男の痰壺

映画の感想中心です

映画感想【さあ~さの】

殺人遊戯

★★★★ 2009年11月21日(土) 日劇会館 ハメット的世界に馴染む原田芳雄風口跡の松田優作はジグモンド的望遠使いの仙元カメラ世界の主人公としても又座りがいい。「ルパン」な大野音楽も含め混然とした模倣の確信的世界は統一のある完成形にまで至る。予想外で…

殺意の香り

★★ 1985年4月14日(日) 大毎地下劇場 謎の金髪美女や精神分析的アプローチを散りばめ否が応でもヒッチコックを想起させるのだが、違うのは主役2人に華が無く地味臭いこと。何を描くかではなく、どう描くかに主軸を置く映画作りはベントンの柄じゃない。遊び…

座頭市 THE LAST

★★★★ 2010年7月9日(金) TOHOシネマズ梅田5 渡世の非情と無縁の優しき「市」の造形に香取のがむしゃらで無垢な様が合っており、対峙する仲代・豊原・ARATA達の巧緻な悪との噛み合いに大いなる醍醐味があり、全体を統べる阪本の冷めた無常観が一貫…

ザ・ウォーカー

★★★★ 2011年2月12日(土) トビタシネマ 運ぶ男と奪う男。逃げる女と追う男。シンプルなテーゼを事後の虚無的な荒廃世界に描きマカロニウエスタンの復刻として堂に入っている。ヒューズ兄弟の演出はそれなりに抑制され、あざとさ臨界ギリギリ線上。老夫婦宅…

ザ・タウン

★★★★★ 2011年2月19日(土) 梅田ブルク7シアター5 今更な題材だが真摯な思いがあれば物語は人を打つ。多くの友の屍を乗り越える主人公に葛藤があまり無いようだが、一方では恋焦がれた女への矜持を現代感覚に立脚させたニューハードボイルド。その平衡感覚…

さすらい

★★★ 1983年1月22日(土) 神戸青少年会館研修室 一応は起点があり終点のある物語なのだが、間に挟まれた2時間強に物語を転がすものがほとんど無い。ミューラーの暖調モノクロ映像とロックミュージックに補完された親爺2人の長い無言旅からは気恥ずかしさを相…

細雪

★★★ 1983年5月22日(日) 伊丹グリーン劇場 4大女優が寄せ集めの感が拭えず、矢張り何度も企画に上っていた山本富士子を長女のアンサンブルが見たかった。見合いを軸に構成したのが定型的で安易。石坂の心情描写も唐突で心に沁みない。であるから矢鱈グラフィ…

ザ・ソルジャー

★★ 1983年5月28日(土) 伊丹ローズ劇場 世界を股に掛けたプロフェッショナル部隊の対テロリスト戦と言えば聞こえが良いが、開巻30分の掴みは兎も角、サウジ油田爆破の駆け引きにモスクワを核攻撃で対抗と話が無茶な割にショボすぎで白ける。米ソの対立構図…

さすらいの女神たち

★★★ 2011年10月8日(土) 梅田ガーデンシネマ2 舞台と楽屋に於ける女たちの圧倒的実存の前では、アマルリックの主人公の物語は決してあざとくもないにせよ、どうしても作為めいてしまうのが気の毒であるが、それも又本望であろう女愛を感じる。黒子に徹する…

佐々木、イン、マイマイン

★★★★★ 2020年11月28日(土) 大阪ステーションシティシネマ7 今年も残すところあと1ヶ月となったわけだが、多分、これが俺の日本映画ベストになりそう。 相変わらず四宮の空気の肌触りまで感じさせる撮影が絶品ということもあるが、語らねばこの先生きてい…

THE CROSSING 香港と大陸をまたぐ少女

★★★★ 2020年11月26日(木) TOHOシネマズ梅田6 香港を主舞台とした中国映画って点で見るものにはどうしたってある種のバイアスかかかる。民主化を弾圧しとる手前らが何いけシャーシャーと素知らぬ顔して撮っとるんじゃってことなんですが、しかし、そこ…

さくら

★★★★ 2020年11月15日(日) MOVIXあまがさき3 昔、原作を読んだ覚えがあるがほとんど忘れてました。 父母と長男・次男・長女の5人家族の一家の変遷史であり、次男が大学生になった現在から過去に遡及していく。 家族がひとつであった幼少期があり、子…

ザ・ウォード 監禁病棟

★★★ 2012年1月21日(土) 新世界国際劇場 題材といい観客を置いてけぼりにする短兵急な展開といい80年代に量産されたイタリアンC級ホラーを髣髴とさせる。真摯に撮ってそうなるナイス爺さんカーペンターの真骨頂は夢幻に揺蕩うかの如きダンスシーン。ただ…

サウダーヂ

★★★★ 2012年2月13日(月) シネヌーヴォ 閉塞感が絶望や破滅みたいな高度成長やバブルの合せ鏡ではなく、ここから始める者の視点で認知されている。そのマスなカオスを描く筆力に唸りつつ、マグマがプチ噴火に終わるのが矢張りもどかしい。「鉱水」や「ライ…

最高の人生をあなたと

★★★★ 2012年3月24日(土) シネリーブル梅田1 大年増と化したイザベラの曝け出した肉体の語る年月が、設定に同期し限りなく感動的。受けるハートもプレーンで歯車はしっくり噛み合っている。過剰な物言いはしないガヴラス演出の慎ましやかと芯の通ったブレ…

サニー 永遠の仲間たち

★★★★ 2012年6月14日(木) 梅田ブルク7シアター6 少女であれおばさんであれ、美人であれ個性派であれ、とにかく「女」であることは素晴らしいという全肯定に立脚しており、男は殆ど介入の余地すらない。いっそ清々しい。斎場ダンスの至福と粋なラストカッ…

西鶴一代女

★★★ 1982年5月29日(土) 新世界東宝敷島 墜ちゆく女の人生の幾つかの局面を櫛団子方式でつなぐ脚本は目まぐるしい展開力で飽きはこないのだが大局的な奔流は零れ落ちる。栄華の時期は華が欠け悲嘆の時代は徒に自虐的な田中絹代の演技。明確なポリシー欠く演出…

ザッツ・エンタテインメント

★★★ 2012年7月28日(土) TOHOシネマズ梅田10 所詮、俺は50年代MGMミュージカルが好きでないことが解った。アステアがパウェルと狂演するタップの白熱は見とれたが、ケリーの明朗はプレーンすぎる。寧ろ忘れられた水着の女王の壮大な白痴性や『シ…

真田風雲録

★★★ 2020年7月4日(土) 新世界東映 大真面目すぎる情の表出が身上の加藤泰としては、このキッチュなオフビート感は異形といっていいだろう。 で、それが上手くいってるかっていうと、どーもなんだかなーです。 ミッキー・カーチスがギターを持って登場する…

最初の人間

★★★ 2013年1月8日(火) 梅田ガーデンシネマ2 辛いこともあったにせよ少年時代の輝かしき陽光への郷愁が眼目であるなら、アルジェリア独立への半端な言及は全削除でもよかった。その及び腰がカミュの史的事実であるにせよだ。少年俳優が良く、ひたすら歩く…

37セカンズ

★★★★ 2020年2月9日(日) MOVIXあまがあき3 見てる間、1981年の映画「典子は、今」が頭をよぎった。 あれも、サリドマイドで両腕が無い実在の辻典子さんに映画の主役を演じさせていて、この映画でも脳性麻痺で下半身が動かない佳山明さんという女…

ザ・ウーマン

★★ 1981年5月18日(月) 伊丹グリーン劇場 モラルに囚われず奔放な性遍歴を重ねる主人公なのに生へのバイタリティも突き動かされる情念も感じ取ることは出来ない。かと言って、ひたすらに隠微な世界に没入し切ることも適わず凝った撮影や美術のみが虚しく浮…

最初の晩餐

★★★★ 2019年11月9日(土) テアトル梅田2 シャレのようなタイトルであるし、家族ものってことでワイワイガヤガヤのコメディチックなものかと思ったら、予想外に、これは静謐に真摯に家族の在り様を描いたものであった。 2人の子持ちのチョンガー男と1人の…

サイド・エフェクト

★★★★ 2013年9月11日(火) TOHOシネマズ梅田7 アングルやサイズのジャストミート感や編集リズムの快楽といった語り口の次元に於いて、ソダーバーグは現在進行形では最高ランクのアルチザンになった。正味、惚れ惚れするのだが、広げた大風呂敷を凡庸に…

最前線

★★★ 2019年10月20日(日) プラネットスタジオプラス1 低予算の小隊ものの戦争映画って山ほど作られてきたんやろうな。 とは思うが、第二次大戦を舞台としたものが主で、不思議とベトナム戦争や中東の戦争が舞台になるとあまりないように思う。 そうでもな…

殺人の告白

★★★★ 2013年10月12日(土) 新世界国際劇場 あれっ?…なカーチェイスに目を瞑れば、近来稀に見る展開の妙だが、演出の大半は韓国ジャンル映画の追随でしかない。だが、それでも心を撃ち抜かれるのは、尽きせぬ愛惜の想いと激烈な怨嗟の持続が心揺さぶるから…

サイレント・フルート

★★ 1981年8月2日(日) トビタOS劇場 やたら神妙に哲学ぶっちゃってるんだけど、所詮キャラダイン程度の野郎では本物の殺陣が見れるわけじゃなく、大体東洋へのリスペクトがあるなら毛唐ばっかりででっちあげる代物ではなっかったのである。草葉の陰でマック…

サイレントヒル リベレーション3D

★★★ 2013年12月21日(土) 新世界国際劇場 演出が小奇麗になって前作にあった歪な禍々しさは半減した。ストーリーはあって無いようなもんで、お化け屋敷のようにシークェンスごとの趣向を楽しめばいいと割り切るにしても、2番煎じキャラばかりでインパクト…

ザ・コール 緊急通報司令室

★★★★ 2013年12月5日(木) MOVIXあまがさき3 設定が課す制約を殊更巧みに利したとも思えぬし、サイコパスな犯人も若干弱い。まあ、ジャンルとして中の上くらいの出来なのだが、終盤で加点した。防戦一方の試合を延々見せられた末のカウンターアタック…

サイド・ストリート

★★★★ 2019年6月22日(土) シネヌーヴォ 「フィルム・ノワールの世界」という企画で見た。 この企画、見たいものがそこそこあるのだが、ほとんどがデジタル上映なので敬遠していた。 今回、他に見たいのがあって、どうせならとついでに見たのだが。 アンソニ…