男の痰壺

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初恋

★★★★ 2020年2月29日(土) 梅田ブルク7シアター7

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 低迷とまでは言わないが、もう新たな抽斗は枯渇した感のあった三池であるが、この映画もやっぱ従来の手の内の範囲でやってる感じはする。

のだが、まあ、それでも終盤に折れてしまうようなダメさは回避しているという点で佳作といっていい。

と思います。

しかし、弾け損ないあらぬ方向へ行くような破綻はないのだが、主役の2人とヤクザと中国マフィアと警察の4つ巴の抗争の終着点の舞台がホームセンターかよ。

ってのは、弾けなさすぎでショボーではあって、そのへんが若干がっかりしました。

 

俺は三池映画の美点は、どうしようもなく切羽詰った土壇場で焦燥と懊悩と錯乱が転じて笑いに至る点だと思っていて、この映画は随所でそれが成功している。

ホームセンターでの攻防で追われる主人公が、ふと携帯を見て「電源切れてるじゃん」と入れると、4件の着信があって、とりあえず1件目の留守録を聞く。そんなんしてる場合じゃないやろって話なのだが、「えーっ!」って内容で、さらに2件目、おいおいマジで全部聞くのか?だが結局4件とも再生する。

流れを停滞させかねない際どいプロットだが、相手方の滝藤の声の加速的にヒートアップする演技が絶妙で笑っちゃいます。って言うか爆笑してしまった。

まあ、映画館で大声出して笑ってるのは俺だけでしたが…。

 

若い2人に対して、染谷&大森のヤクザ・刑事コンビの挿話がいい感じで配置されていて、映画をダレ場なく牽引しているのも成功した要因だった。たぶん三池組初参戦かと思うが、巧い2人であるから頃合いのダメさを醸して鉄壁であります。

 

ラストの騒動のあとの後日譚的詠嘆もいい締めだったと思う。

ちょっと初期の佳作「実録安藤昇侠道伝 烈火」のラストの余韻を思い出しました。

 

絡み合う各人の思惑と想いが過不足ないとも言え形骸的スタンダード仕様とも言えるのだが、土壇場での焦燥と錯乱が臨界越えると笑いに転じる様が程よく配置され、そこに三池の練達の境地を感じさせる。留守電のプロットは爆笑もの。ラストの余韻も鮮やか。(cinemascape)

 

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