★★★★★ 2020年1月31日(金) TOHOシネマズ梅田9
監督ライアン・ジョンソンがアガサ・クリスティに捧げた作とのことであるが、「オリエント急行殺人事件」と「ナイル殺人事件」を映画で見た程度の俺には有難味がわかんない。
ではあるが、これはミステリーとして、そんなに鬼面人を威すのトリックがあるとかの話ではなかった。むしろ中盤でネタは割れる。
もちろん、中盤以降に話を引っ張っていくのだから、何かが牽引してる。
それは、表面上は真犯人(?)とは言えないが、後ろで悪さしてる奴がいたみたいなネタであるのだが、しかし、俺が惹かれたのは、巧妙に移民問題と格差のテーマを差し込んで、ヒロインのアナ・デ・アルマスに観客が肩入れしてゆく作劇にある。
中盤で事件の顛末が明かされるアナとクリストファー・プラマーの2人芝居であるが、この映画の佳境といっていいだろう。
男である俺は、心から大事に思う人の為に、ああいうことができるだろうか。
深く自問した次第であります。
俺は、不評を託つスター・ウォーズの前作「最後のジェダイ」を傑作と思ってる人間である。全9作の中で★5をつけたのは「帝国の逆襲」とこれだけです。
であるから。ライアン・ジョンソンの手腕に疑いはなかったが、画力に溢れた素晴らしい出来だった。ラストショットの皮肉まみれの詠嘆的な味は当分忘れられないだろう。
富豪の相続に纏わる西洋版『犬神』は金田一ならぬクレイグのキャラ立ちもイケてグイグイ来るのだが、それでも特筆は不意打ちの如き男の死に様美学。移民や格差という現在形問題を差し込んだ古典仕様。カオスのような諸要素が一点集約されるラストカット。(cinemascape)