男の痰壺

映画の感想中心です

映画感想【さあ~さの】

サウンド・オブ・サイレンス

★★★ 2003年6月19日(木) トビタシネマ ブリタニーが出色なこともあり導入部分は『羊たちの沈黙』逆バージョンとして期待も高まるのだが、単なる記憶探しに話が縮こまってしまい、つまんないことこの上ない。映像表現も役者も1級といっていい出来なのに脚本の…

チャップリンの殺人狂時代

★★★ 2003年8月7日(木) OS劇場CAP 大不況下の絶望感を滲み出させてソクソク身に沁みる物語だけに、トレードマークは脱ぎ捨てても残るチャップリンの尻尾が煩わしい。有名なラストの演説も戯言にしか思えない。何故なら物語は其処に収斂するようには組ま…

サクリファイス

★★ 1993年12月4日(土) ACTシネマテーク タルコフスキー美点のたゆたう時間軸は平準化され、ニクヴィストが捕らえる空気や火や水は平板で陳腐。ヨセフソンが問う神の在不在には借り物臭いベルイマン臭が横溢。しかも、退屈な『鏡の中にある如く』を彷彿と…

座頭市

★★★★ 2003年9月20日(土) 梅田ピカデリー1 異世界から来たターミネーターのように問答無用で斬りまくる市には虚無や同情や憎悪等の作劇上の動機付から逃げたズルさを感じる。それを逆手に取ってトリックスターとしての役回りを全うさせるなら物語構造自体を…

殺人課

★★★ 1992年2月16日(日) 新世界国際劇場 主人公がコミューンに同化してアイデンティティに目覚め境界を越えて行くのに同族であるからというだけでは今いち説得性が無い。結局のところ属する場所は何処にもなかったという終盤の絶望感はかなりのものだが。演出…

殺人の追憶

★★★★★ 2004年9月13日(月) トビタシネマ 野村や熊井や黒沢在りし頃の嘗ての日本映画が持ち得ていた社会派推理劇の豊穣なる文法に乗っとりつつ、得てしてノスタルジーに装飾される多くの未達感や悔恨は現実には今の時代にも綿々と繋がっているという詠嘆。そこ…

続・座頭市物語

★★ 1992年6月21日(日) 高槻松竹 虚無感の塊みたいな1作目での天知茂の存在感に対して本作の若山富三郎には虚無感が似合わなく、しかも、市との関係もピリピリした緊張感を出せない設定にしてしまった。三隅と森の演出力量の差も一目瞭然だ。(cinemascape) k…

ザ・コミットメンツ

★★★★ 1992年6月20日(土) 大毎地下劇場 プレイヤーではなくマネージャーを主役にしたのがドロ沼のようなアーティスト地獄から映画を解き放ち観る者に一抹の救いを与える。でないと、クスんだダブリンのマイナーバンドの挫折話を、こうまで気持ちよくは見れな…

座頭市物語

★★★★ 1992年6月21日(日) 高槻松竹 歴史の伝承の片隅に記されただけの傑物たちのひとときの相克と共振。後のアクロバティックな市の居合いはまだ無く地味なリアリズムが全編に漂う虚無感を全うさせている。それを一方で負って立つ天知茂の傍流的な役者として…

ザ・グリード

★★★★ 2005年11月28日(月) トビタシネマ 清々しいまでに夾雑物がなくノンストップに一直線。編集で取り繕うのではなくショット内での役者やスタントの労力を惜しまないのにトリート・ウィリアムスは余裕で笑ってる。しかし、泣くときゃあ泣く。これぞ減り張り…

THE有頂天ホテル

★★ 2006年4月21日(金) ナビオTOHOプレックス3 笑いも泣かせも底が浅すぎて観客を嘗めてるのかとさえ思うし、ロビーのセットと他のロケシーンの繋ぎに違和感があり過ぎる。どんな規模とグレードのホテルやねん。美術設計をしてないんちゃうかと思う。…

女生きてます 盛り場渡り鳥

★★ 1992年11月21日(土) 日劇会館 シリーズ末期の居た堪れなさが横溢する。ユルユルの人情劇であろうとも山椒は小粒で何とやらであるべきだが、演ずるのが又しょ垂れた面子ばかりなのでぬるま湯で屁をこいたレベルである。そういう中で山崎努の演った役だけに…

殺人狂時代

★★★ 1991年1月19日(土) ルネサンスホール 喜八が拘泥するのは、あくまで映画技法内の熟達であって真のアナーキズムとは遠くかけ離れていることを露呈してしまった。そのアクの強さは認めるが哀しいまでに幼稚な世界観。シーンを横断するアクション繋ぎも遣り…

サイレントヒル

★★★ 2006年12月9日(土) 新世界国際劇場 視覚的設定ばかりが勝ちすぎて肝心の物語の骨格がこうもおざなりでは。と又かの徒労感を覚えつつ迎えた後半、押しまくる旧来の物語イズムの勢いが一応は圧倒する。しかし、これでは(「貞子」+「キャリー」)×アル…

最後の決闘裁判

★★★ 2021年10月21日(木) TOHOシネマズ梅田10 粗野で豪放磊落な田舎騎士をマット・デイモン、女たらしの二枚目成り上がり騎士をアダム・ドライヴァーって、ちゃうやろのキャスティングだが、見せ切ってしまう2人のキャリアはさすがだと思う。 制作・…

ザ・トレイン

★ 1991年2月24日(日) 新世界国際劇場 80年代に量産されたパチもん伊ホラーの中でも屈指と言えるつまらなさ。汽車出せばその走行ダイナミズムが取敢えずは映画に疾走感を付与してええ筈なのに全くありません。寧ろそのチンケさに心寂しくなり出鱈目さに気力…

櫻の園

★★★★ 1991年4月21日(日) シネマアルゴ梅田 大真面目にチェーホフに取り組む女子高生たちというだけでも随分面映ゆく正視できないのではと思ったが、斜に構えることが恥ずかしいとさえ思わせる「世界」への没入ぶりで、何事も信じて真面目に事を成せば誰はば…

★★★ 2007年5月19日(土) 天六ユウラク座 液状化する湾岸埋立地帯という如何にもながらそそるキーワードの選択に惹かれたし、前半は視覚的にも黒沢的不均衡を漲らせて相当良い。しかし、謎は解かない方がいいね。馬脚が現れるから。そして『回路』な終末イメ…

新座頭市物語 折れた杖

★★★ 1991年5月19日(日) 日劇シネマ 変わりばえしない物語だが、勝のシリーズ初演出にマカロニウエスタンを手本にしたと思しきケレンがあって悪くない。寒村のムードも輪をかける。しかし、手本にしすぎて、ラストはまんま『続荒野の用心棒』みたいになっちま…

座頭市 血笑旅

★★★ 2007年7月21日(土) 日劇会館 妥協せず生身の赤ちゃんを使い続けたから勝新・ひづるの打算カップルにも真摯な縁が降りて来る。が、そこが本作の最大の肝なのが弱いか…。濡れた農村風景の切り方に多くの冴えたショットを挟み按摩集団との3度の邂逅別離…

フェリーニ サテリコン日誌

★★ 1991年6月23日(日) みなみ会館 フェリーニに対する無邪気な憧憬があって、奇矯で馬鹿でかいセットが幾つもあって、珍奇な扮装の人々があちこちに居る。そこでカメラを回せば何某かのものになるのであって、『サテリコン』という巨大な怪物を解き明かそう…

ざくろの色

★★★ 1991年9月22日(日) みなみ会館 タルコフスキーに捧ぐと言うからには後継者として彼を認知したということなのだろうが、研ぎ澄まされたものではなくスラブ的素朴さと宗教臭濃厚なイメージの連続に戸惑った。オムニバスなイメージ集なので、とらえ易い筈だ…

ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結

★★★★ 2021年8月19日(木) 大阪ステーションシティシネマ2 見終わった感想。 「なんだか、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』と変わんないじゃん」 どっちも人間と非人間の混成チームが敵をやっつけるって話で、2作までは許せても、もし次同じパターン…

サクラより愛をのせて

★★★ 2021年8月15日(日) シネヌーヴォX なんでも「人間いじめシリーズ」とかの1作らしく、いじめ言うてもマナー悪い奴をサクラいう中年オバハンがいたぶり倒すてな内容です。桂朝丸(現ざこば)の語りに合わせてプレスコしたものが今作含めて4作品ほどあ…

ザ・スイッチ

★★★★ 2021年8月8日(日) 新世界国際劇場 男女の中身が入れ替わるって話は「転校生」がながらく独立独歩の位置を保ってきたと思うのだが、「君の名は。」が契機かどうか知らんがここのところ我が国テレビドラマを含め頻出し出してるみたいだ。ジェンダー障壁…

座頭市 地獄旅

★★★ 2008年8月9日(土) トビタ東映 アップ多用の前半の構図、水面を映さない渡海船の演出、障子越の一触即発、階段が介在する湯治場の風情、岩崎加根子の微妙な隠微さ…等々個々の要件は図抜けたものが多い。ただ構成が弱いのだ。タメが無くカタルシスを逃す…

座頭市

★★★ 1990年9月2日(日) 新世界東映 10余年のブランクを経て待望のと言うより結局それっきゃないかの煮詰まりが勝専制下の閃き統御で払拭されたとも思えぬがのり平から裕也に至る横断的キャスティングの多彩が歪な活力をもたらしている。雄大もいい味出して…

サイコ

★★★★★ 1990年10月8日(月) シネマアルゴ梅田 お上品ポーズをかなぐり捨て、エロスと殺戮の扇情ショーに特化し心行くまでの技巧を注ぎ込む。キャリア最高のタイミングで産まれた願望の完璧な具現。モノクロ撮影や構成の断裂という逸脱までもが映画を神格化。生…

サテリコン

★★★★ 1978年4月9日(日) SABホール 1994年7月16日(土) ACTシネマテーク 今で言うノンポリ青年2人が彷徨うエログロの一大饗宴が繰り広げられる古代ローマの各シーンはフェリーニの集大成とも言うべきスペクタキュラーなイメージ造形で真に圧倒的のひ…

里見八犬伝

★★★ 2009年9月26日(土) トビタ東映 改めて「八犬伝」というのは淫猥で変態な物語だと思ったが、それを脳内筋肉バカの深作がこれ又阿呆丸出しのひろ子・広之ペアに託し、勘違いミュージックてんこ盛りて青春青汁したたる絵巻として繰り広げるのだ。結構おも…