★★★★ 2020年3月22日(日) シネリーブル梅田2
暴走する悪ガキどもを描いて「シティ・オブ・ゴッド」が惹句で準えられるが、実弾やナイフが使われ人も死ぬあれに比べて、投石や花火攻撃なのが、まあぬるい気もするが、いや待てこれがリアリズムちゃうんかと思ったりもする。
むしろ俺はデンゼル・ワシントンの「トレーニングデイ」を見ながら思い浮かべた。ワルに対峙するに、警官もまみれにゃあであって、治安の悪いエリアをパトロールする彼らもお真面目ではなめられるぜってなもんです。
でも、主人公の新任警官は、そんな先輩諸氏に倣わない。これが、言うのは易いが中々出来ることじゃないんです。
真摯に相手の言い分を聞く。誠意をもって間違ったことなら正そうとする。
そういったことが悪の吹き溜まりのような場所でも通用するんじゃないかと映画は言ってるような気がする。
それでも、一旦破綻に向けて動き出したストリームは、ちょっとやそっとでは変わらない。
少年は思い止まるか、トリガーを引いてしまうのか。わかりませんが、相対で通用した誠意も大きな流れには木っ端微塵に飲み込まれる。
これもまた紛れもないな真実なんです。
モラルが破綻したかの如き状況下に於いても真摯で誠実な言説は人の心を動かし得るという希望と、それでもマスに蔓延する怒りが一旦着火してしまうと反動の奔流に個の力は最早なす術はないのだという諦観。優れて政治的ロジックが仏のひとつの現況を抉り出す。(cinemascape)