男の痰壺

映画の感想中心です

映画感想【た】

黄昏

★★★★ 1992年10月7日(水) シネマアルゴ梅田 『嘆きの天使』から扇情性と加虐味を取り除き親愛と矜持を加味した。最後の一線ギリギリで持ちこたえた男のプライドが泣ける。重厚なワイラー演出も良いが、やはり2大名優オリビエとジョーンズが凄いの一言。(cine…

大樹のうた

★★★★★ 1992年11月15日(日) キリンプラザ大阪 3部作と銘打っているが前2作とは別物の手練れ感があり絶頂期のイタリア映画のような良質な芳香を感じる。アジア的なるものを欧州的な技巧の水準で書き直した幸福な融合。生きとし生けるものの悲喜交々と悲しみ…

大河のうた

★★★★ 1992年11月15日(日) キリンプラザ大阪 都会と田舎を往還する展開なのでメリハリが効いている。雑然とした都会ベナレスの描写に活力が溢れ脱田舎に目覚めるオプーの心情が極めて共感し得るものとなったが、そのテーマに新味は無い。しかし、ラストは矢張…

007 カジノ・ロワイヤル

★★★ 2006年12月14日(土) 梅田ブルク7シアター6 鋭利なクレイグボンドは支持する。キャンベル演出は前半の幾つかのシークェンス(特にコンゴとマイアミ空港)は傑出した押しなのだが、後半「マジ愛」に踏み込もうとして間延びした。再三断線するカジノの…

大地のうた

★★★★ 1992年11月15日(日) キリンプラザ大阪 描こうとするテーマにせよ使われる技法にせよ西洋的な洗練のフィルターを通した感は拭えない。特に兄妹が列車を見に行く件がそうだ。そういう点で若干風化しているとも思うがプリミティブな真実は随所に確かにある…

ダイナマイトどんどん

★★★ 2007年1月6日(土) トビタ東映 明らかに深作演出を意識した前半がパロディだと言うなら汁がしたたる位の本気が欲しい。設定が甘すぎ。東映実録常連組と岡本組とのコラボも食い足りなく岸田にもう1枚天本が欲しいところ。辛うじての終盤の狂騒がなけれ…

魂萌え!

★★★★ 2007年2月17日(土) 梅田ブルク7シアター4 カプセルホテルや鄙びた映画館やデパ屋といった選択された舞台があざとくなる臨界で物語に馴染んでいる。向田邦子の焼き直し感バリバリだが堪能した。斜め俯瞰の構図を要所で使う演出の醒めた視線の妙。女…

太陽

★★★★★ 2021年10月3日(日) シネヌーヴォ 終戦時の昭和天皇を描いた作品ということで、ある筋からは凄まじい拒否感と場合によっては嫌悪感を表明されることが目に見えている。余程腹の座ったバカが現れない限り日本人の手によっては撮られ得ない種類の映画で…

ダ・ヴィンチ・コード

★★★ 2007年4月12日(土) 新世界国際劇場 ローマカトリックをここまで真正面から撃つ物語がよくも大資本で撮られたものだ。肝心の本筋ではなく解説的過去挿話にやたら金をかけて歪つな感じでロン・ハワードの構成への誠実の欠如が露呈する。役者は揃ったが演…

大誘拐 RAINBOW KIDS

★★★ 1991年4月14日(日) 高槻セントラル 名演と言われるが北林も緒形も想定内の範疇を出ていなく刺激度ゼロ。喜八の演出は劇画的構図のデフォルメが連鎖するカット割のリズムが生命線なのに、緩んだ手持ちカメラのお手軽はマイナス要因でしかない。往年の輝き…

太陽の墓場

★★★ 1991年4月28日(日) トビタ東映 アナーキーなコンセプトは最高に良いのだが、寄せ集めの役者を散りばめた今村的混沌世界を理に勝った大島イズムが上滑りしていく。迎合し切れないそのギャップが面白いと言えば面白いが、やっぱ退屈でもあるし鬱陶しい。(c…

007/ノー・タイム・トゥ・ダイ

★★★ 2021年10月5日(火) 梅田ブルク7シアター2 そういうことするなら、そうなるに相応しい敵との死闘なり鬩ぎ合いなり今までの総括なりをケレンたっぷりに揉みしだいて納得させてくれっつうの。 って言うほど007に思い入れがあるわけじやないんですけ…

大日本人

★★★★★ 2007年6月8日(金) 梅田ピカデリー4 鈍重な一本調子でさして笑えないが一途にコンセプトを貫き明晰でクリアであるとも思う。CGと自主映画なハンドメイド美術の折衷バランス。ためた上での板尾とのコラボは完璧。上辺の反米イズムは真意だろうが躊…

他人の顔

★★★★ 1991年5月3日(金) シネマヴェリテ梅田 精緻な背景設定をするほど無名性に接近する公房原作に仲代では違うと思うが、抑圧の中で滲み出るヴァンプ京マチ子のエロティシズムには参る。変身願望を通して燻り出された匿名社会の本質は生硬とも思うがアンビバ…

ダイ・ハード4.0

★★★★ 2007年7月7日(土) ナビオTOHOプレックス8 新奇な趣向は皆無でプロットも過去3作の折衷だが、偶発の受動者から「HERO」たる自覚下、能動的マッチョに変貌したマクレーンに違和感は無い。軸のぶれない主人公がシリーズの魂を堅持しつつも「男…

現代インチキ物語 騙し屋

★★★★ 2007年7月21日(土) 日劇会館 身も蓋もないセコくショボい騙しのプロットの連鎖に終始するが、増村節絶好調のハイテンション演技で曲者たちが笑っちまうほどに威風堂々と弁舌まくしたてる。最後は遂に真性ハードボイルドに近似していく世界観の転倒。…

魂のジュリエッタ

★★★ 1991年6月23日(日) みなみ会館 『8 1/2』への返し歌だが、分身の映画監督に託せば恥も見栄も曝け出せたって、女房の心の深層はフェリーニだって解る筈無い。イマジネーションが2番煎じの感じがするのはそのせいだろう。一方女の性に依拠しないジュリエ…

大日本チャンバラ伝

★★★ 2007年8月18日(土) 日劇会館 TVの喜劇役者が繰り広げる場末感バリバリのプログラムピクチャーなのだが、中年ババア連の繰り広げる下世話なレビューのバイタリズムには侮れない日活イズムを感じる。吉村演出は全般緩いが劇中の舞台演出は案外意欲的で…

タロットカード殺人事件

★★★★ 2007年12月1日(土) シネリーブル梅田2 ええ年こいた爺さんが若いおなごと如何様に接したいか、又接して欲しいかという理想郷のような世界が延々と繰り広げられて陶然としてしまう。俺はウディほどの年ではないが現役であり続けたいものだ。『殺人狂…

ターミネーター2

★★★★★ 1991年9月4日(水) 北野劇場 趣向満載で突出するシークェンスの連鎖がチェイスに徹しためくるめく場の移動の中で融和し熟成される。馬代わりのバイクで走りながらドでかいショットガンを片手で回転させて撃鉄を起こす。ジョン・ウェインの様に。アメリ…

達磨はなぜ東へ行ったのか

★★ 1991年9月22日(日) みなみ会館 形而上的な物言いは嫌いではないのだが一片でもいいから何らかの真実を呈示して欲しいものだ。これみよがしな透明度高過ぎるフィルムは逆説的に物語を貶めている。本質を忘れ絵面に酔う典型的陥穽にはまった薄ぺらい擬似あ…

対決

★★★★ 1991年10月20日(日) 新世界国際地下劇場 冷戦も終わろうかというのに、又2人はベトナムとアフガンの亡霊を背負ってるというのに、そんなのは無関係に何故か男の闘争本能だけでがむしゃらに闘うというのが、サバけてて突き抜けたものを感じる。時事認識…

ダンス・ウィズ・ウルブズ

★★★★★ 1991年11月2日(土) 新世界国際劇場 孤独な魂が越境する。真の理想的生き方を得る為に何かを捨てることを納得性をもって描くに十全な配慮と時間配分が為されている。痛みを伴う惜別に憧憬と諦念を感じて久しく見なかったピュアな感動を覚えた。コスナー…

タイムボンバー

★★ 1991年11月2日(土) 新世界国際劇場 下手にヒッチを意識なんてしない方がいい。やるならトーンは全篇に渡って統一されるべき。結果できそこないのデ・パルマとなった。B級と言うには成り切れないマイケル・ビーンとパッツィ・ケンジットが微妙な味わいを…

大怪獣バラン

★★ 1991年11月17日(日) 日劇シネマ 攻防戦に徹したと言えば聞こえが良いが、こうも安易な出来合いニュースフィルムを連チャン使用されるとシラけるだけだ。自衛隊のPR映画かと思うくらいで、それはそれで構わないのだが、そう思って観ても出来が良いもので…

ダークナイト

★★★ 2008年8月23日(土) 梅田ブルク7シアター3 4人の主軸が織りなす「正義」貫徹の為の「暴力」介在への葛藤には、映画はあやふやな回答しか呈示し得ていない。究極悪ジョーカーに対しバットマンも検事も警部も軸がぶれすぎなのだ。部分的には冴えた演出…

大丈夫日記

★★★★ 1990年5月27日(日) トビタシネマ 30年代アメリカの上質スクリューボールコメディか、はたまた60年代東宝の熟達のサラリーマンミュージカルか…とにかく有無を言わせぬテンポの良さ。ユンファの芸域の広さにも感銘したが、何より2女優の掛値無く美人…

滝の白糸

★★ 1980年6月19日(木) 関西学院大学学生会館大ホール 戦前の溝口作品は数作品しか見ていないが正直どれも情緒過多で難儀する。古風的美男美女の新派調大悲恋劇から、それ以上の何かを汲み取ることは出来ない。後年の宮川が未だ不在というのもあるだろうが…

007 慰めの報酬

★★★ 2009年2月26日(木) TOHOシネマズ梅田7 クレイグのボンドは益々板に付きアクションもシークェンスの決めショットを配して冴えている。ボンドとオルガ嬢との微妙な距離感も好みであったが、もう1エピソード足りない。終盤はコネリー時代終盤のスペ…

ターミネーター4

★★★ 2009年6月13日(土) なんばパークスシネマ7 順な時間軸の平板さに加え『マトリックス』的未来観の新味無さに辟易する。新キャラワーシントン&カイルの物語も昇華せぬならコナーの存在は最早蛇足にしか見えない締まらなさ。構成の失敗だろう。序盤の2…