男の痰壺

映画の感想中心です

映画2013

クロユリ団地

★★★ 2013年5月18日(日) MOVIXあまがさき6 都市伝説への斬り込みに於いて『リング』から、情感と神経症的鋭利に於いて『仄暗い』から10年後退した凡作。序盤の設定が方便に過ぎず、トラウマはリアリティ無く、終盤には納得性が無い。中田には無い無…

グランド・マスター

★★★★★ 2013年6月2日(日) MOVIXあまがさき5 ど素人のトニーをカット割りとスローで修飾したのではなく、カーウァイの必然としてそうなった。魂は逸らしてない。武芸に秀でても普通人な葉門を翻弄する時代の流れ。流れに抗して潰える高潔な魂ツィイー…

リアル 完全なる首長竜の日

★★★ 2013年6月16日(日) MOVIXあまがさき4 ハッタリが転じて何かしら形而上的なムードを醸すならともかく、馬脚を現しジュブナイルな怪異譚に矮小化する様は、まるで『回路』の焼き直しのようだし、終盤にヤンチャし放題なのも同じ。首長竜の動きはオ…

エンド・オブ・ホワイトハウス

★★★ 2019年7月7日(日) MOVIXあまがさき8 自国中枢を白昼蹂躙される。覚悟を決めたテロルの呵責無いジェノサイド。ナウな時代感覚で掴みは良かったのだが、まんま『ダイ・ハード』展開が透けてくると一気に冷めた。1人のヒーローと能無し上層部。お…

さよなら渓谷

★★★★ 2019年7月11日(木) シネリーブル梅田2 『砂の器』よろしく付加された「道行き」が受難と贖罪に纏わる怨恨パワーの凝結を示現して宗教的荘厳にまで至るかの見せ場なのだが、それでも、そこを敢えて描かない原作の志が高く見えてしまう。とは言え、全…

ベルリンファイル

★★★ 2013年7月14日(月) MOVIXあまがさき4 序盤から世界中の対立軸をテンコ盛りに登場させてはみたが、とっ散らかしただけで俯瞰的視座が無く設定は雲散霧消。結局、中盤以後は得意分野の男と女と骨肉相食む兄弟の確執に終始。それでも、刹那を体現す…

パシフィック・リム

★★★ 2013年8月11日(日) MOVIXあまがさき3 ヘリで吊り下げ移送する絵やギッコンバッタン足踏み操縦の真剣さに局所では愛を感じるのだが、ジャンルへの横断的なリスペクトを謳いつつも所詮は『エヴァ』1本かぶりの底浅を露呈するにつれ俺の期待は急速…

ワールド・ウォーZ

★★★★ 2013年8月18日(日) MOVIXあまがさき9 おっ広げただけではなく、有事の際の情報伝播の覚束なさと、収束への可能性を絶望的不確実性のなか探る旅路を描いた点に於いて新しい。韓国→イスラエル→スイスという地理展開にある種キナ臭さを感じぬでも…

RETURN ハードバージョン

★★★★ 2013年8月24日(土) テアトル梅田1 半端な原発への言及や極右的コングロマリットの胡散臭さなど相変わらずの原田の信用できなさではあるが、一方アンナ筆頭の極悪3姉妹の千葉=大友イズム継承や椎名のカポエラの粗の見えなさ。歪な魅力には事欠かない…

風立ちぬ

★★★★★ 2013年8月25日(日) MOVIXあまがさき11 恋も仕事も限定期間の最も美味しい部分のみを抽出し、人の一切の邪心・悪意は隠蔽される。水彩画のように儚い今際の際の美しいだけの思い出は、それでも黄泉の国と隣接し境界は融解してる。出会いと再会…

マン・オブ・スティール

★★★★ 2013年9月5日(木) MOVIXあまがさき5 実存としてのスーパーマンを曲りなりにも描く試みが高踏的で退屈であったとしても買ってみたい気がしたが、恋人や母の危機を救うのに怒りに任せてボコ殴る変調を契機にここまでやるかの一大都市破壊ショーの…

ムービー43

★★★★ 2013年8月24日(土) テアトル梅田1 睾丸や下痢便をモチーフにする高度に幼児的単線ギャグが冴え序盤で鷲づかみにされかけたが、中盤以降は変態度がスーパーとまではいかずシュールの域に留まる。若干ダレかけたところでド腐れ猫が登場し立て直した。…

アフター・アース

★★★ 2013年9月14日(土) 新世界国際劇場 「帰れ」という父の言葉を無視する崖の場が転機となり物語が転がるはずが、ありきたりな展開を消化するだけに終わってる。伝承譚としても世代交代の説話としても父スミスの役不足が決定的。しかし、ジェイデン可愛い…

ウルヴァリン SAMURAI

★★★ 2013年9月15日(日) MOVIXあまがさき7 葬儀場から新幹線を経て長崎に至るシークェンス。四つ巴のチェイスが縦横の錯綜を絡めつつ移動する佳境なのだが、マンゴールド演出が、どうにも理詰めのキレを欠きいただけない。で、他は正直どうでもいい。…

そして父になる

★★★★★ 2013年9月29日(日) MOVIXあまがさき6 1人の父親の子どもとの或いは社会との親和性の喪失と再構築の物語で、極限化された快楽システムに疑問を呈し、時には自壊する必要性を問うている。それだから終盤の父子の移動シーンは複層的に涙なしには…

地獄でなぜ悪い

★★★★ 2013年9月28日(土) 梅田ブルク7シアター6 自己愛に塗れた耐え難いテーマで、設定も後付け丸出しだ。園子温が10年前に撮ってたら臭くて見れなかったろうが、20年前の『自転車吐息』の初々しさを強引に俎上に乗せ『熱帯魚』な東映イズムで料理し…

死霊館

★★★ 2013年10月21日(月) 大阪ステーションシティシネマ6 のっけから霊媒夫婦を登場させ、被害者一家と並置して物語を展開することにより、冷めた客観性を獲得している。70年代を再現する意匠の数々も慎み深く、又一家の子供が5人姉妹というのがミソで…

四十九日のレシピ

★★★★★ 2013年11月17日(日) MOVIXあまがさき8 子どもが居る居ないというテーゼより、慎ましやかに何も望まず生きてきた多くの人々への賛歌として見た。そして、絶望の淵からでも立ち直れるのだと言う確信。苦境にある者に寄り添うタナダユキのスタン…

清須会議

★★★★★ 2013年11月24日(日) MOVIXあまがさき7 役所のダイワハウス系ボケ演技が堂に入って来て、大泉のツッコミと相性良く、そこに小日向の腹芸が加味され完璧なトライアングルを形成する。衣装・美術・撮影も重厚とキッチュの狭間の座りが良いピンポ…

悪の法則

★★★ 2013年11月23日(土) 大阪ステーションシティシネマ12 「起」を抜いた進行形の渦中にいきなり叩き込まれるのは良しとしても、板子一枚下の地獄をブラピの台詞で全語りするのは小説的に過ぎないか。糞尿の中で彷徨い続ける死体等如何にもな文学臭が美…

かぐや姫の物語

★★★ 2013年12月14日(土) 大阪ステーションシティシネマ10 ずっと『ハイジ』がチラつく。都はフランクフルトで相模はロッテンマイヤーだ。不毛な月世界対比の現世のエコ賛歌は『狸合戦』。成程高畑の集大成かもだが、ならば少女のリリシズムをこそ全面開…

小さいおうち

★★ 2014年2月15日(土) 大阪ステーションシティシネマ12 何十年も秘めた想いを紐解く作りになっていない。戦時下の火遊びが露見せずに済みましたっていう程度の話ではないだろう。3角関係の2辺しか描けない山田には尺に合わない企画。『東京家族』から…

スノーピアサー

★★★★ 2014年2月12日(水) TOHOシネマズ梅田4 ステージクリア的ゲームな段取りも重み無きCG列車もどうかと思うのだが、ポン・ジュノのアクション演出に於ける遠近や高低といった距離感把握に相変わらず痺れる。湾曲路線での銃撃戦が白眉。ラストのエ…

ウルフ・オブ・ウォールストリート

★★★★★ 2014年2月15日(土) 梅田ブルク7シアター7 金儲けの手段は皆知ってるがやらないのであって、やる奴らを描いて剛速球をド真ん中に投げ込んだ。リテールから引き受けに至る錬金メカニズムを十全の胡散臭さで描き切りドラッグとSEXで虚実の境界を混…

マラヴィータ

★★★★ 2014年4月12日(土) 新世界国際劇場 閉じた世界ではならのヤクザ論理を世間のしがらみに適用する危うさを微塵も躊躇しないベッソンに剣呑なアホさを感じぬでもないが、スコセッシ&デ・ニーロワールドへの子供のようなリスペクトぶり。ならば、出がら…

ある過去の行方

★★★★★ 2014年4月26日(土) シネリーブル梅田3 観る者をすかし続ける作劇の又か感は正直ある。が、こういう世知辛い人間関係の軋轢を描いてこうまで達観したアイロニーに至るのは洞察力の賜物で、正直やっぱひれ伏すしかない。適宜なカメラの長焦点使い。ジ…

ブルージャスミン

★★★★★ 2014年5月12日(月) 大阪ステーションシティシネマ6 軽妙洒脱な語り口の彼方から隙間を縫って顔を見せる地獄と言うより妄執と我慾と欺瞞まみれの世界はこう語られるべきという信念さえ感じるアレンここ10年の集大成であり結実。アメリカが直面する…

野のなななのか

★★★ 2014年5月17日(土) 梅田ブルク7シアター4 冥界と現身の或いは過去と現在の更にはフィクションとノンフィクションの境界をクロスオーバーする崑流リアクション編集過多の大林版『田園に死す』乃至は『エロス+虐殺』だが、如何せんデジタルが易さとし…

インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌

★★★★★ 2014年6月12日(木) 大阪ステーションシティシネマ5 私小説的映画として前半に絡ませた猫使いの鮮やかさ。だが後半は内省的になり、プロットは悉く絶望を弥増させるに周到だ。グッドマン遺棄後の元カノの街の夜景。エイブラハム面談後の男の鉄拳。本…

私の男

★★★★ 2014年6月23日(月) 大阪ステーションシティシネマ8 「私の男」ならぬ「俺の女」的男視線に変換されたと思しき構成はヘタ打てば「飼育」ものと同質化する構造を孕む為どうにも腑に落ちない。が、2度の事件を筆頭に描写が突き放した怜悧を維持し米犯…