男の痰壺

映画の感想中心です

映画感想【ひ】

美女と野獣

★★★ 2002年5月3日(金) シネリーブル梅田1 誰もが知るこの話を如何に見せるかのコクトーのアイデア自体は稚拙な戯れで今更の感があっても、多分アルカンが主導したであろう日常シーンの気合い入りには瞠目させられる。音楽オーリック共々仏映画のレジェンド…

左側に気をつけろ

★★ 1994年8月6日(土) 京都朝日シネマ1 どうにもこのタチの芸風が好みではなく、ヘタの横好きみたいな親爺が様にもならないチャップリンの物まねをしてるみたいな居たたまれ無さを感じる。この人の芸風は「のんき大将」を経てキートン風な「ユロー氏」で完成…

瞳が忘れない ブリンク

★★★ 1994年9月4日(日) 新世界国際劇場 ワンアイデアの中級サスペンスも手堅い職人監督にスピノッティ級の撮影を掛け合わせると上出来のサスペンスになる。ストウは人形みたく趣味でないが幻視するキャラとして表情の硬さが寄与し哀切さを醸し出す。他の地味…

光の雨

★★★★★ 2002年6月12日(水) テアトル梅田2 役者のチープな感想とセンチにポーズを決める監督像を割引いても、反社会的でも信念に賭して朽ちた同時代人達への想いが心を打つ。個では真摯な思いもマスになるとヒエラルキーに駆逐されるジレンマを2重構造が虚構…

ビリケン

★★★★★ 2002年6月26日(水) ホクテンザ1 収束しないものを体裁だけで辻褄を合わせる適当さが穴かも知れぬが、この新世界ワールドが好きなんだからしょうがないとしか言えない。脇のキャスティングが抜群で特に岸部に感嘆。浜村淳は『ガキ帝国』の上岡龍太郎を…

団地妻 昼下りの情事

★★★ 2002年9月26日(木)~27日(金) 東梅田日活 ロマンポルノの原点というよりテレビの昼メロやサスペンス劇場の原点のような気がした。そういうオーソドックスな王道の風格があるし、日活の底力を感じさせる撮影と美術。何より一見老け顔な白川和子のミニスカ…

火まつり

★★★★★ 2022年4月25日(月) シネヌーヴォ 原作・脚本/中上健次、撮影/田村正毅、美術/木村威夫、音楽/武満徹。とまあ、この布陣を見ただけで柳町がこの映画にかけた裂帛の気合いが伺える。そして、それは結果に結びついてると思います。個人的には「さら…

緋牡丹博徒 お竜参上

★★★ 2002年11月23日(土) 扇町ミュージアムスクエア 『花札勝負』で完成された世界の残滓。前半の凝りまくりのショットの数々は美学的完成形を思わせるが独善の兆しも漂う。毎度の阿部徹のズルくて悪い様が度を超しており文太も健さんや鶴田に比べ未だ頼りな…

昼下りの情事

★★★ 1993年5月26日(水) シネマアルゴ梅田 おっさんが小娘にメロメロという設定が生半可で振り切れてないので薄ぼんやりしてる。アンチモラルを厭わないワイルダーがクーパーに遠慮した本懐でない妥協作。そんなこんだで列車を使った王道なラストが来るのだが…

ピンポン

★★★★ 2003年1月21日(火) サンケイホール 「卓球」と「CG」と「窪塚」…食指のわかない3題話みたいだし、王道的スポ根ものを逸脱するものでもない。しかし、「スマイル」と「アクマ」という脇キャラの造形が頭抜けて良く、ありがちな天才と凡人の構図を多重…

緋牡丹博徒 お命戴きます

★★★★ 1993年7月11日(日) 新世界東映 『ゴジヘド』と同年製作が意味をもつ公害問題が映画のモチーフをも浸食したメルクマール。シリーズ中では本流とは言えないかも知れないが、背景の荒みと穢れの陰影が末期感に感応し藤純子の殺陣に於けるシリーズ最高の濃…

ピカソ 天才の秘密

★★★★ 2003年3月17日(月) OS劇場CAP 1枚の絵の創作過程に於て写実から抽象に向かい何十重にも上塗りされるその躊躇の無さに勿体無えと思いつつも一種のトランス状態に嵌っていく快感。ピカソ本人も製作側も申し訳程度にしか出さず、ただひたすらに絵そ…

病院で死ぬということ

★★★★★ 1993年8月2日(月) テアトル梅田2 1996年8月24日(土) 萩市民館大ホール 死ぬということを描いた部分の抑えた台詞回しや固定カメラに作為を感じるとしても、この死にゆく者にしか感じ取れないと思わせる市井の風景や何気ない人々の営みの美くしさと愛お…

PNDC エル・パトレイロ

★★★★ 1993年10月16日(土) みなみ会館 主題としては珍しくもないが主人公が決してスーパーマンでないところが良い。女房の尻に敷かれて思い悩みながら黒く染まっていく過程がヒューマンだし切実。不穏な予兆を孕みながらも、一方で独特のユーモアのセンスに彩…

HERO

★★★ 2003年8月19日(火) 梅田ピカデリー4 講談調語りに『切腹』、兵士と馬に『影武者』の影響を色濃く滲ませた極彩色武侠映画。殺陣は本職同士より出来ない役者のそれに誤魔化しの美を見る。チャンとレオンを削ってでも我欲を捨て死地に赴くリーの悲愴と達観…

昼下りの情事 古都曼陀羅

★★★ 2004年1月22日(木) 東梅田日活劇場 主人公が現状から逃れたいのか諦念から受容しているのかが今いち伝わらない上に、悪も被虐も中途半端でダラけるなか小沼的耽美ギミックのみを中途半端に挿入されてもシラけるだけだ。京都の風情や情緒も鋭利に切り取ら…

火火

★★★ 2005年3月14日(月) 梅田ガーデンシネマ2 演技を超え「生き方のポリシー」とでもいうようなムキ身をさらけ出す田中裕子視点1本被りでゴリ押せばメッセージ臭は払拭され稀代の女傑映画として屹立するものに成り得た筈。息子の死に直面した母親としての煩…

PTU

★★★ 2005年11月28日(月) トビタシネマ 黙々と他者の為に夜の街の静寂を彷徨するPTU隊員達というコンセプトは支持したいが情緒が過剰なのだ。で、結局本筋に絡まず終局で結合する構成も良いが余りに取って付けたかの如き乱戦をこれ又情緒ふんだんのスロー…

ピクー

★★★ 1992年11月14日(土) キリンプラザ大阪 劇的誇張が無い文字通りスケッチ的作品なのだが、茫洋とした中にも奇妙な緊張感が画面を横溢しているのが一筋縄ではない。しかし、死と孤独に縁取られた救済の無い物語からは老いた諦観しか感じられず、それで完結…

緋牡丹博徒

★★★ 1992年10月25日(日) 新世界東映 加藤泰の諸作と比べこのシリーズ初作は凡庸に感じられるし、前代未聞の女博徒という衝撃を抜き去ると所詮は従来型任侠映画の枠内に留まる。だが、おキャンキャラだった藤純子のコペルニクス的登用が結果アンビバレントな…

ひらいて

★★★ 2021年11月3日(水) テアトル梅田1 好きな男に告白したが振られる。どうも彼女がいるらしい。自分は可愛いし勉強も優秀で寄ってくる男もいる。イケてる私なのに何故?いったいどんな女なの?ってことで興味を持つ。まあ、ここまではわかる。 でも、地…

ヒストリー・オブ・バイオレンス

★★★★★ 2007年2月17日(土) トビタシネマ 巻頭からの唯ならぬ気合い。調和的な家庭は介入する暴力と如何様に均衡を見出すか。その答は永遠に見出すことはできないという詠嘆。『わらの犬』を想起したし、ペキンパーイズムが随所に溢れる突発的殺戮シーンに痺…

羊たちの沈黙

★★★★★ 1991年7月4日(木) 梅田ピカデリー2 追う者と追われる者のキャラ創造や事件の細部に腐心してきた数多のクライムサスペンスの歴史をコペルニクス的に転回させた対立軸のズレは物語後方の主人公のトラウマを抽出し前面に立てる。なのに、バラけるかに思…

膝と膝の間

★★ 1991年8月25日(日) 日劇シネマ 非常に言い訳がましい展開で、成る程、儒教の国に於けるポルノ勃興にはそれなりの弁証的措置が必要だったのだろうが、かえって三流の昼メロか出来の悪いロマンポルノみたいなテイストになってしまった。SEXに対し悦びも…

ヒルコ 妖怪ハンター

★★★ 1991年9月1日(日) 日劇シネマ 塚本的湿度の高さが気色悪い一方そこが全てとも言える及第の和製ドタバタホラーで当時の香港映画のレベルに唯一追随し得ただけでも賞賛に値するが、やっぱ歪な要素が神経を間々逆撫でもする。当時の黒沢『スウィートホーム…

必殺4 恨みはらします

★★★ 1991年10月20日(日) トビタ東映 ルーチンワークの原TVシリーズに映画界に於けるルーチンワーカー深作が得意の傾いた意匠てんこ盛りの骨太さを織り込み対価に見合うものにはなっている。見合わないクソ劇場作があっただけに、やけに上作にも見えるが実…

新宿酔いどれ番地 人斬り鉄

★★ 1990年3月21日(水) 日劇会館 義理を通し苦渋噛む古典任侠道へのアンチテーゼとしての破滅型ヒーローなら飼犬たる己の飼主にこそ噛み付いてなんぼだろう。愚痴ってやるせんわと自己憐憫に浸る間があるなら徹底的に破壊しろってんだ。凡庸な演出とエッジの…

人生劇場 飛車角と吉良常

★★★★★ 1990年4月1日(日) 日劇会館 任侠映画の勃興初期に大正生まれの御大が放った前夜祭。3大スターは既に安定した境地を見出しているのに驚くし、一幅の絵画と見紛う絵面には浪漫の薫りさえ漂う。こういう邂逅にこそシンクロする映画史に於ける奇跡を我々…

悲情城市

★★★★ 1990年7月1日(日) 三番街シネマ2 1994年6月12日(日) つかしんホール 評価が決定的になった侯孝賢が己れの手法に絡め取られたような窮屈さを感じる。同じ構図で再三出てくる坂道のクドさや、いかにもオリエンタル情緒な立川直樹の過剰音楽がうざい。『…

光る女

★★★★ 1990年8月11日(土) みなみ会館 相米のことだからクドいまでのダメ出しをした筈にもかかわらずのド素人カップル武藤と秋吉のヘタレで木訥な演技がモチーフの「純愛」にフィットし涙を誘う出来。クラブジョコンダの意匠は借り物臭いがシャープな撮影とフ…