男の痰壺

映画の感想中心です

おもひでのしずく (2004年11月23日 (火))

 ※おもひでのしずく:以前書いたYahoo日記の再掲載です。

 

理想郷伝説

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夢には2通りある。
目覚たくない。不覚にも目覚めてしまっても、適うなら眠り直して続きが見たい…というやつ。
もう1つは、夢なら覚めて欲しい…というやつだ。
で、俺は30歳を前後する頃から、後者のものしか見たことがない。

今日の昼、酒を飲んでウトウトしてたら、夢を見た。
部屋の中で俺はコックリさんを1人でやってる。
ひらがな文字の書かれた紙を前に置き、割り箸みたいな棒を、その上に横にして置く。
「コックリさん、コックリさん、我が元に来たれ!」か
「コックリさん、コックリさん、おいでませ」か
「コックリさん、コックリさん、はよ来てちょんまげ」か
どういう呪文だか忘れたが、念じていると棒はいきなり垂直に立ち上がった。
しかも僅かに浮いて揺れている。
その様が夢の中とは言え、すごいリアリティだった。
「コックリさん、来られましたか?」
棒は「はい」と書かれた場所にスッと移動した。
ドキドキした。
実は半信半疑だったのだ。
しかし、霊は存在した!
な、何を質問しようか…。
冗談半分だったので何も考えていなかった。
何か質問しないと機嫌損ねるんちゃうやろか…
やばい…どうしよう…
と、その時だった。
「何しょうもないことしとるん!」
いきなり女房が来て紙を取り上げ破いたのだ!
「お前…な…に…さらすんじゃあ…」
俺は破れた紙を継ぎ合わせ慌てて念じた。
「コックリさん、失礼な振る舞い申し訳御座いません。ここは一旦お帰り下さい」
しかし、棒が動いた先は「いいえ」の文字の上だった。
「ご機嫌を損ねたことお詫び申し上げます。どうか、お許し下さい」
しかし、棒は「いいえ」の上で揺れ続ける。
憑りつかれた…。
やばい…どうするねん…
そこで、夢が覚めた。

今、ふと黒澤明の『夢』という映画を思い出す。
あれは、少年期の夢幻の如くに甘美な夢から始まり、壮年期の悪夢を経て、老年期には理想郷に至るという映画だった。
俺は、ここ10年ばかり、悪夢しか見てない。
理想郷に至る過程であって欲しい。