男の痰壺

映画の感想中心です

ミッドサマー

★★★★ 2020年2月29日(土) TOHOシネマズ梅田3

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前作「ヘレディタリー」を見逃しているのでアリ・アスター初見。なんでも、ポン・ジュノが選んだ注目監督20人に入ってるそうな。

 

【以下ネタバレです】

 

終わってみると、なんやねんこれしょーもなーって思った。なぜなら設定が少し前の映画「ゲットアウト」とまんま一緒だったからです。

ヤバいコミュニティが若い者使って外部から何も知らない若者を連れてくる。そして、彼らは哀れ生贄にされるってわけでして、おんなじやんけと一気に評価がワンランク下がる気がしたが、いや待てよ、それでも特に前半なんかは語り口にけっこう幻惑されてテンションあがってたやろと思いとどまり★4とした次第です。

 

見たこともないような斬新な手法を弄しているわけではない。むしろ、よく使われる映画テクが基本であって、それなのに異物感が残るような禍々しさの表出に成功している。

たとえば、一行が車でその村に向かうのを俯瞰で捉えていたカメラが下降し反転して、車が逆さまになる。まあ、ありがち手法だが、その逆さま構図が延々続くとなんだかそれが正常のような錯覚が到来する。異世界への誘いであります。

食卓の食材がCGでウニョウニョ動いている。動き出すのではなく当たり前のように既に動いている。ウニョウニョ動くのは珍しくもないが、しれーっとそれが当たり前のようにそこに在る。食えない野郎と思う。

 

ヨルゴス・ランティモス「聖なる鹿殺し」やルカ・ヴァダニーノ「サスペリア」に近い氷のように冷え切った視線が横溢している。

 

主役の女の子が安産型なのが好み。花にくるまれて花ダルマみたいなのが笑えます。

それにしても、後になって知ったが、今更のビヨルン・アンドレセンとはね。

 

新奇な手法を用いなくとも編集と音響のズレで異界を立ち現すことができる。転倒世界を走り続ける車や卓上で胎動し続ける食材は境界で揺らめく夢魔だ。木乃伊獲りがミイラの拐取パターンは新味に乏しいがギャグと剣呑の狭間で醸成される違和感に糊塗される。(cinemascape)

 

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