男の痰壺

映画の感想中心です

映画感想【く】

ぐるりのこと。

★★★★ 2008年7月18日(金) シネリーブル梅田2 2人を取り巻く世界が厳然として存在しつつ淡々と流れていく。偽悪的に夫婦の有様のキツい面を抽出した展開も世界に補完され至福に至る。宗教的なまでの達観。ただ多くの実事件の素描は精緻な相関には遠い。リ…

クワイエット・プレイス 破られた沈黙

★★★★ 2021年7月21日(水) TOHOシネマズ梅田10 アメリカに於いて俳優から監督へ進出・転身するという流れが少しずつ増えてきているような気がする。そのことに何か意味があるのかは判りませんが。 何故そんなことを意識したかというと、前作で一家の父…

クレールの膝

★★★★★ 2021年7月19日(月) テアトル梅田2 ほっといても女性の方から声かけて寄ってきて、自分の話に耳を傾けてくれる。何だか万能感半端ないおっさんのこの世の春。 それは、1人の新たな少女の登場で打ち砕かれるのでありました。 得意のオヤジの魅力光線…

クライマーズ・ハイ

★★★ 2008年12月20日(土) トビタ東映 組織の中の守旧と革新、編集と販売、親と子、友情と仕事、意地と妥協…多くの2項対立はデフォルメされ劇化されるが、原田が救い難く稚拙に見えるのは否定される側の時代錯誤なステロタイプ化に依る。『呪縛』と変わらな…

クリシャ

★★★ 2021年6月19日(土) シネヌーヴォ 監督の親族たちが出演者だという。 そういう手抜きめいた選択にしては、この主人公クリシャを演ったクリシャ・フェアチャイルドというオバサンは強烈である。て言うよりこのオバサンがいるから撮ったんちゃうかとさえ…

グリード ファストファッション帝国の真実

★★★ 2021年6月28日(月) 大阪ステーションシティシネマ8 この邦題「ファストファッション帝国の真実」ってのに騙された。 リテール分野で数社が世界を牛耳る今の業界構造に包括的に迫るのかと思ったのだが、結局は1人の男の成り上がり譚でしかない。 繰り…

グンダーマン 優しき裏切者の歌

★★★★ 2021年6月19日(土) シネヌーヴォ 映画を構築するのに、主人公グンダーマンを取り巻く2つの大きな心理的な相剋がある。 はずなのだが…。 1つは、邦題にもあるとおり、東西分断下の東ドイツで、国家秘密警察の犬となって西側への亡命分子をチクってい…

蜘蛛巣城

★★★ 1990年10月13日(土) 日劇シネマ 中世の西洋には確実に存在した「魔」を日本の戦国時代に移植するに「能」で装飾してみた。それらしくは見えるが装飾は本質には遠い。バタ臭い和人黒澤の限界だろう。ラストは確かに傑作だが他はどうも…特に魔女はそりゃな…

グラン・トリノ

★★★★ 2009年4月25日(土) 梅田ブルク7シアター6 イーストウッド的懲悪譚と異文化との親和が並立するのみで「ボーイズ・ビー…」的典型に収斂するのみなら何故にモン族なのか。制するのが白人で越境する度量があればと感じた。爺コン萌えの親爺の立ち居振る…

クローズZERO Ⅱ

★★★ 2009年4月25日(土) TOHOシネマズ梅田5 集団抗争の予感横溢する導入から30分は胸ときめく至高の展開だったが、鈴蘭VS鳳仙の抗争の引金OBが又も逸脱し強度を拡散させる。1作目より数段良いが脇の甘さは変わらない。そして、このどつき合いの…

黒い画集 あるサラリーマンの証言

★★★★ 1990年11月11日(日) 日劇シネマ 清張を橋本忍が脚色という正に王道的正調推理人間劇であり誰が監督したって面白くなっちまいそうな気がする。ただ一方でどれも同じに見えてきちまうのが辛い。寧ろ主題が今のアンチモラルな時代には最早、風化したと感じ…

グッドフェローズ

★★★★★ 1990年11月18日(日) 梅田東映パラス 既存の商業主義に馴れ合いつつもポイントごとに特異な異質感が滲み出る。尖った技巧のオンパレードとウェルメイドな凡庸の端境点。物語に準拠せず闊達な語り口に拘泥した或る意味でのスコセッシのピークであり90…

黒い雨

★★★★ 1989年6月11日(日) 長崎東映パラス 今村が何故に固執した性への言及を廃し聖処女とでも言うべき被爆女性を描いたのかへの答は見出だせない。松竹初期に大島と共闘した石堂と川又の起用も意外性のみだが、静謐な哀しみを纏ったスーちゃんが言い尽くせな…

グッド・バッド・ウィアード

★★★ 2009年9月12日(土) 梅田ブルク7シアター4 レオーネ的底浅情感に依拠した挙げ句に何物をも抽出し得なかった徒労感。ジウンは真面目過ぎるのだろう。離れてベタや過激やシュールに振れればいいものを。グダグダ展開の煮詰まりの果てには何故か『あずみ…

空気人形

★★★★★ 2009年10月5日(月) 梅田ガーデンシネマ2 バーチャルでないリアルなビニール性欲処理人形という実存はペ・ドゥナの緩んだ太股や汗ばんだおでこに継承され、死滅しゆく閉塞都市を彷徨い血と塵芥にまみれて消えるしかない。ピンビンの温もりの風景に包…

クライム&ダイヤモンド

★★★ 2010年2月27日(土) トビタシネマ 50年代映画に多く言及されてるが、寧ろ70年代的ロマンティシズムへの憧憬(アンリコやワイルダー他)が感じられ心地よく懐かしい。一方で敵キャラ造形はタランティーノ以降の90年代風味でこれも又良い。ただ両者…

群盗荒野を裂く

★★★ 2010年9月17日(金) シネヌーヴォX ダミアーニの横移動にはゴダールの匂いがする。『気狂いピエロ』の2年後という製作年を考えると強ち穿った見方でないかもしれない。男としての矜持を貫いたとも言えるラストの居心地の悪さも又通り一遍ではない。た…

黒い神と白い悪魔

★★ 1985年12月30日(月) SABホール アヴァンギャルドな寓話だとするならば、描法が昇華し切れておらず、撮影・編集ともに素人域を出ていないから見てるのが苦痛。マカロニウエスタンから出てきたかの如き『アントニオ・ダス・モルテス』登場となれば下手な…

クラッシュ

★★★★ 2021年2月7日(水) シネマート心斎橋2 ここまで世界と孤絶して変態に耽溺されると参りましたとしか言えない。 クローネンバーグが「戦慄の絆」以後に舵を切った内向する純文学的変態シリーズの到達点なんだろう。全部見てるわけじゃないんですけど。 …

グリーン・ホーネット

★★★ 2011年1月22日(土) 梅田ブルク7シアター7 半端なボケツッコミ構造がイラつく。いっそのこと助手キャラを更に立たせて主客逆転にまで物語構造を破壊して欲しく思えた。ゴンドリーのロマン主義な片鱗は窺えるが半端だし展開も冗長。ヴァルツも初出は流…

草迷宮

★★ 1984年12月8日(土) 千日会館 海外からの初オファーを受けて勝手知る自家籠中の世界でってのが安易。まるっきり『田園に死す』の焼き直し短縮版みたいで、受け狙いのイメージの集積に見える。母と故郷に絡め取られた閉塞感は繰り返し何度も見たいものでは…

グンダラ ライズ・オブ・ヒーロー

★★★★ 2021年1月14日(木) 新世界国際劇場 マーベルやDCユニバースの映画を見ても、セントラルキッチンで調理されたファミレスの料理みたいなもんで、もはや何の刺激も感じなくなった俺であるが、インドネシア産のこれは、プリミティブな情動が充ちている…

クロッシング

★★★★ 2011年5月28日(土) トビタシネマ 律儀すぎてソダーバーグやPTAのような混沌の巨視感には及ばないが、世知辛くも気合充満の破滅譚。ギアの顛末への古式的志向も案外に好みである。何より隠し玉としてのバーキンのドスやスナイプスの鈍重。やってく…

グッドラックLOVE

★★ 1982年1月5日(火) 伊丹グリーン劇場 本当はバカなのにシリーズでは何故か憂いを帯びた陰ある男キャラであった俊ちゃんを主役にして徒にしんねりむっつりしてるだけで面白くも何ともない。大体、ちょっと儲かればすぐに意味なくNYとかLAに行きたがる日…

グリーン・ランタン

★★★ 2012年1月7日(土) トビタシネマ 嘗ての『フラッシュ・ゴードン』ほどではないが、脳筋肉な天然バカヒーローなのが清清しい。そして、トホホで単細胞な世界観なのに躊躇なく堅実なプロ仕事を見せるマーティン・キャンベル以下の製作陣も好ましい。ただ…

グレートレース

★★★★★ 1982年5月8日(土) 毎日文化ホール< スラプスティックなバーレスクを復古させ、エドワーズの泥臭くも洒脱な特質が最高の適合場所を得たスペクタクル・コメディの傑作。『お熱いのがお好き』コンビの発展的継承。わけてもジャック・レモンの巧緻。マンシ…

グッド・ワイフ

★★★ 2020年8月5日(水) シネリーブル梅田2 やりたいことはわかるのだが、メリハリが足りないし、もっと言えば毒が足りない。 クソ女の転落を描くに、新人女性監督には、そこまでの同性嫌悪を露わにするのが躊躇われたか。 それにしても、この富裕層のご婦…

苦役列車

★★★★★ 2012年7月14日(土) 梅田ブルク7シアター3 西村が場違いな昭和言語で取り繕った極北の下司根性を森山が据わった三白眼で二乗し開放してしまった。優しさと馴れ合いに支配された時代に降臨した糞ミーイズム。それが紙一重だとしても苛烈たる者がこじ…

九月の冗談クラブバンド

★★ 1982年6月11日(金) 三番街シネマ3 撮影事故で中断の不幸が尾を引いたか停滞感が横溢する。澱んだ思い入ればかりが空回りし全く疾走感の無い映画になってしまった。そして、その想いが予想外に黴臭いのもアナクロで不幸だった。いっそのこと浪花節にでも…

暗くなるまで待てない!

★★ 1982年9月11日(土) 大阪府立文化情報センター 映画バカが映画を題材に撮ったオナニー映画で青いセンチメンタル感傷はある程度許容しても、ギャグの程度が低すぎついていけない。不遇時代の清順本人を一瞬ではあるが担ぎ出した一念岩をものプロデュース力…