★★★ 2020年6月20日(土) シネリーブル梅田1
男が実業家の男を殺した。
いったい彼は何者で、なぜ殺したのか。
ってことが主線の話で、その解明の過程から、数十年に及ぶ歴史の暗部が立ち昇つてくる。
「砂の器」を思わせる構成です。
【以下ネタバレです】
まあ、結局は毎度と言っていいナチの戦争犯罪が起源なんですが、ドイツ国内やポーランドとかでのユダヤ人虐殺ではなく、同盟国のはずのイタリアでのものだ。歴史に詳しくないのだが、ナチスは反ファシズムのパルチザン駆逐をイタリアでも一手に担ってたんでしょうか。勉強になります。
この映画は、人物の肉付けが半端ない。
だが、半端なさすぎて、そのトリッキーな設定にひきずられてあれよあれよと時間は経過していく。
主人公と被害者一族にまつわるものと、犯人の幼少期の2つの過去時制がカットバックされる。それぞれにエモーションを掻き立てるものだ。
周辺人物たちも魅力的といっていい。原告側の老練な先輩弁護士、主人公の父親、パンキッシュな女子大生など。
如才ない演出と上記のあれやこれやを加味して満足できる出来だと思います。
だが、どこか余白のないマニュアル臭がする。
AIが作った映画みたいな。
★4をつけれなかった理由です。
大過去・中過去と現在の因果関係を張り巡らせ周到な設計図を描き全てのキャラに過不足ない肉付けを施した如才なさであるが、その理数系的演繹手法では枠外の何かは入り込めない。相反する被害者への感情ベクトルが重なる過程では軋轢や葛藤があるはずなのだ。(cinemascape)