男の痰壺

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カツベン!

★★★★ 2020年1月7日(火) 梅田ブルク7シアター4

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あんまり評判は芳しくないみたいで、確かに何か新機軸を打ち出したかというと無いというしかない。コメディという分野で「ファンシイダンス」や「シコふんじゃった」みたいなソリッドな切れ味を叩きつけてくれたことを思うと衰えってやつを感じるわけだが、前作「舞妓はレディ」だって生温い出来だったわけで、今更、周防正行にそれ言ってもしかたない気もする。

 

ただ、お題目監督としての「無声映画」という題目への心の寄せぐあいが今回は十二分ではなかった気がして、心ならずも落ちぶれた弁士の永瀬正敏に言わせた「映画ってのは既に出来上がってるんだよ」のことばが周防の本心を表出してしまってるわけで、シニカルサイドな毒気が見え隠れしてしまう。

でも、俺としてはそこにこそ周防の誠実さを感じてしまうのだ。

 

幼いころに知り合った男と女が何十年ぶりに出会う。

このシーンの作り方がいい。

「えっもしかして俊太郎くん?」

「やっぱ梅子ちゃん?」

「そうじゃないかと思ってた!キャー」

「俺もさ!会いたかったぜ!ワオー」

といったのではなく、めっちゃ低温だ。周防だなーと思う。

 

マニュアルライクな作劇がベースにあって、そういう線上で成田凌は屈託を封殺して与えられた役割を全うしてると思う。弁士としての口上はかなりのもんになっていると思いました。

 

図らずも長瀬に言わせる弁士無しで映画は既に出来上がってるが周防の本音なら、なんで撮ったのとなるが、嘘がつき通せぬ誠実の顕れとしとこうと思う。消えゆく徒花が繰り広げる廉価な狂躁は未来のない諦念に影さされる。シニカルでらしい映画と思う。(cinemascape)