男の痰壺

映画の感想中心です

映画感想【さは~さん】

ザ・ホード 死霊の大群

★★★★ 2011年7月9日(土) トビタシネマ セット美術の猥雑な殺伐さと撮影の即物的な質感が秀でている。強固な意志が貫徹されるドラマトゥルギーも妥協知らずに我侭で、得てして二の次になりがちな人間ドラマがゾンビと高度に融合し弛緩ゼロなのが驚き。100…

ザ・ローリング・ストーンズ

★★★ 2011年7月21日(木) シネリーブル梅田1 夕暮れの気だるさの中で唐突に開幕したスタジアムが薄暮から宵闇へと包まれゆく臨場感。淡々と演奏を続ける男達と1人必死なミックの対比を数アングルの固定で捉えた前半は粋だが、やがて不要なモンタージュが目…

サマー・ナイト

★★★★ 1983年9月5日(日) ビック映劇 どうでもいいよな1夜の狂騒を6人の登場人物で描くさして笑えぬアレン流艶笑劇シェイクピア風味。しかしウィリスのフィルターワークが完璧で黄金色の光に縁取られた真夏の避暑地が統御された世界を産み出している。とにも…

秋刀魚の味

★★★★ 1983年12月7日(水) ビック映劇 小津晩年の本流ホームドラマは『秋日和』で事実上終焉したのだろう。演出技法は一貫しているが腰の据わったテーマを扱ったものとも思えない。滋味があるとも言えるが拡散し徹し切れていない感じが残る。居酒屋の軍艦マー…

ザ・ハント

★★★★ 2020年11月13日(金) TOHOシネマズ梅田10 トランプがクソミソに言って上映を差し止めようとしたらしいが、どうもよくわからない。 だって、これは、リベラルのクソ富裕層が12人の貧困保守(?)を拉致って殺戮を楽しむ映画で、言うなれば反ト…

猿の惑星 創世記

★★★ 2012年1月7日(土) 新世界国際劇場 猿のシーザーが施設で自我を確立するまでの展開は、『ジャングル大帝』から『トイ・ストーリー』に至る王道のトレースで悪くもないが、抗人類へと舵を切って以降は戦略無き場当たりで、局地戦な橋での勝利程度ではカ…

三人の妻への手紙

★★★★ 2020年10月24日(土) プラネットスタジオプラス1 全篇にわたり、不在の女性“アディ・ロス”の名前が亡霊のように映画を支配する。人の口端にその名がのぼるたびに語感の良さもあって観客の脳裏に刻印される。「第三の男」のハリー・ライムや「ユージュ…

ザ・レイプ

★★ 1982年5月16日(土) トーエイ伊丹 レイプされた女性が被る心的・社会的ダメージをルポルタージュすることには意義はあるのだろうが、恋人との葛藤が男側のヘタレな描写を始め普遍性があるとは言えず映画の大義を薄めてしまった。本職弁護士を使った法廷シ…

★★★★★ 1982年7月8日(木) 新世界東宝敷島 1992年3月22日(日) 日劇シネマ 極右的喜八の潜在資質が全開する桜田門外の変。導入の驚異的テンションが冷めぬままに橋本忍の手練手管の脚本を受け演出・編集が冴えまくる。『椿三十郎』と正反のキャラを好演する小林…

三銃士 王妃の首飾りとダ・ヴィンチの飛行船

★★★★ 2012年7月14日(土) 新世界国際劇場 正直この監督でミラが出てきてええかっこするとウンザリなのだが、余り知らない三銃士の面々が面構えも良く、加えて敵ミケルセンもティム・ロスばりに良い。CG過多はともかく、終盤の屋根上での殺陣は久々の見物…

さらば愛しき女よ

★★★ 1982年7月16日(金) 毎日文化ホール チャンドラーを映画化するに戦略として既存の方法を抜け出ていないから相変わらず訳わからない映画になっている。懐古調40年代のムード形成には成功したとも思えるが馬鹿丁寧にやっただけとも言える。それが悪いわけ…

さらば愛しき大地

★★★★ 1982年9月17日(金) 梅田ロキシー 後半が一本調子でふくらみに欠けるが墜ちてゆく男と女を正攻法で描いて迫力がある。それでも特筆は冒頭30分。映像への確信と信託が圧倒的な強度を産み出す。中盤以降を牽引する秋吉の役へのアプローチも服装や髪型等…

サンセット大通り

★★★ 1982年12月18日(土) SABホール 魑魅魍魎と化したスワンソンをシュトロハイムと組ませる諧謔をご丁寧にデミル・キートン・ホッパーを配して補完する世界の構築力には唸るが、一方でホールデンサイドのドラマが弛緩して全く面白くない。クライマックス…

ザ・マスター

★★★★★ 2013年3月30日(土) TOHOシネマズ梅田4 劇的構成の醍醐味があるわけでもないが、映像の醸す豊穣が半端ではない。撮影と美術が渾然となり提示される情報の質量と、その中で揺蕩う演者の含蓄ある居住まい。ゲスでいかがわしい品性を達観の高度から…

さらば復讐の狼たちよ

★★★ 2013年4月13日(土) トビタシネマ コメディベースな緩さは良いとしても、一転非情に舵切る瞬間の振り切れが半端でもっさり感がいや増す。「馬車列車」や「女太鼓」とか珍奇への異様な拘泥は好ましく、殺され方に残虐嗜好が垣間見えることも買うが、如何…

3人のアンヌ

★★★★★ 2013年7月11日(木) シネマート心斎橋2 歩行運動の反復を繋ぎとして多用する点もあるが、俯瞰的物言いに全く嫌味がない点に於いてロメール的だと言っておこう。異郷で人は仮面を脱ぐ。当て書きされたかのような自我演技の狭間から生身の可愛い女が顔…

さよなら渓谷

★★★★ 2019年7月11日(木) シネリーブル梅田2 『砂の器』よろしく付加された「道行き」が受難と贖罪に纏わる怨恨パワーの凝結を示現して宗教的荘厳にまで至るかの見せ場なのだが、それでも、そこを敢えて描かない原作の志が高く見えてしまう。とは言え、全…

裁かるゝジャンヌ

★★ 1981年6月14日(日) SABホール 一旦乗り遅れてしまうと最早収拾がつかないまでに顔の接写が連続し数億光年の彼方に置き去りにされてしまいアホみたいに多少もう少し色っぽかったらなんてことばかり思い続けてしまう。気持ちのテンションさえ維持でき…

野蛮なやつら SAVAGES

★★★ 2013年10月12日(土) 新世界国際劇場 どうにもオリバー・ストーンの中腰スタンスが半端で乗り切れない。『Uターン』の頃と変わってない生温さ。野蛮は狂気にクソはど腐れに昇華しきれない。半チクヤッピーギャングが痛い目に合いそで合わない生半可で…

サンセット物語

★★★★ 2019年9月8日(日) プラネットスタジオプラス1 ロバート・マリガンの「地名+物語」3部作の掉尾を飾る。 なんてのは嘘で、「アラバマ物語」があたら名作になっちまったので日本の配給会社がテキトーにつけたタイトルだろう。尚、もう1本は「マンハ…

ザ・ファブル

★★★ 2019年6月20日(金) 大阪ステーションシティシネマ1 冒頭の殺戮シーンで、いらん小技を効かせやがってと、一挙にテンションは下がった。 監督の江口カンは前作「めんたいぴりり」では朴訥ともいえる作風だったに、チャラくなりやがってとも。 土台、ボ…

さよならくちびる

★★★★★ 2019年5月31日(金) TOHJOシネマズ梅田10 【塩田明彦】 立教パロディアスユニティの黒沢清につぐナンバー2であり、当然にハスミンの薫陶を受け、「映画術」なる著作をものにする。…なんて、バックボーンの割りに、終わってるやん。 って思っていた…

ザ・フォーリナー 復讐者

★★★ 2019年5月5日(日) MOVIXあまがさき1 ジャッキーの新機軸みたいな言い方をどっかで見たが、それほど何がしかが変わったようにも見えない。 「老化」であるが、そもそも「ベスト・キッド」がエポックで、ジャッキーが脇に回ったってのが革命的であった…

ザ・バニシング 消失

★★★★ 2019年4月12日(金) シネマート心斎橋2 生前のキューブリックが、「これまでに見たなかで最も恐ろしい映画」と言ったとか。 ずいぶん前に、監督のシュルイツァー自身がアメリカでセルフリメイクした「失踪」も見たのだが、ほとんど記憶にないので、た…

サンセット

★★ 2019年3月30日(土) シネリーブル梅田1 体調も悪かったが、始まって10分もせずに意識が遠のく。 意識が戻ると主人公が彷徨っている。 集中せねばと気を引き締めてまもなく意識が遠のく。 意識が戻ると主人公が彷徨っている。 とまあ、彷徨い続ける主…

さよならをもう一度

★★★★ 2014年7月4日(金) トビタシネマ サガンの中年女性への嗜虐的いたぶりがパリを舞台にした異郷感とシンクロして、受け一方のバーグマンの孤独感をいや増させる。ヌーベルヴァーグのようなシニカルさだ。トニパキの若気の至り的ダメさとモンタンの中年の…

斬、

★★★★ 2018年12月13日(木) シネリーブル梅田1 冒頭、刀を鍛造する過程がフェティッシュに描かれ、出来上がった真剣の張りつめた擦過音が強調される。 そのメタリッシュなものへの偏愛が往時の塚本を期待させるのだが。 以後、真剣への偏愛が強調されること…

さらば夏の光よ

★★★ 1980年7月9日(水) 毎日ホール 友情優先な男気があるよな選択をしたのに、結果的に裏目に出ればその目に乗ろうとする筋の通らなさ。その現実認識は良しとしても、ざまあない青春が、あたらアイドル郷が主演となり無理くり格好付けさせた感がどうにもしっ…

三人の女

★★★★ 2018年11月24日(土) プラネットスタジオプラスワン 人格が入れ替わる(完全にとは言えないのだが)ということで、当時、アルトマンが影響下にあったらしいベルイマンの「仮面 ペルソナ」が容易に想起されるのだが、そこには俺はあまり興趣をおぼえな…

サンゲリア

★★ 1980年10月12日(日) 伊丹グリーン劇場 とことんな伊映画屋魂はわからんでもないが、病的なまでに執拗な気持ち悪い描写の羅列には矢張り辟易する。炎天下の路上や公園で動物の死体を棒で裏返して見れば蛆が何百匹も涌いていた…そんな生理的嫌悪感を煽り続…