男の痰壺

映画の感想中心です

おもひでのしずく (2003年9月6日)

※おもひでのしずく:以前書いたYahoo日記の再掲載です。

アンダー・サスピション

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1999年暮れ。とある居酒屋。
1人の男が暖簾を分けて入って来た。そして店内を見渡す。
「よおーっ!ここだよ」
カウンター席で1人の男ががなりたてた。男は鷹揚に近づくと横の席に腰掛けた。
「遅いじゃんかよ、モーガン
「場所がわかんなくてよ」
「おかげでカルピスサワー3杯飲んじまったじゃんかよ」
店員に向かって男は言った。
「俺にはジントニック…あっ梅入れてね」
「どういう趣味なんだよ」
「お前に言われたかねえよ、ジーン」
「しかし、7年ぶりかよ」
「そうよ、クリントの映画以来だぜ」
「あんときゃお互い苦労したよな」
「あいつの演技ときた日にゃあ、うんざりのワンパターンだろ…俺とあんたで盛り立ててやったからオスカー取れたんだぜ」
「まったくよ…監督賞だってんだからよお、笑わせてくれるよな」
「でも、あんた、その後で又ぞろ野郎の映画に出てたぜ…『目撃』だっけ」
「そうよ、やっこさん、俺のこともちいとは見直したみたいでよ、しつこい位に頼み込んできやがるんでよ…まあ、くだねえ役だったけどよ」
「くだらなくても一応…大統領なんだからいいじゃねえかよ」
「あんたもやったじゃんかよ『ディープ・インパクト』でよ」
「そういやそうだったよな」
「考えてみりゃあ、俺達大統領同士じゃんかよ…オスカー俳優だしよ…すげえじゃんかよ」
「まあ、お互い世知辛いハリウッドでさあ、この歳でよく頑張ってるよな」
「どうよ…このへんでよ、実力者同士がっぷり四つでよ、1本やってみたくはねえかよ」
「いいよな…でもよ、助演ならまだしもよ、俺達みたいな爺い同士の出る映画なんて企画あるか?」
「ふっふっふ…これなんかどうよ」
男はシナリオのゲラをふところから取り出した。
『アンダー・サスピション』と」書かれていた。

ジーン・ハックマンモーガン・フリーマン主演による映画はこうして出来たのである。