★★★★★ 2019年11月23日(土) プラネットスタジオプラス1
ここ何年かアンソニー・マンの映画を折にふれ見てきてるけど、これは傑作だと思う。
まあ、大傑作だってのとはちょっと違うと思うが、大好き作ではあります。
冒頭、よれよれになって田舎道を歩いて一攫千金を目指す山師コンビがルイジアナの漁村にやってくる。
とまあ、オープニングからして嬉しいくらいに典型的だが、彼らが探してるのは金鉱ではなく海底油田であるってのが新機軸。
仕事に厳しくって女に色目は使わない立ち役とお調子もんで女に手が早い相方。
これを一見優男風のジェームズ・スチュワートとゲス野郎役しかイメージにないダン・デュリエが演じるのが良い。当初のイメージが話が進むにつれて反転していくので、ありゃりゃの感興がある。
俺の脳内で、どっかでこんな設定見たよなの思いが行き着いたのは、侠客伝や残侠伝の男も惚れる健さんとお調子もんの長門裕之なのであった。
そう思い出すと、平明で的確なマンの演出は、マキノのそれを思い浮かべる。決して手法が似てるわけではないんだが。
とにかく、全篇、人物たちの感情の起伏が行きつ戻りつを繰り返しながらも明晰で押し出しがいいのでスカッとします。
文無しのスチュワートが石油メジャーの社長を口説いて資本参加させるわけだが、えっ?その説明で納得したのレベルであるが、叩き上げの経営者を演じるJ・C・フリッペンの好演もあって、嘘やろの疑義はひっこむのである。
スチュワートとヒロイン、ジョーン・ドルーの関係も然りで、えっ?そんなんで勘違いするかってのを繰り返すのだが、2人の熱演でまあ仕方ないかと思わせる。
そして、定石だが気持ちのいいラストにつながる。
完全に映画史から埋没した作品だが隠れた良作だと思う。
流れ者が来たりてコミューンを活性化するの類型でコンビも剛と柔の定型だがジミーとデュリエのイメージを逆手にとったのが効き楽しい。人物達の感情が激しく往還する様が強固な確信に支えられ疑義を吹っ飛ばす。一切迷いがない理想郷が現出している。(cinemascape)