男の痰壺

映画の感想中心です

映画感想【け】

幻影師アイゼンハイム

★★★ 2008年10月1日(土) 新世界国際劇場 抑制の効いたものとは思うが、抑制が効きすぎてロクに何も起こらないという体たらくではどうかと思うし、況やフラッシュバックの終局が近作『プレステージ』を想起させるのも萎える。そんなことなら、いっそとことん…

建築家の腹

★★ 1990年9月30日(日) 毎日文化ホール 何でもかんでもモノマニアックに左右対称にするアイデアが主人公の精神的葛藤とリンクしてる訳でもないのでアイデア倒れとしか見えない。映画的ハッタリの欠如した演出のもとでヴィエルニ撮影は完璧の域といっていいの…

県警対組織暴力

★★★ 1990年11月12日(月) トビタ東映 警察機構を体制的に描く訳もなく所詮は似たり寄ったりの強欲と暴力の集団とならざるを得ず、ならば結局一緒やんという話だ。寧ろ構図は図式化し蠱惑のカオスは存在しない。拓ボンがドMチック熱演ったって徒花にすぎず、…

K.K.K.

★★★ 2021年5月6日(木) シネヌーヴォX KKKって、かの白人至上主義結社クー・クラックス・クランみたいだが、Kustom Kar Kommandosのことであって特注車で繰り出そうぜみたいな感じか。もちろん、CをKに置き換えてシャレてるんでしょう。commandosには…

現代やくざ 人斬り与太

★★★ 2010年2月20日(土) 日劇会館 結構、状況に迎合する主人公が今いち生半可で、安藤・諸角と西の勢力が拮抗するマクロな構図の前で矮小化される。腐れ縁の渚まゆみと同衾する文太の部屋での呟きが電車の音にかき消されるドン詰まり感。こういう深作節には…

現金に体を張れ

★★★ 1986年2月23日(日) 花月シネマ 複数視点からの反復叙述という技法の先駆性。時間芸術としての映画の最大有効活用法の発見。そのアイデアは最高だが、後のキューブリックらしい豊穣を極限まで刈り込む贅からは遠い。役者のショタレ感にも侘びしさを感じた…

KCIA 南山の部長たち

★★★★ 2021年1月23日(土) シネリーブル梅田2 何とか悪い流れを断ち切って、あるべき方向に変えたい、ともがいてもどんどん状況は悪くなっていき、挙句はのっぴきならない顛末を招いてしまう。 いくつかの任侠映画の達成を思わせるし、現在放映中の大河ドラ…

消しゴム

★★ 1984年12月8日(土) 千日会館 言いたいことは解るのだが、直截的すぎでだからどうした?としか思えない。勿論だからどうしたの映画は世に幾らでもあるが、最低限そこを新奇で斬新なイメージで補追して欲しい。本作は従来の寺山キーワードの使い回しでしか…

刑事物語2 りんごの詩

★★★ 1983年7月27日(水) 伊丹グリーン劇場 2段構成になっているのが必然ではなく場当たりにしか感じられないので散漫な印象になった。マドンナ園みどりの鈍臭さが悪くないだけに勿体無いのだが、そこはそれ遣りたい事は豊富で飽きない作りだし、武田の激情的…

激突!

★★★ 2011年9月30日(金) TOHOシネマズ梅田10 ことの起こりからシャレじゃないと気づくまでは、ショットが織り成す純粋芸術たろうとするスピルバーグの矜持がイケイケの接写多用の弩級感と相まり完璧なのだが、映画はやがてマシスンのモノローグに侵食…

幻魔大戦

★★ 1983年10月23日(日) 新世界国際 初期限定で平井和正を信奉することに吝かではなく石森のアプローチも同線上に沿ったもの。つまり異形のものの越境を経た孤絶感。しかし、大友は浪花節を拒否して無機的な別次元を志向する。りんたろう如きに巨頭達の采配が…

汚れなき悪戯

★★★★ 1982年1月23日(土) SABホール なかなか心底からは信じ切れない映画内の「無垢」というものが信じれるような気がするのは、作り手たちの信仰に偽りが無さそうだから。そして、無垢と表裏の何かが現れたかのような終盤部の映像表現は真に衝撃的。パブ…

刑事物語

★★★★ 1982年5月1日(土) 伊丹ローズ劇場 武田鉄矢に何一つ期待するものもなかったが、予想外の蟷螂拳の健闘に加え直情的に盛り上げる激情の爆発。ベタを恐るるなかれ。聾唖者をヒロインにというのも、あざとさを感じないくらいに心情が籠もっていた。拓郎主題…

汚れなき祈り

★★★★ 2013年3月23日(土) テアトル梅田2 良く言えば通り一遍でないが悪く言えば未整理。現代の悪魔祓いという題材を得て尚ムンジウは撃つべき対象に躊躇してる。女2人の関係の特異性が抽出され過ぎ、教会という体制は後景に退いた。ただ、ラストを筆頭に…

Keiko

★★★ 1981年4月11日(土) 梅田コマシルバー 主体性のないニッポン普遍的OLのコンテンポラリーライフ。流される主人公は劇的修飾を加えられ『トパーズ』や『リップ・ヴァン・ウィンクル』へと連なる。生態記録のように作為を廃したアドリブ的臨場感は生々し…

決算!忠臣蔵

★★★★ 2019年12月3日(火) 梅田ブルク7シアター3 あまり見る気をそそらない映画であったが、中村義洋の「殿、利息でござる」が案外に良かったのを思い出したのもあるし、モロ関西弁の予告編に惹かれたのもあるし、ダウナーな岡村の演技もちょっと興味があ…

少女娼婦 けものみち

★★ 1981年6月4日(木) 毎日ホール 少女が男を乗り変えるに際してのスッタモンダを持って回った観念劇エッセンスで修飾して可愛げが無い。加えて、母親との関係描写がでてくると益々何が何だか解んない世界で、煙に巻く寺山なら未だしも神代では見てられない…

劇場版 おっさんずラブ LOVE or DEAD

★★★ 2019年9月1日(日) MOVIXあまがさき2 はっきり言って1000%見る気がない映画だった。 TVドラマも見ていない。 女房が又ぞろ「天気の子」が見たいとか言い出して、ゴネてたら、この映画でもいいということでやむなく行った次第です。 けっこ…

モア・セクシー 獣のようにもう一度

★ 1981年8月13日(木) ダイニチ伊丹 別に「カナダからの手紙」の女の子に興味があったわけでもないし、正直言ってガラじゃない感じで遣りきれない。こうも主演女優に魅力が無ければ、正統東映ピンキーバイオレンスの復刻も痛々しく白々しい。結果太田あや子…

ゲノムハザード ある天才科学者の5日間

★★★ 2014年4月12日(土) 新世界国際劇場 新味の無い記憶障害とアイデンティティ喪失のミステリーだが、韓国人監督による日本ロケの巧まざる異郷感が寄る辺無き主人公を取り巻く違和感と絶妙にリンクする。真木、中村の日本側2女優の儚い美しさに対しヒョジ…

刑事マルティン・ベック

★★★ 1980年11月26日(水) 毎日文化ホール エモーションは日常に埋没しヒロイズムはもとより存在しない。それでも事件は起こるし、刑事たちは黙々と捜査をすすめる。低温なのにニヒリズム無縁の世界からは謳われるべき情念は滾れ落ちる。この無為性は悪くもな…

検察側の罪人

★★★★ 2018年8月26日(日) MOVIXあまがさき6 大作が続いた原田眞人だが、彼にはこれくらいの規模のバジェットが相性がいい。 例によって、通常の1.2倍速くらいの台詞回しやフィルムの刻みこみを施している。 そのおかげかどうか知らんが、必要とも…

ゲッタウェイ スーパースネーク

★★★ 2014年12月6日(土) 新世界国際劇場 いきなり渦中に放り込まれる展開が、その後も行って来い的に場当たりで気持が乗り損なう。数台の車載カメは設定上仕方ないが、他のマルチカメラもデジタルな即物性が横溢しフェイクドキュ的な方向違い感を募らせる。…

毛皮のヴィーナス

★★★★ 2014年12月20日(土) テアトル梅田1 開巻から取り敢えず充満する予兆は十二分に消費される。三文女優に見えたセイヤーが深層教養とドS魂を顕にするにつれ翻弄され凋落するアルマリックが爆笑もんだ。期待通りの逆転劇だが散りばめられた夢幻的仕掛け…

ゲティ家の身代金

★★★ 2018年5月27日(日) MOVIXあまがさき2 正直、リドリー・スコットの新作に何かを期待しようという気はもうない。 「ワールド・オブ・ライズ」あたりまでは、職人化したとは言えナウを表出するセンスは持ち合わせていた。 ように思うのだが、最近は…

結婚しない女

★★★★ 1979年1月28日(日) 伊丹グリーン劇場 1980年9月11日(木) 梅田ロキシー 未だ離婚が一般化する以前に於いて尚その衝撃を徒に煽情的に描かぬスタンスを早朝のマンハッタンのシーンに代表される空気の透明感が支える。人生の難事を切り抜ける処し方は女性の…

ゲット・アウト

★★★ 2017年11月1日(水) TOHOシネマズ梅田10 どんなホラー版「招かれざる客」が展開するのかと思ったら、彼はすんなり受け入れられる。 そのことからしておかしいのだ。 だって、彼女は両親には告げていないと言ってたじゃないか…。 ことがあからさまにな…

任侠外伝 玄海灘

★★ 1979年11月24日(土) 伊丹ローズ劇場 定型演技を繰り広げる安藤、宍戸では既成枠を打ち破るパワーに欠け、物語からは在り来たりの因果話しか感じ取れない。演劇的アナーキズムをスクリーンに焼き付けるには逆説的に周到な映画戦略が要件なのだ。終盤のドブ…

ゲルニカ

★★ 2017年9月23日(土) プラネットスタジオプラス1 単体としての作品「ゲルニカ」でなく、ピカソの他の作品も適宜使用してモンタージュしている。 それが、惨禍を描くに具象から抽象へと変転するのだが、表層的な感じがする。 もっと言うなら子供じみてる…

劇場霊

★★★ 2015年12月5日(土) 大阪ステーションシティシネマ7 もはや中田は得体の知れたものしか描けぬようになったらしい。大時代な主役争いを繰り広げる女優達の相克は一応ぱるる熱演でご愛嬌程度には楽しめるが、なら脅威であるそいつも女優の成れの果てであ…