男の痰壺

映画の感想中心です

悪魔の金

★★★★ 2020年7月19日(日) プラネットスタジオプラス1
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悪意に魂を売った男の話は「ファウスト」はじめごまんとあるのだが、これがちょっと異質なのは、ダニエル・ウェブスターなる実在の政治家を物語に配したとこで、まあ言うなれば彼の英雄譚だ。
なんじゃいなってことなんですけど、それでも充分に面白かった。
 
悪魔に魂を売ったのは貧しい農夫。その顛末はまあ定型と言っていい。しかし、いよいよってときに、ウェブスター登場。なんと裁判をして悪魔を論破して農夫を救う。
言論の勝利であります。
って言うか、そんなんでいいのか?
でも、昨今の歴史上の偉人が能力者だったみたいな展開にも辟易してるので新鮮でもある。
 
悪魔のウォルター・ヒューストンの味もいいが、その一味のヴァンプ、シモーヌ・シモンがソリッドで映画を締めている。
ディターレの演出も堅牢で、金貨がモコモコ泥の中から湧いてくるところなんて時代の劣化を感じさせません。この監督の映画、ますますもっと見たくなりました。
 
積み上げた悪魔との契約話を舌先三寸で粉砕する実政治家バンザイの胡散臭さではあるが、なんちゃって顔のヒューストンのご愛嬌で寓話化。ヴァンプシモンを含め彼らの存在は日常にさり気なく差し込まれる。衒いのないディターレの語り口は有効だ。(cinemascape)