男の痰壺

映画の感想中心です

映画感想【ち】

小さき勇者たち ガメラ

★★★ 2006年5月29日(月) 梅田ピカデリー3 「子供の味方」であるガメラというコンセプトを突き詰めた挙句に現出された神憑り的霊感リレーに良い意味での開き直りの境地を感じた。前半の鳥羽の風情の細緻で叙情性に富む描写も良く、怪獣バトルも実景との融合…

地下鉄のザジ

★★★★★ 1992年12月10日(木) シネマアルゴ梅田 少女の都会での1昼夜の冒険譚をスラプスティックな技法を駆使してお茶目に描くと見せかけつつ大人世界の陰影と狂気を散りばめる2重底のような視線を現出させアナーキーな破壊の饗宴の果てにヌケヌケと物語を収…

父親たちの星条旗

★★★ 2006年11月11日(土) 梅田ピカデリー4 捏造された英雄神話に拘る余りにあっけないまでに単視眼的であり、ベトナム経由の出し遅れ感が横溢する。2部作になんか分けずに日米が対峙する戦略をパノラミックに錯綜する視点で描いてこそのものだろう。又、…

チャイニーズ・ゴースト・ストーリー2

★★★ 1991年3月21日(木) 新世界国際劇場 過剰なまでの情緒綿々さが拭い去られて1作目よりおもしろい…かもだが、張りぼてめいたラスボス登場の終盤は、やっぱり…感がもしや感を凌駕し反面安心感も覚えるという毎度馴染みの思考経路を踏襲してくれる。(cinemas…

注文の多い料理店

★★★ 2021年8月15日(日) シネヌーヴォX 恥ずかしながらこの有名な原作を読んだことないし話もどんな内容か知らなかった。でも、こういう怪異譚のオリジナルとも言えるベーシックなもので、宮沢賢治がオリジンなのか、彼もまた何かを参照したのか知りません…

チ・ジニ✕ムン・ソリ 女教授

★★ 2008年3月8日(土) 新世界国際劇場 女教授のトラウマとか凄惨な過去とかそういうものを描こうとしたようにも見えるがそうでもないらしくもある。演出は気取ってるようでもそうでもないようでもあるが単に稚拙なだけかもしれない。合間を縫ってひたすらム…

チコタン ぼくのおよめさん

★★★★★ 2021年8月15日(日) シネヌーヴォX 小学生の男の子が寝ても覚めても同級生の女の子が好きやと、そればっかり考えている。 なんじゃあそりゃあ、そんなん考えてるヒマあったらもっと遊んでもっと勉強しろ。 と俺が親なら言いそう。 でも、チコタンチコ…

近松物語

★★★★★ 1991年11月18日(月) 高槻松竹 溝口のと言うより日本映画の頂点を極める独立最高峰。宮川が印画した滋賀山中の朝靄と水谷が誂た商家の薄暗い奥座敷での衣擦れ。依田がセットする偶発の運命翻弄と沈殿の底より浮び上るパッショネイトな意思の昂揚と堕ち…

昭和残俠伝 血染の唐獅子

★★★ 1990年4月1日(日) 日劇会館 『昭和残侠伝』の監督として佐伯清の凡庸なアナクロは後世に残らなかった。集団のコラボと叙情味で秀でるマキノの水準作。予想外に屹立してしまった『死んで貰います』を別格としてもこれはこれで退屈はしない。しかし、若干…

チャーリー・ウィルソンズ・ウォー

★★★★ 2008年10月25日(土) トビタシネマ 強者の論理に依る単視眼な構造。対ヘリ砲の有無に収斂する物語は深みが無い。期待値ゼロのニコルズ演出にピークアウトした主演2人。見所はホフマンの曲演技のみかと思ったが今更にスター2人の力感に痺れた。特にジ…

菊豆

★★★ 1990年5月27日(日) 三番街シネマ2 次々と主従が逆転していく変遷は長編仕立てで撮るような題材なのに切りすぎて形骸化している。しかもフィルムの解像度が妙に良すぎるので形式主義的セット美術への拘りのみが突出してしまって浅薄な印象しか与え得ない…

地球でたったふたり

★★★ 2008年12月27日(土) ホクテンザ1 逆境に陥っても自己を卑下せず幼いながら社会と対等に対峙していこうという姉のバイタリズムに希望の灯を見出したいのだが、一方で姉妹愛とでも言うべき閉じた世界へ内向していく。そのへん何を描きたいのか困惑する…

チェンジリング

★★★★★ 2009年2月21日(土) 梅田ブルク7シアター7 実事件の再現物ジャンルの最高峰に屹立する厚み。衣装・美術・装置・メイク・CGの渾然一体となった達成度。その土壌の上で吠えまくるイーストウッドは愚直に全てを描ききろうとする。幸福な融合であろう…

チェイサー

★★★★ 2009年5月23日(土) 心斎橋シネマート2 イレギュラーな展開はグダグダだが苦にならない。ゴミでも頼らざるを得ない女と心根ではゴミではない男の距離感が絶妙だからだ。だから決定的に携帯留守録が心揺さぶる。『殺人の追憶』ほど深淵でもないが演出…

チョコレート・ファイター

★★★ 2009年5月23日(土) なんばパークスシネマ2 自閉症の設定が技習熟の方便としてしか機能せず疑問だし、阿部寛含む大人の三角関係話も濡れてはみせても心を穿つことはない。…でジージャーですが、彼女はよろしいな!技を出す瞬間に一瞬タメるんです。そ…

チャイニーズ・ゴースト・ストーリー

★★★ 1989年1月16日(月) 長崎東映パラス 腑抜けな優男が恋い焦がれて自ら越境し行くならともかく、最後まで強者の手を借りてと言うのでは物語のカタルシスは生まれない。であるから悲恋めいた造作は徒にイライラ感を増幅するのみだ。ジョイ・ウォンの圧倒的美…

地球が静止する日

★★★ 2009年10月24日(土) 新世界国際劇場 意味或るメッセージの呈示とは思うが一生懸命説得すりゃあ勘弁してくれるという数十年前の時代認識。それが他愛なく不快かと思えば何となく新鮮でもあったのが意外。神話世界の巨人めいたロボットと細菌兵器の暗喩…

父 パードレ・パドローネ

★★ 1988年4月10日(日) 吹田映劇 父と子の確執の話から子が解放され飛翔するというベクトルではなく何時の間にやら教条主義的展開へとすり替わったかのような座りの悪さを感じる。平易な教育テレビのドラマの如き深みの無い映像も含め何がいいのかよくわから…

築城せよ!

★★★ 2010年2月9日(火) ホクテンザ1 時間軸の刹那な崖っぷちでウェディングドレスを身に纏い戦国武将との永久の別れ。歴ギャル萌えであろうその瞬間に俺も若干は乙女チックに…が、矢張り江守との確執が弱いし、土台自己中な動機の築城に醒めた目線は解けな…

誓い

★★★ 1985年1月15日(火) シネマ温劇 戦争が悲惨で理不尽なものであることは多くの映画が描いてきたのであるし、そこで抽出したものが友情であっても何ら異を唱えるものでもない。しかしそれだけってのもどうか。今更のどストレートぶりに些か拍子抜け。良心作…

智恵子抄

★★★ 1985年8月17日(土) SABホール 片隅で育まれた世界が高名な詩人の手で世の脚光を浴びたとしても、幾千数多の脚光を浴びぬ物語もあるという今更感慨を岩下志麻の熱演が皮相にも呼び起こす。無名性こそが欲しかったところだ。中村と相性の良い成島東一郎…

父と子

★★★ 1983年1月23日(日) 伊丹グリーン劇場 力のある役者を揃えて端正な画角で丁寧に作られているとは思うがとにかく地味。父と息子の相克が和解に向かって1点の謎解きに収斂されて行くのが社会的メッセージ性を露呈させ純粋人間ドラマの醍醐味を後方に追い遣…

チャンシルさんには福が多いね

★★★★ 2021年1月13日(水) シネリーブル梅田4 昨年の日本映画「私をくいとめて」と極めて似ているが、俺はこっちの方がいいと思いました。 だって、アラサーの可愛い女子の悩みなんてたかが知れてるし、まだまだいける年齢だと思いますが、アラフォーの普通…

超強台風

★★ 2011年5月28日(土) トビタシネマ 特撮のええ按配の安さや、鮫登場のハッタリ根性なバイタリズムや、勇壮な解放軍が何処行っちゃた的お座成り感を笑えれば救いなのだろうが、自己批判皆無な廉価なヒロイズムの釣瓶打ちに不快神経を刺激され続けて正直し…

青島要塞爆撃命令

★★ 2011年7月9日(土) トビタ東映 懐旧的大らかイズムを感じさせるには対比し批判する匙加減が要るんであって、埋没し全肯定されたら退くしかない。気合乗り今いちな東宝ルーチンキャストの刺激の無さと円谷特撮の噴飯。浜美枝が出るシーンのみ目が覚めた。…

チョン・ウチ 時空道士

★★★ 2011年9月17日(土) 高槻セレクトシネマ1 突き抜けてなければあかんと言うつもりもないが、エッジの欠片も立っていない。丸まった鉛筆ばかりの筆箱のまったり感。恥ずかしい描写もないが、心の奥底も突いてこない。せめて、30分短ければとも思うし、…

中国女

★★★★ 1983年7月3日(日) 吹田映劇 ある種の革命の萌芽がお遊び的な男女の嬉し恥ずかしイズムの中で生成される点を露呈させて傑作。カリーナと哲学者との青い即興から5年、大学教授とビアゼムスキーの掛け合いは、少なくとも内実を伴うものに感じられた。撮影…

血槍富士

★★★★★ 2020年8月2日(日) シネヌーヴォ 内田吐夢の戦後復帰作であるが、テイストが山中貞夫っぽいのが驚きだ。って思ったら脚本が三村伸太郎。山中の現存3作の脚本家だった。「百萬両の壺」の剽軽が「紙風船」のペシミズムに急転する。これは、いったいど…

超能力者

★★★ 2012年7月14日(土) 新世界国際劇場 魅力的な導入で語られたドンウォンの出自だが、抗するコ・スの凡人然とした立ち居振る舞いは終ぞ覚醒せずに頂上決戦的カタルシスに至らない。世界が局所的で狭いのも物足りなく、黒沢清的ハッタリの終末エッセンスが…

地下水道

★★★ 1982年8月14日(土) SABホール 商業的ライティングを度外視しても伝えたいものがあったことは確かなのだろうが、映画的カタルシスは終局にしか存在しない。地下水道の描写は息苦しいまでに凄惨だが…それだけ。自戒史ならせめてもロマンティシズムくら…