの静謐なる佇まいと相まって哀しみに溢れた情感が全篇を覆う。それだけに、オカルティズムはドラマの根幹だとしても、そこに収斂させる作劇では…

黄色い風土

★★★ 2001年7月8日(日) テアトル梅田1 「カイザー・ソゼ」真っ青の真犯人にも驚いたし、前半の如何にも清張らしい構成とムードやリアルな60年代の情景は堪能したが、終盤は展開で語るに疲れ大雑把な日活ニューアクション風味になってしまった。そういった…

キングメーカー 大統領を作った男

★★★ 2022年8月24日(水) シネマート心斎橋1 昨今、韓国映画の一大ドル箱ジャンルになってきた自国近代史を題材にした一篇で、その描写の厚みを担保する撮影・美術パートの高品質はあらためてすごいことだと思わされる。 金大中の若い頃の話を題材にしてい…

銀馬将軍は来なかった

★★★★ 1994年3月13日(日) 天六ユウラク座 自分と子供達が生きて行く為にゃあ、どう言われようがこうするしかない…っつうボーダーを越える女の開き直りの図太さが素晴らしく今村的。余りにストレートな表現に序盤は臭みを感じたが中盤以降はずるずる引き込まれ…

凶銃ルガーP08

★★★ 1994年3月20日(日) ホクテンザ1 呪いの銃を持った凡人の破滅譚として物語は予定調和の域を逸脱するものも無い。しかし、媚びたところも全く無いのが初期の北野イズムに通ずるものを感じる。明らかに低予算でそれを隠す術もないのだが、撮影の小松原茂の…

戯夢人生

★★★ 1994年6月12日(日) つかしんホール 撮影をはじめ技術パートの完成度は一種の到達点と思えるが、正直、この李天祿の人生が余りにドキュメンタルな事実にとらわれすぎで面白くない。『非情城市』で兆しが顕現した侯孝賢ルーティーンイメージで凝り固まって…

キングダム2 遥かなる大地へ

★★★★ 2022年7月25日(月) MOVIXあまがさき9 今でこそ老いたブタゴリラと化してしまったが、少年時代の俺はカモシカのように俊敏で走るのが速かった。ふと、そういうことを思い出してしまった。リレーのアンカーで2位でバトンを受け取る。よっしゃや…

キス・オブ・ザ・ドラゴン

★★★★ 2002年2月14日(木) 新世界国際劇場 見た範囲でだがジェット・リー最高作。童顔での余裕綽々ニヤつきを封印し一種の悲愴美とも言うべき味わいを醸し出して、特筆すべきアルボガスト撮影の悲嘆に彩られた世界に親和している。何より臨界すれすれの状況で…

キルソドム

★★ 1994年7月10日(日) ホクテンザ1 血の繋がりとは何かを問いかける結末のシビアさは非常に重くドラマトゥルギーを内包してるとしても、それを映画として観客に訴求するにはグォンテクの愚直が裏目に出る。しんどい物語を語るに記録フィルムとのモンタージ…

殺人核弾頭 キングコブラ

★ 1994年8月28日(日) 新世界国際劇場 300%どうでもいいような話であり、それはそれで構わんのだが、肝心のアクションが絶対零度に限りなく接近しようかというショボさであり、尚且つ畏れ多くもジョン・ウーの『ハード・ターゲット』を意識した類似品とい…

気違い部落

★★★ 2002年6月22日(土) テアトル梅田2 脇キャラは立ってるが中心軸の伊藤のキャラが煮え切らず弱い。従って彼が一層中心で展開する後半はありきたりで退屈。もっと壊滅的な展開を期したが無理なのであった。登場人物は多彩だが山形が安定感抜群。淡島は何し…

きらきらひかる

★★★ 1993年1月15日(金) 扇町ミュージアムスクエア 八方塞がりな状況に沈殿し安住する人々。絶望的に閉塞されていることに自覚的でさえもなくチンタラした話をご丁寧に紡いでいくが主人公の女性が不幸すぎて救われない。両家の親が津川と川津の怒れるヌーベル…

傷だらけの天使

★★★ 2002年10月25日(金)~26日(土) トビタ東映 腐れ縁の道行きが何にも転化せず腐れたままで終始するのが面白くなく、そういうのを描いた映画なのだとしてもダンディズムが不足。ガキ話に分量割きすぎで、感情移入の矛先も定まらぬしアナーキーでもない。そ…

斬る

★★★★★ 1993年4月10日(土) 日劇シネマ ショット内の運動と構図がモンタージュと相互に浸食し効果を倍加する。乗り乗りのカッティングのリズムは巧いを超越し神業レベル。惚れ惚れするとはこのこと。随所で出る仲代の気障だが小粋な決め台詞が又小憎らしい程の…

狐のくれた赤ん坊

★★★ 1993年7月11日(日) 日劇シネマ 阪妻の愛すべきキャラクターを次世代で体現し得たのは豪放一筋の三船より愛嬌兼備の勝新であったと断言し得るほどのドハマリ役。オリジナルを超えるものも見当たらないが安定した三隅演出もあって水準以上のプログラムピク…

金融破滅ニッポン 桃源郷の人々

★★★★ 2002年11月5日(火)~6日(水) ホクテンザ2 どんなコンゲームを見せてくれるのかと思えば単なる株価操作で利幅も2000万とは何とも庶民的。まあそれも原作ありきと思えば納得するしかない。正直物足りないが、三池・相川コラボの逸脱作として乃至は室…

極東黒社会

★ 1993年5月16日(日) 新世界東映 香港映画ばりのごった煮な混沌を期待したがクソみたいな出来。脳内でっち上げのヤクザオリンピックは一応国旗の数を揃えてみたが、所詮一昔前の似非ギャング映画の愚昧な模倣。キャスティングも、一昔前のしなびた連中ばかり…

危険な関係

★★★ 2003年1月15日(水) シネリーブル梅田2 退廃に身を沈め愛を弄ぶ極悪カップルが垣間見せる純情(涙や心からの笑顔)が物語を有機的に転がしていかないのがもどかしい。ローアングルを駆使した演出はところにより結構冴えるのだが生気無いフィリップがモロ…

ギャング・オブ・ニューヨーク

★★★ 2003年1月10日(金) 梅田ブルク7シアター7 「復讐」も「恋」もラスト30分で済し崩しに歴史の荒波に飲まれてしまうのなら、2時間半に渡って語られた物語は何だったのかと思う。論理的に構成された物語の快感は無いが、圧倒的なデイ=ルイスをはじめ見…

キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン

★★★★ 2003年3月27日(土) 梅田ブルク7シアター6 60年代風軽快コメディテイストを装いつつ家族離散の苦悩をマジで描くという、どっちつかずのコンセプトをタイトルからしてのゴージャスさと陰影深いカミンスキー撮影で縁取り纏め上げたスピルバーグの力業…

客途秋恨

★★ 1993年8月8日(日) みなみ会館 民族史的アイデンティティを問うのに母娘の確執に集約するのであれば、いっそのことベタな情感に流れても良かったのではないだろうか。静謐にクールであることで何も浮かび上がってこないし見えてもこない。良い題材だとは思…

キャロル

★★★ 1993年9月14日(火) 第七藝術劇場 映画を巡る事件は最早風化しそこへの言及は虚しいだけだが、固めてないリーゼントがまるでロン毛の素の永ちゃんが、反ロッカー的に70年代のフラワーなムードを発散させ秀逸。キャロルと言うより彼の映画ってな位に思い…

キャプテン・スーパーマーケット

★★★★ 1993年10月17日(日) 新世界国際劇場 インディーズから発生したマイナーキャラが変遷を経て、どんな難事に遭遇してもノンシャランと乗り切ってしまう正統派アメリカンヒーローに帰結したが、予定調和の陥穽に陥る直前の微妙なアンバランスさが画面を横溢…

機動警察パトレイバー2 the Movie

★★★★ 1993年11月3日(水) 高槻松竹 『ビューティフルドリーマー』で「メガネ」を抽出した如く南雲と後藤を前面に出してオリジナルを解体するのは作家的独善思想を感じ少し嫌だが1を数段上回る圧倒的技術進歩。だからこそ、擬似や模擬ではない本物をシュミレ…

機動警察パトレイバー

★★★ 1993年11月3日(水) 高槻松竹 特車二課という「チーム」を描きながら一昔前の「連帯」感は無く個人の間には微妙な距離があり冷めている。そういった世界を抽出された都市の無機質感を背景に先鋭化させる押井流は原作やOVとの狭間で躊躇があるように思え…

キル・ビル

★★★ 2003年10月28日(火) 梅田ブルク7シアター1 序盤には曲りなりにも垣間見えた復讐と言うパッションは後半のお遊び三昧の中で雲散霧消。そもそも前篇も後篇もない一気呵成の展開の中でこその東京シークェンスだろうにダルに引き伸ばされクライマックスに…

狐の呉れた赤ん坊

★★★ 2003年12月2日(火) 高槻松竹 阪妻の魅力は満喫できるし、「父子もの」の数多の同系作と比してもベタつかない自我が確立された人々の話で気持ちいい。しかし、どうも、「血は争えない」ってのが血統書つきの平民の俺とすれば何か鼻持ちならない。(cinemas…

さがす

★★★★ 2022年2月2日(水) テアトル梅田1 【ネタバレです】 「岬の兄妹」もそうだったが、片山慎三のタブー視されるテーマを攻める姿勢を一応は良しとしたい。死にたがってる奴殺して何が悪いって思ってる奴は間違いなくいるし、実際そういう事件も起こって…

きょうのできごと

★★★★ 2004年3月23日(火) テアトル梅田1 魅力的な構成だが神の視座を謳うのであれば挿話がもう幾つか欲しかった。断罪も救済もしない田中麗奈の主人公に対する作り手のスタンスを図りかねるので肝心の鯨が浮いた。しかし、ダラな1夜の顛末の空気には痛いく…

キル・ビル Vol.2

★★★★ 2004年4月27日(火) 梅田ピカデリー1 正直、前作での「日本映画」もどきでは勘違いとしか感じられなかったリスペクトという熱い代物が「マカロニ」・「香港映画」に対してはド真ん中から俺を射た。模倣の域を超えた室内格闘演出の巧さで沸点到達した後…