★★★ 2020年2月2日(日) プラネットスタジオプラス1
マーロン・ブランドとユル・ブリンナー共演の戦争映画って割には、「モリツリ?なにそれ」って感じで知らんかった。
見て成る程と思った。地味です。そして、たぶん低予算映画だ。
「南太平洋爆破作戦」なる副題がつけられているが、邦題サギである。爆破して敵をやっつけるみたいな勇ましいイメージだが、本当は爆破させんようにセコセコ隠密で工作する男の話である。
それが、マーロン・ブランドなのだが、この男ドイツ人だがナチスを嫌ってインドに逃れてきた。金持ちみたいで優雅に絵画趣味に耽溺しているところを連合国に目をつけられ脅され働かされる。ナチスの高官としてドイツの生ゴム輸送船に乗り込み、連合国が拿捕した際に自爆せぬよう工作せよというのだった。
そして正体がバレそうになったり、反ナチの勢力とつるんだり、漂流してた連合国の兵士を捕虜にしたりと色々あって終盤、反ナチ兵と捕虜を束ねて、憎っくきナチ野郎をやっつけるのかと思いきや、あっさり鎮圧される。
で、こうなりゃ爆破して船沈めてまえ!ってミッションとは正反のことやらかそうとする。どうもしっくりこない映画なのだ。
そういう全体の骨子は今いちななか、それでも個別のプロットは、かなりグッとくる。
①ジャネット・マッゴーリン
拾われた捕虜の中に女が1人混ざっていて、これが、ドイツを逃れたユダヤ人であった。ブランドは彼女を利用して捕虜の取り込みを謀る。述懐される彼女と家族の凄惨とナチへの憎悪が大義のために身を捨てさせる。たぶん、この映画でもっともエモーショナルな部分は彼女絡みに集約されている。
愛国者で海軍将校である息子を溺愛しているドイツ人船長だが、ナチス嫌いでユダヤ人にも同情的。そんな彼が党員である副長に反ナチのアジをぶちかます。ナチズム一色に染まる前のドイツの良識派の心意気!ではあるのだが、結局は息子の蛮行を知って酒に狂う。
ってなわけで、美味しいところがマーロン・ブランドには回ってこない。
しっくりこない要因だろう。
カメラがコンラッド・ホールでスコアがジェリー・ゴールドスミスと後に大作・名作で名を馳せる面子だ。
ヘリでの空撮が何度か唐突に出てくる。ズームで甲板上のブランドに一気に寄る。あるいは疾走するブランドを望遠で捉える。
歪にかっこい。
ブランドが職能者として任務を遂行するのだが場当たり的で牽引力が弱い。替りにマーゴリンの切実な思いと覚悟、ブリンナーの高潔と脆さがエモーショナルに一応は活劇性を下支える。終盤も済し崩しとしか言えないが2度の空撮が唐突ながら魅せる。(cinemascape)