★★★★ 2020年1月25日(土) 梅田ブルク7シアター2
現在の日本映画の監督で、新作が公開されえば、多少むりしてでも必ず見に行くってのが何人かいるような気がする。
タナダユキもその1人で、作品を全部見てるわけではないが、★4か★5しかつけたことがない。すごい打率であって、こういうタイプの監督って、他にぱっと思い浮かぶのは富永昌敬くらいであろうか。まあ肌に合うんでしょう。
「ロマンスドール」ってのは少女漫画めいて又こっ恥ずかしいタイトルつけたなあと思っていたが、なんのことはない。ダッチワイフのことであった。(今は、ラブドールと言うらしい)
その製造工場のエピソードが半分くらいと、あとは夫婦2人の話なのだった。
蒼井優が言う「なんでも言い合える夫婦になりたい」
がすべてであって、そうは言っても全てを打ち明けるなんてことはそうそう出来ない。
ていうか、隠し事の1つや2つどころか、10も20もあるのが世の夫婦の常だろう。
であるから、思いがすれ違い、摩擦を生み、場合によっては大きな傷につながる。
これは、そういう大きな傷を負う前に寸でのところで食い止めた夫婦のお話。
奇を衒う秘密なんてない。どこにでも転がっているし、誰の身にも起こり得る隠しごとであって、そういう話をタナダ演出は真正面からノーブルに描いている。
ただ、男だと痛くて描けないところを、女性だから描けた世界だとも思うのだ。
ラブドール工場をめぐる話を脇で締める3人の役者がいい。
ピエール瀧がすごくいいのだが、この人パクられる前にどんだけ映画出とってんってなくらいに新作映画でよく見ます。
あと、一生の1夜の浮気相手で「素敵なダイナマイトスキャンダル」で、すごい存在感だった三浦透子が出ている。
夫婦の間で隠し事しないってのは簡単じゃないし何かの掛け違いが決定的になる。これは破綻の縁で辛うじてそれを回避できた2人の話で、その相互理解の幸福感が思い出の円環を充足させる。ラブドール工場をめぐる人間模様も悲喜交々の余韻を呈して過不足ない。(cinemascape)