★★★ 2020年7月17日(金) 梅田ブルク7シアター3
「新感染 ファイナル・エクスプレス」で日本でも認知され、主演映画が続々公開の運びとなったマ・ドンソク様の新作でございます。
そして、今回はシリアルキラーとノワールのジャンルミックスという新たな地平の開拓を試みておりますが、売れ線要素を合体しただけの安易企画とも見えます。
韓国で量産される2つのジャンル映画の1割も見てないと思いますが、そういう中から「チェイサー」や「新しき世界」、「アシュラ」みたいな掛け値なしの傑作が現れてくる。60年代後半の日本でのプログラムピクチャーの盛衰を思わせます。
で、本作は残念ながら矢張りというか、その他多数の1作でありました。
でも、いいところもいっぱいある。
だいたい、こういった半目する者たちが共通の敵を見出して不承不承に共闘するといった場合、往々にして温い友情とかが芽生えたりでゲンナリさせられるんだが、この映画はそのへんギリで回避してます。
そして何より矢張りマ・ドンソクだ。
この人、微妙に人懐っこ気で怒りの感情ボルテージが見えにくい。であるから、突発的な暴力の発動が衝撃的です。
ヤクザ、刑事、シリアルキラーの三つ巴の戦いは結局ヤクザVSシリアルキラーへと収斂していく。であるなら、中盤以降、刑事を後方に退かせてもよかった。その方がもっと骨太な展開になった気がする。
三つ巴が二等辺三角形に収斂し損ね、追う側同士がホモソーシャルに接近しないのはいいが、なら最初から悪をもって悪を制すパターンでいい。ドンソクの暴力発動の読めなさとアンビバレントなマッチョイズムが新鮮で屋上屋な展開を後方に追い遣るのが救い。(cinemascape)