男の痰壺

映画の感想中心です

映画感想【ら】

ラヴィ・ド・ボエーム

★★★★ 1992年11月29日(日) 大毎地下劇場 相変わらずのダメ男どものエレジーだが、カウリスマキ身上のタイトさが消え相当に贅肉がつき展開もモロ予定調和になった。しかし、サルミネンのモノクロの粋に随分救われているし、役者・楽曲等に新たな導入を試み成果…

ラストエンペラー

★★★★ 1991年9月1日(日) ホクテンザ2 ベルトルッチが全てを手中に入れた上で構築したとは思えない。妖怪支配の退廃異世界が投げ込まれた幼児に形成を及ぼす過程には納得するが、後半の重層的史観には自己範疇のエッセンスしか窺えず薄っぺらい。論外の坂本は…

ラスト、コーション

★★★ 2008年2月2日(土) TOHOシネマズ梅田8 「ごっこ」の華やぎがのっぴきならない「地獄」へと転化するメリハリが足りないのでダラダラとしんどく、又、レオンの心の闇を徹底抽出せぬまま四十八手の閲覧会で変態性を呈示。見せ場ではあるが琴線に触れ…

ランボー 最後の戦場

★★★★ 2008年8月23日(土) ホクテンザ1 乱暴者が殺しまくったって何も解決するわけでもないのだが、スタローンは聞く耳を持たないだろう。ライティングの安い80年代量産B級フィルム感はやがて雨と泥と血と肉魂にまみれた一大ジェノサイドに至る。小賢し…

ライラの冒険 黄金の羅針盤

★★★ 2008年9月13日(土) 新世界国際劇場 予定調和なまでの意外性ゼロな展開な上、体温低そうなキッドマンやクレイグどころかライラ役の女の子まで低血圧気味で醒めた低音基調が持続。CG白熊とかが代わって担う感情起伏は無惨なまでに形骸的だし、何よりリ…

ライトハウス

★★★★ 2021年7月14日(水) 大阪ステーションシティシネマ5 全体的に出たとこ勝負の感が拭い難いと思う。 それは、作り手が謎の解答や物語の帰結を了解したうえで見るものを煙に巻くんじゃなくて、作ってる方も何だかわかんないまま成り行きで物語が転がった…

ラビッツ・ムーン

★★ 2021年5月6日(木) シネヌーヴォX お月さんには可愛いウサちゃんがいるんですよーという妄想に取り憑かれた男の話である。 というのはウソですが、まあそんなようなもんだと思う。 アンガーが50年代に撮ってはみたもののダメダーこりゃとお蔵入りさせ…

ラウンド・ミッドナイト

★★ 1987年9月13日(日) SABホール 雲上人と簡単に仲良くなるので有難みがない。起点がなければ最後も結び切れないし途中だって転がらない。有名プレイヤーとの凡庸な交流譚以上のものではない。ジャズが好きでムードに酔えればそんなことどうでもいいのか…

★★★★ 1985年6月1日(土) 三番街シネマ1 1999年10月16日(土) 動物園前シネフェスタ3 大上段に構えて滅びゆく者へのレクイエムを紡ぐには駒が足りなかった。役者は悲愴ぶっても本質を表出し切れない。特に原田とピーターは無惨。三の城は箱庭のミニチュアで敗…

ライトスタッフ

★★★ 1985年9月23日(月) 新世界国際 反骨の一匹狼チャック・イェーガーと制度内であるにせよ命を賭したプロジェクトに身を奉じた男達の対比に単なる並立配置以上の何の意味も見出せない。どっちも偉いというならそうだが、正直アバウトだし拙いことに大味だ。…

乱暴と待機

★★★★ 2010年10月15日(金) シネリーブル梅田1 下手にやればあざとくて見てられない奇矯世界のリアクション芝居を見せ切ってしまう明確なコンセプトの存在が演出にも演者にもあった。ただ、この過剰性が拠って立つ拠点が凡庸なので今一歩の根本構造自体を変…

ランブルフィッシュ

★★★★★ 1984年9月9日(日) 友楽スカラ座 『アウトサイダー』の変奏曲とでも言う存在であることに意味がある。広角レンズや微速度撮影を駆使した甘味料ゼロのモノクロ世界に最果ての世界の孤高な男達が深海魚のようにたゆたう。それに拮抗してレインも又向かい…

ラスト・ソルジャー

★★★ 2011年3月12日(土) 新世界国際劇場 それなりの大作なのだろうが、哀しいまでの今更感が横溢する題材の中、ジャッキーのオチャラケにも最早シャレとして微苦笑を送る気も失せる。それでも、真面目な彼は確信的で揺るぎは無さそう。それこそが後世に神話…

ラビット・ホール

★★★★★ 2011年11月12日(土) シネリーブル梅田2 失われた絆のドラマとして痛々しさが横溢し、実家や集会といった作劇上の付加要因も完璧に機能する。だが、真に斬新なのは加害者少年の在り方で、その錯綜する想いの絡まり合いが解れて提される微かな光明は…

ラスト・ターゲット

★★★★ 2012年5月12日(土) 新世界国際劇場 冒頭から「非情」を提示され、演出も低温を維持しこれみよがしさが皆無。エッジが効いてないとも言えるが、物語構造に同期した心地良い緩さ。ベッドシーンの即物感も良いが白眉は山中での『ジャッカル』的試射場面…

ライド・ライク・ア・ガール

★★★★ 2020年7月31日(金) 大阪ステーションシティシネマ3 女性で初めてメルボルンカップを制した実人物の話ってことで、メルボルンカップって日本で言えば天皇賞とか有馬記念みたいなもんですかね。よう知りませんが。 未だ女性の地位が確立されてない狭い…

ライク・サムワン・イン・ラブ

★★★★★ 2012年9月22日(土) 梅田ガーデンシネマ2 互いの言葉が頭上を素通りするディスコミュニケーションの時代と都市に於いて、その事にさえ無自覚な人々を撃つでもないキアロスタミの虚無や諦念さえ今更な冷えた世界への認識力。これは「絆」とかほざく空…

羅生門

★★★★★ 1981年1月31日(土) SABホール 脚本の徹頭徹尾なロジカル構成に対し、演出のパンフォーカス多用の人物配置は当意即妙で、パッションとエロスの発露に稀代の才能が2枚揃い、リリカルな瞬時の詩情をカメラは変幻に抽出する。真の天才的職人たちの奇…

ラストスタンド

★★★ 2013年4月28日(日) MOVIXあまがさき2 シュワが老残を晒すことなく身の丈キャラ設定を選択したことにホッとするのだが、となればイーストウッドの類似品とも感じられる。周到な計画の割に化物カーでぶっ飛ばす設定。その無茶振りを今いち生かせて…

ライムライト

★★★ 1981年3月13日(金) 梅田コマゴールド 『黄金狂時代』から『モダン・タイムス』までの4作品で映画という空間芸術の粋を極めたチャップリンが老いてロンドンの無名時代のバーレスクに回帰したのは矢張り老残だと思う。年寄りの理想郷願望に付き合うのは…

ラブINニューヨーク

★★★★ 2020年2月16日(日) プラネットスタジオプラス1 全然見るきもなかった映画なんですが、これは見て良かった。 だいたい、主演の2人がヘンリー・ウィンクラーとシェリー・ロングって何か名前聞いたことあるかもな2人で、代表作ってなんだっけと。てん…

ラストムービー

★★★★ 2020年2月2日(日) シネリーブル梅田3 1969年の「イージー・ライダー」の成功のあとの1971年、ピーター・フォンダは「さすらいのカーボーイ」でデニス・ホッパーは本作で監督・主演の映画を作った。 これは、とんでもないクソ映画としてお蔵…

ラストレター

★★★★★ 2020年1月21日(火) TOHOシネマズ梅田2 キャスティングを見たときに、守りに入ってるやんと思った。 松たか子と福山雅治ってのは無難だし、ましてや神木とすずに至っては食傷の感がある。庵野は遊びだろうしミポリンとトヨエツの「Love Letter」…

雷鳴の湾

★★★★★ 2019年11月23日(土) プラネットスタジオプラス1 ここ何年かアンソニー・マンの映画を折にふれ見てきてるけど、これは傑作だと思う。 まあ、大傑作だってのとはちょっと違うと思うが、大好き作ではあります。 冒頭、よれよれになって田舎道を歩いて…

ライオン・キング

★★★ 2019年9月2日(月) 大阪ステーションシティシネマ2 アニメ版は未見です。 であるから、どんな話なのか知らずに見たのだが、手塚治虫の「ジャングル大帝」との類似がとやかく言われたことは何となく覚えている。 しかし、これは、やっぱ違うものだと思…

ランナウェイ 逃亡者

★★★★ 2013年10月27日(日) MOVIXあまがさき1 所詮はハリウッド流に閉じる展開なのだが、それでも棄てた者と棄てざる者の過ごした膨大な年月の質量が否応なく滲み出る。そういった時代を同時代として生きた者達が共振するリアリティ。敢えて前面に出た…

ライフ・オブ・パイ トラと漂流した227日

★★★★ 2013年12月21日(土) 新世界国際劇場 猛獣と共棲するリアリズムが細緻であるから浮世離れた海洋描写が白々しくならない。デジタルに於けるCG使いの究極形とも言える解像度と完成度であり、過剰であることの楽しさに満ちている(飛魚・海豚・海月・ミ…

ラブレター

★ 1981年8月13日(木) ダイニチ伊丹 『サード』で流行監督に躍りでた東陽一第2期女性映画群の掉尾を飾る「にっかつロマンポルノ」という極北感は皆無で、又かの自己満足的陰鬱世界が繰り広げられる。そこにはジャンルに対する戦略的配慮は欠片も窺えない。自…

ラッシュ プライドと友情

★★★ 2014年3月5日(水) MOVIXあまがさき1 普通に見えて奇想なアングルを繰り出すハワード演出に調和するダークな深度のマントルの撮影が絶品で、それがクライマックスの豪雨の富士スピードウェイへと結実する展開に否応なく萌えるのだが…。実話の枷に…

ラム・ダイアリー

★★★★ 2014年3月15日(土) トビタシネマ 泥酔いも壊れるまではいかぬ匙加減が中米のダラーンとした風土と相まり半端で良い。高等遊民の田舎日記の朦朧とした無為な日々も後から思えば意味を為す的刹那な叙情。無駄が廃された性急な時代に復古されたコークの…