男の痰壺

映画の感想中心です

おもひでのしずく (2003年8月23日)

※おもひでのしずく:以前書いたYahoo日記の再掲載です。

 

強制送還(フィリピーナ完結篇)

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(承前)
結局、先輩は俺たちの為に店と交渉して早々に帰り、1時半まで店に残った俺たちは、指名した女の子たちに引き合わされ、店のワゴンに乗せられて、焼肉屋に連れて行かれて、彼女たちが腹へってるから飯食わせてやってくれと言われ、どんぶり飯に焼きあがった肉を乗っけて美味そうに食べる2人の女の子を急かせて、店を出てホテルに行き、やることはやったが、すぐに朝で出勤時間となって、バイバイしたが、物足りず後日、2回ほど1人で店に行き同じ行程を、焼肉抜きでたどったのだ。
その女の子がマリルちゃんであった。
あんまり日本語が上手くなくて彼女の話の10分の1も判らなかったが、今でも覚えてるのは、彼女を含めた店のフィリピン人女性たちがとんでもなく劣悪な住環境下にあったという話だ。タコ部屋みたいな1室に78人押し込められてるということだった。
朝、ホテルを出て「帰りたくないよ」と言うのは俺と別れるのがイヤというわけでは全くなく一重に部屋に戻りたくないからなのだった。

小説「虹の谷の五月」のメグが日本に旅立つことに殊更感傷的になる必要はないだろう。しかし、日本に働きに来ている外国人に対して俺も含めてほとんどの人は受身であり、そのスタンスが、犯罪等のネガティヴな報道で助長されるのはどうだろうか。中には生まれ育った光り輝く故郷を思って眠れぬ夜をすごす人たちがいるかも知れない。そして、それは、他人事ですまない日が来るかも知れないからだ。

(後日譚)
マリルちゃんは観光ビザで働いていたらしく、とっくにそれが切れてたとのことで、警察に捕まってしまった。そして、連日のように会社に先輩の彼女のママさんから電話が入り始める。渡航費を出せというのだ。強制送還されれば1年日本に戻れないが自腹で帰国すれば直ぐに戻れるからとのことだった。
俺は結局払わなかった。
何故なら、中国人留学生の愛ちゃんにお金が必要になっていたからだった。
(おしまい)