男の痰壺

映画の感想中心です

映画感想【に】

肉弾

★★★ 1991年4月14日(日) 高槻セントラル モラトリアムな主人公が戦争を内在化する過程が多分に形骸的で、低予算を逆手に取りシュールを模索する狭間で居所を見出せていない。ブラックジョークに成り切れていない据わり処の悪さ。哀しくも喜八の怨念は骸のよう…

忍者

★★ 2007年4月7日(土) 天六ユウラク座 最初はモラトリアムなテキトー野郎だとしても、物語はその成長を促し何かが内部で変容していく様を抽出すべきで、その為にこそ魔裟斗・白田のニッポンカップルをこそ深く掘り下げて欲しかった。ただそれ以前に今更忍者…

憎いあンちくしょう

★★★★ 1991年4月28日(日) トビタ東映 東京から九州までジープをブッ飛ばすことで何かが得られるなんて幻想だとは思うが、そういう幻想は映画の中なら信じてみたい。少なくとも映画内では皆それを信じて真摯そのもので泣かせる。中でも浅丘ルリ子の輝きは神懸…

にっぽん泥棒物語

★★★★ 2007年6月16日(土) 新世界東映 大半がどうってことない世間が時代が悪いのよ的左翼イズムに迎合し、笑いの中でリアルに松川事件を撃つという高度な諧謔趣向も若干褪せるが、正直この伊藤雄之助には参った。このおっさんが出てくるとアドレナリンが全…

二十四の瞳

★★★ 1991年8月18日(日) 毎日文化ホール 全篇に流れまくる童謡唱歌が問答無用に涙腺を刺激する装置と化するので、逆にこの映画が内包するらしきロマンティシズムや反戦イズムは涙に霞んで見えなくなるという完全な戦略ミス。反撥を覚えつつも一種異様とも言え…

ニキータ

★★★★★ 1991年9月23日(月) 新世界国際地下劇場 柔なジュテーム野郎どもが羽振りを効かすお国でシネスコスクリーンに真正面から情緒を断ち切ろうとする女を描いたのに驚いたし正に快打だと思った。目新しくもない設定のなか斬新なリアクションが鶴瓶打たれる。…

28週後…

★★★ 2008年1月30日(水) TOHOシネマズ梅田6 ハードにポリティカルなシュミレートには好感を持つが一方でドラマトゥルギーの醸成は蔑ろだ。全てのしがらみが断ち切られる終盤にこそ意味があるのだとしても、やはり「背信」には決着が欲しかった。凝った…

虹に向かって

★★★★ 2021年8月15日(日) シネヌーヴォX 敵対する2つの村があって、深い渓谷が互いの行き来を阻んでおりました。双方の村の男の子と女の子が渓谷越しに互いに興味を持ち、興味は好意に、好意は恋心へと。 とまあ「ロミオとジュリエット」みたいなもんです…

日本俠客伝 雷門の決斗

★★★ 2008年8月9日(土) トビタ東映 ロミ山田や村田英雄が軸を回す芸道風味作。知り尽くしたマキノ演出が悪かろう筈も無い。ただ、健さんの居場所の無さが観てる方まで居心地悪くさせる。肝心の見せ場も島田・長門の老若コンビに持ってかれる始末。釈然とし…

日本俠客伝 花と龍

★★★ 1990年3月21日(水) 日劇会館 火野の世界が東映任侠映画の世界と親和するのはさも有りなむだしマキノは手馴れた世界を手馴れた役者で破綻無く演出して全く飽きさせない。長大な原作のダイジェスト版の感は拭えないが想外に東宝招聘の星由里子は純子に対し…

日本のいちばん長い日

★★★★★ 1990年4月7日(土) 日劇シネマ 怒涛の切迫の中、抗戦・終戦の軋轢が苦渋の汗と妄信の怒声と狂気の殺戮を伴い錯綜。喜八ピークの編集テクが俯瞰の視座に結実した映画史的僥倖。局面に埋れた史実に言及する大講談で庶民不在を誹るのは筋が違う。パノラミ…

逃げた女

★★★★ 2021年6月28日(月) シネリーブル梅田2 一定の所与の反復条件を規定した3題噺。 主人公が女友達(先輩)を訪ねる→ 飯を食いながら友達(先輩)の話を聞く→ 近況を聞かれて「5年間亭主と離れたことがない」と答える→ 再び友達(先輩)の話を聞く→ 男…

日本女俠伝 鉄火芸者

★★★ 2009年3月28日(土) トビタ東映 所詮は芸者が侠客の斬った張ったの世界に介入できる術はなく、笠原のロジックも解決の道筋は見出せない。純子は傍観者で脇文太で締めざるを得ない煮え切らなさ。羽織会の締め舞くらいではアドレナリンは滾らないのだ。(c…

226

★ 1989年6月24日(土) 長崎東映シネマⅡ 時として若者の狂熱的思想が国家の道筋を引いてきたのであり、226が革命かファッショな軍事クーデターかは表裏に同一なのだ。でも、この映画はそのへんを何も語れず能面役者の稚拙な学芸会を延々と見せるだけ。ただ…

2012

★★★ 2009年12月6日(水) TOHOシネマズ梅田2 拡大再生された『日本沈没』的終末への絶望的誘いが支配する中でのLA大崩落の細密画の如きビル断面の部屋部屋の精緻は笑劇的なまでの感銘度であった。が、案の定と言うか…。映画はミニマムに家族の物語に…

二十四時間の情事

★★★★ 1987年4月5日(日) SABホール 忌まわしい過去に傷ついた心に突き刺さるヒロシマの街の風景がサッシャ・ヴィエルニのエッジの効いた映像で象徴化される。ここには原爆の意味を問う何ものも実のところ無い。あるのは個人と普遍が時間の流れに解体されて…

ニュームーン トワイライト・サーガ

★★★★★ 2009年12月22日 梅田ピカデリー2 ただひたすらに彼氏のことが好きで、会えなくなった日にゃあ飯も喉通らない…という乙女心のみを描くことを徹頭徹尾貫き類い希なる強度に達している。男2人に割って入り「私の為に戦わないで!」か…。大向こうから掛…

二・二六事件 脱出

★★★ 2010年1月9日(土) 日劇会館 「二・二六」を背景に描いて事件への客観的視座を確保し得ているところが良い。青年将校は徒にファナティックでもヒロイックでもない。健さん始め後の任侠面子の神妙演技への違和感も三國とのコラボで均衡を保つ。ただサス…

人間失格

★★ 2010年3月2日(火) 梅田ピカデリー1 今の時代に単に堕ちていくことを描くことで何かを呈示できると思ってるのだろうか。それをご丁寧に似非清順歌舞伎めいた桜や花火で縁取るのが尚阿呆らしい。一歩譲っても時代が意味を持つ話。男役者たちの今風所作の…

人間の條件 完結編

★★★ 1985年8月25日(日) 梅田松竹 裂帛の気合が引き続き漲るのだが、それが概ねマイナスベクトルな敗北の終焉へと向かうものだから圧力に打ち負かされた疲弊感が勝ってしまう。極限の状況下では良識など無意味であることを描いた点で幾千もの浅薄な教条主義的…

日曜日が待ち遠しい!

★★★ 1985年9月23日(月) 新世界国際 下手の横好きでも何本か撮ってれば肩の力が抜けて洒脱なムードが醸成される。トリュフォー米ミステリー翻案もの系譜上の新生面とも言えるこぢんまりしたモノクローム小品。しかし、赤川次郎原作の本邦作と違いアルダンが骨…

人間の條件 第三・四部

★★★ 1985年8月25日(日) 梅田松竹 「第1部」も「完結篇」も兎にも角にも上映時間の終盤へ向けて感情ボルテージが高まる配慮が為されているのだが、幕間つなぎ的に小エピソードで繋いでいく本作は矢張り中だるみの一篇と言わざるを得ない。(cinemascape) keni…

二代目はクリスチャン

★★ 1985年9月21日(土) 友楽スカラ座 つか流「任侠」パロディだろうが、嘘八百であるから過剰なまでのエネルギーで牽引し切れないとボロが出てママゴト化する。その辺、同工の『蒲田行進曲』に比べて役者が弱すぎるのだ。我慢を重ねての最後の反撃も王道パタ…

人間の條件 第一・二部

★★★★ 1985年8月24日(土)~25日(日) 梅田松竹 馴れ合えばいいものを組織の中でモラルと正義を貫くということは、裏返せば我を通すということである。それが如何に絶望的に困難な道程であるかを執拗に描き続ける9時間作の初篇で又烈迫の気合いが漲る大陸もの…

ニンジャ・アサシン

★★★ 2011年1月22日(土) トビタシネマ アバンタイトルの掴みは過激に冴えており、その後の展開も抑制があり良い。だが、中盤以降に、お決まりの抜け忍話が透けて見えてきて急速に物語りは求心力を失う。殺陣も集団戦ではスタイリッシュさが失せグダグダ展開…

忍たま乱太郎

★★★ 2011年8月13日(土) 梅田ブルク7シアター7 一応は規範に沿いつつ若干の糞尿ネタで遊ぶ程度の三池調が、中盤の鹿賀の逸脱あたりから新規登場人物の釣瓶打ちが悉くハマって得意の宴会芸祭りの様相…になりそうだったのだが、所詮清史郎君を立てるしかな…

日本の夜と霧

★★★★ 1983年12月11日(日) 伊丹ローズ劇場 1990年9月29日(土) みなみ会館 反体制闘争を描くに製作も制約を逆手に取った体制打破気分を横溢させるいう前代未聞の戦略。大島の空気を読む山師才能が全開。2世代の闘争の総括が呈示されたとも思えぬが吉沢京夫の…

日本春歌考

★★★ 1983年12月17日(日) 伊丹ローズ劇場 春歌は切欠に過ぎず展開されるのは世代間のイデオロギーの相克。討つ側の先鋭であった大島が伊丹に代弁させた討たれる側に立つというジレンマは未解決のままアナーキズムにすり替えられる。建国記念デモという時事的…

やくざ戦争 日本の首領

★★★ 2012年1月21日(土) 日劇会館 朴念仁佐分利と「仁義なき」面々とのジャンクション鶴田の任侠由来の安定感が圧倒的。その古女房市原との微妙なコラボも良く、一方で火野と絵夢が醸す四畳半ムードと似非『ゴッドファーザー』的臆面無さ。壮大な混沌だが所…

NINIFUNI

★★★★ 2012年3月9日(金) シネリーブル梅田1 前半は精緻と言うには遠いし、後半の導入で全てが解ってしまう単線構造ではあるが、にしても、開発を放棄されたかのような幹線沿いと小汚い海辺での荒涼こそが「今」を訴求する。「絆」とか糞甘い言説が持て囃さ…