男の痰壺

映画の感想中心です

映画1991

バックドラフト

★★★★ 2023年7月12日(水) 大阪ステーションシティシネマ8 昔は監督ロン・ハワードにずーっと興味がなかったので本作も見てませんでした。彼はお人柄はいいけど鬼面人を威すような斬新さはなく、人の歩いた道を通って無難な仕事をする。大外れもない代わり…

銀馬将軍は来なかった

★★★★ 1994年3月13日(日) 天六ユウラク座 自分と子供達が生きて行く為にゃあ、どう言われようがこうするしかない…っつうボーダーを越える女の開き直りの図太さが素晴らしく今村的。余りにストレートな表現に序盤は臭みを感じたが中盤以降はずるずる引き込まれ…

蜃気楼ハイウェイ

★★★ 1994年4月2日(土) みなみ会館 フワフワとした茫洋感に包まれた一篇だが、正直、主人公が出会う人々の話は深いのか浅いのかようわからん。どうでもええような気もする。まあ、旅には出た方がいいのだとは思う。意味あることだけが人生を構成するわけじゃ…

見知らぬ人

★★★★ 1994年4月9日(土) 祇園会館 叔父さんの文明論は多分に青臭いのだが、それをさっ引いても多くの経験を積んできた熟達の人間味を感じさせ、且つそれがレイが到達したものにシンクロしてる趣がある。巨匠と言われる人の晩年期に現出するさばけた境地とでも…

悲しき天使

★★★★ 1994年8月13日(土) テアトル梅田2 大まじめにズレたことを演るというコンセプトは一貫しているが、これはネタを補完するバックグラウンドに厚みがあり本気度が窺える。カウリスマキのLCPV中最高の1篇ではないだろうか。全篇を遍く覆う「悲しき天…

エイジ・オブ・イノセンス 汚れなき情事

★★★ 1994年10月9日(日) 祇園会館 ミシェル・ファイファーが確かに、この女ならと思わせる哀しみを湛えた表現を見せ圧巻だが、これは50年代的正調メロドラマであり、その復刻を試みたにしてはスコセッシの80年代的体質が否応無く滲み出て統一感と安定を阻…

美しき諍い女

★★★ 1993年2月6日(土) 難波ジョイシネマ 一陣の風と共に登壇するベアールの映画的ケレンは事が始まると消失するのだが、只管続く素描接写と筆音がポージングをめぐる2人の軋轢と相関し何時しか快楽リズムが到来。そして、とどのつまりでドハッタリの煙に巻…

ふたりのベロニカ

★★★★★ 1993年3月7日(日) 大毎地下劇場 ドッペルゲンガーとの奇跡的な親和。西欧文化との融合に際し多くの先人とは違いキェシロフスキは祖国との頚木を解き放ちはしなかった。奥ゆかしき西欧観が超自然なギミックと調和しトリッキーな撮影が先鋭を付加する。…

ふたり

★★ 1993年3月7日(日) ロッポニカ三宮 ハイビジョンというオモチャを得て大林の悪癖が爆裂。少女世界から大人の女への越境というセンシティヴ且つヴィヴィッドな物語を台無しにした。儚げな中島朋子が絶品だが石田の演技は不可解。クセありすぎの両親のキャス…

レザボア・ドッグス

★★★★★ 1993年6月9日(水) 京都朝日シネマ2 以降に後続する同種映画を一斉に「陽気と狂気」の多重人格のプロトタイプに画一化してしまった恐るべきキャラの立たせ方こそ完璧にオリジナル。だが、それは一方でカイテルやロスに反映された反オタクで健全な狭義…

ハイヒール

★★ 1993年6月9日(水) 京都朝日シネマ1 「母」或いは「母性」と言うものに対する思いのたけのベクトルが理屈では解かってもアルモドヴァル流に捏ねくり回されて提示されたとき、どうも俺にはピンと来ない。アブリル他出演者全て覇気無く燻っている印象。(cin…

ポンヌフの恋人

★★★★★ 1993年8月27日(金) 第七藝術劇場 転と結は青臭いのであるが、圧倒的な負のベクトルの集積とも言える起と承。カラックスの裂帛の気迫がキャストやスタッフに伝播しトランス状態の主演2人は隔絶世界の住人。借金塗れの大オープンセットを縦横に使い切っ…

ジョニー・スエード

★★★ 1993年10月16日(土) みなみ会館 ロカビリーやスエード靴やリーゼントへ偏愛を持つ野郎を見て笑って無視するか理解しようと努力するかだが俺は無視もしたくはないが努力したいとも思わない。そういうバカが1人いましたとさのヘタウマ諧謔が神話の域にま…

ナイト・オン・ザ・プラネット

★★★ 1993年11月14日(日) ACTシネマテーク ダラダラとピリッとしないのが身上のジャームッシュが小粋な話を狙ったものの、結局どの挿話も案の定に締まらない。乗れない者にはとことん乗れない。キャスティングのみが彼我のリスペクトを拮抗させ小粋だ。「…

マイ・プライベート・アイダホ

★★★★★ 1993年12月19日(日) みなみ会館 過去から未来へと連綿と続く孤独ロードを描くにリバーの刹那が相乗され哀切極まりない。しかし、これはむしろサントの実験意欲が随所でサビを効かせ、2作目にして行き着いた感を醸す無比なる完成形。その後が出し殻に…

真実の瞬間

★★★ 1992年2月2日(日) 新世界国際劇場 歴史的事実を描いて脚色にも限界があるにしても、ポリシーがあるかのようでその実逃げてるだけの主人公がもどかしい。点景のように描かれる渦中にあって火の粉を被った者にこそスポットを当てて欲しかった。全般締まり…

オーメン4

★ 1992年2月2日(日) 新世界国際劇場 曲りなりにもポリティカルな展開を垣間見せた前作を継ぐ志は切って棄てても構やしないし、縮小廉価版と化したカス企画たることも承知してはいるが、悪魔の子たる少年&おっさんにあった冷徹美が継子たる少女に欠片も垣間…

ハートブルー

★★★ 1992年2月9日(日) 新世界国際劇場 潜入捜査をしてみりゃあ結構良い連中じゃんってのはありそな話だが、その連中がアウトドア派の健全享楽に明け暮れるというのが変で面白いと言えば面白い。ビグローの専らの関心もサーフィンやスカイダイブらしいのが正…

シコふんじゃった。

★★★★★ 1992年2月3日(月) 梅田コマシルバー 冷淡を過ぎ冷血とまで見える醒めた体裁を纏い、一方では低次元な熱血スポ根的ドラマトゥルギーを持ち込み、更に竹中の下ネタギャグの破壊力が混在する。観客は下卑た笑いと熱い共闘意識と苦い反発を往還しつつ見入…

イヤー・オブ・ザ・ガン

★★ 1992年2月9日(日) 新世界国際劇場 プロの中のプロや強固な意志力を持つ憑かれた男を描いてこそのフランケンハイマーが翻弄されるだけの男の物語で冴える筈もない。『ブラック・サンデー』から10数年後のテロリズムを描くにそっち側の決定的仇役を欠いた…

テルマ&ルイーズ

★★★★★ 1992年2月11日(火) パルシネマしんこうえん 前半の昂揚感が本当に感動ものであり、最高にいじらしい女をデイヴィスが完璧に表現し得ていた。人生は一瞬の出来事で180度向かう先が変わる。それは理屈ではなく感情の奔流が信頼できるパートナーと合致…

インディアン・ランナー

★★★★★ 1992年3月29日(日) トビタシネマ ベトナム戦争が遠くに聞こえる片田舎の置き去りにされた物語。兄弟の思いの平行線は交わるどころか何時しか限りなく遠ざかる。妻に先立たれたブロンソン親爺の空虚。寄り添う事は誰にもできない。ショーン・ペンはただ…

バートン・フィンク

★★★★★ 1992年3月26日(木) テアトル梅田1 陰鬱な東部での健全と陽光のカリフォルニアでの退廃。更にその陽光の裏でミニマムに濃縮された安ホテルでの時間は永遠にたゆたう無限地獄への誘いか。2重3重の逆説の螺旋構造の果てに到達した楽園は幻影に過ぎない…

プロスペローの本

★ 1992年3月20日(金) 三越劇場 大体「テンペスト」を知らないので話が呑み込めず、戸惑うようなギールグッドに背負って立つ魅力も感じず、期待のハイビジョンの他人の不条理夢を見るが如き裸男女の異様な乱舞のセンスには降参するしかなかった。(cinemascape)…

私がウォシャウスキー

★★ 1992年3月29日(日) トビタシネマ ハードボイルドは綺麗事ではダメなのであって、男なら完膚無きまでに叩きのめされ尚且つ勝ち取る勝利を女ならどうするか…ってのが呈示されてない。所詮、性としての「女」を使わないキャラなんて飯事世界の戯れ言だ。ター…

JFK

★★★★★ 1992年4月6日(月) 梅田東映パラス 撮影済フィルムを10分の1に圧縮したかの如き圧倒的な物量とコラージュ映画とでも言うべき編集の衝撃。既存ポリティカルフィクションの何とも似てない斬新さ。加えて新旧の偏愛役者で塗り固めた真中にスターコスナ…

無能の人

★★★ 1992年4月15日(水) シネマヴェリテ 石への偏愛やそれを売るという不条理がどうにも借り物臭い。何もできない・しないことへの突き詰めが不足してる。もっと影の薄い奴を主役に据えるべきだったのに竹中直人が主演も張ったので台無しだと思う。神戸浩だけ…

訴訟

★★★★ 1992年4月29日(水) トビタシネマ 外づらと内づら・父と娘・正と悪といった対立要因を直截に織り込んだクリアなシナリオを良い役者たちが演じて滋味深い。仕事と私情は別ものというプロとして当たり前の自意識の底には、しかし愛がある。何かを信じれた…

愛と死の間で

★★★ 1992年5月9日(土) 高槻セントラル ヒッチタッチならぬデ・パルマ風が関の山のブラナー演出は結局のところ出涸らし感横溢する物語を信じていないのだと思う。ロビンやハンナ・シグラなんかまで引っぱてきたキャストの厚みは演じる夫婦の柄じゃない感が帳…

デリカテッセン

★★ 1992年6月20日(土) 祇園会館 カニバリズムと純愛の対比ってのがモチーフとしてあからさまで稚拙。加えて食傷する核戦争後の近未来という舞台設定に、お手作りテイストのホノボノ感がこれ見よがしで鼻につく。(cinemascape) kenironkun.hatenablog.com