男の痰壺

映画の感想中心です

ウエスタン

★★★★ 2019年9月29日(日) テアトル梅田2
f:id:kenironkun:20191001103958j:plain
*「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ザ・ウエスト」なるタイトルで再公開されているのだが、あえてここではオリジナルタイトルでの表記とします。
(同様にたとえば「キートンの探偵学入門」は「忍術キートン」、「チャップリンのゴルフ狂時代」は「のらくら」としております)
 
傑作と名高い映画であって、それが公開時ガン無視されたのが年月を経て評価が上がったってのが尚信憑性を高めてるのであるが、そうやろか、やっぱ冗長であるように思う。
少年時代にTV放映で見たおぼえもあるが寝てしまったか、余りの展開の進まなさに途中でリタイアした記憶があるが、今回はさすがにちゃんと見ました。
 
「続・夕陽のガンマン」と同じく、冒頭の10数分が、これでもかのタメを効かせた決闘で開巻するのだが、まぎれもなくそこは映画遺産級だ。
俺はジャック・イーラムの顔にまとわりつくハエを執拗に撮りつづけるのを見て彼が遂にパクッとハエを食べる展開を想像して怖気がおこったが、それはさすがになかった。
 
見てる間、話の先行きが見えなくって、ダラダラした展開に身を委ねざるをえないのだが、見終わってみると極めて練られた脚本だと思う。
そういう映画だと思う。
1人の男の復讐譚と西武開拓時代の殺戮史とロマンティシズムが融合し骨太で壮大。
2度3度噛みなおせば尚おいしいんだろう。ダルな部分も多いが、等量で目をみはる部分も多い。
 
前半で一家惨殺のシーンがあるが、「キル・ビル」のネタ元はこれだったのかと思った。この殺戮が何故にの疑問は終盤までわからないのだが、彼らを訪ねて東部からやってきたカルディナーレが継承する意志・思いのようなものが悠久の歴史の中に埋没してゆく。
素晴らしく感動的なラストで、ここで加点した。
 
間により趣向を限界まで極める冒頭だが、男の復讐譚と開拓史の殺戮・浪漫がバラけて行方知らずに物語は揺蕩う。それでも再び、果たした男と継承した女が交錯し歴史の彼方に消えてゆくラストの大見得。フォンダの唾やイーラムの蝿の不作為な神話性。(cinemascape)