男の痰壺

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怪盗ルパン

★★★ 2019年12月21日(土) シネリーブル梅田4

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ルパンっていったら今では三世しか思い浮かばなくなってしまったが、俺の子供のころは、まだ一世がルパンであって、そのイメージは主にポプラ社が刊行していた少年向けの「怪盗ルパン」シリーズで培われたものであったんです。「八点鐘」とか「813」とか大向こうを唸らせるトリックが満載であった。

 

このジャック・ベッケルの作品は、そんなイメージにそったもんであったかというと、どうもちゃうような気がします。ロベール・ラムールって人がルパンを演ってるんですが洒脱さに決定的に欠ける。すげー奴って感じもしません。どうもこの映画で抜擢されたんですがすぐに消えてしまったみたい。そりゃそやろって感じです。

 

冒頭、議員邸で開かれているパーティ席上から名画を盗むんですが、手下に屋外のガス菅をガンガン叩かせて停電させる。(まだ電気がなくガス灯の時代のようだ)でも、そんなにガンガンしたら音が聞こえるんやなかろか。で、暗闇の中でひょいひょいと壁にかかった名画を無造作に盗ってくんですが、無造作にすぎるやろ!って思う。

 

後半、ドイツの皇帝の城で話が展開するんですが、ここで財宝の隠し場所の仕掛けが、まあ言うなれば映画のメインの見せ所であるらしい。フジコ的な女性もからんで多少は楽しいが、にしても大向こうを唸らせるには程遠い。

 

ベッケルは初期のころにヌーベルバーグの一派からリスペクトされたようだが、本作をトリュフォーは酷評したらしい。仕方ないわな。

 

正体に感付く乃至は知っている女性たちに対し男たちは鈍感で、さすれば共有する秘事に対するトキメキが発生してもいいのに洒脱に欠けるラムールには荷が重い。後半で城内展開に終始するがエドワーズ的悪乗りもし損ねてキッチュな装置がスベっている。(cinemascape)

 

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