男の痰壺

映画の感想中心です

おもひでのしずく (2010年8月22日 (日))

※おもひでのしずく:以前書いたYahoo日記の再掲載です。

 

新しい時代のとば口で

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最近、聞くたびにイラつくのが
「今は非常事態だから」
という物言いであって、ニュース番組とか見てると政治家や評論家がよく言っている。
不景気でデフレだから、財政緊縮論は一旦おいといて、今は財政出動しなくてはならないらしい。
俺は、とんでもない勘違いな夢想者のたわごとにしか聞こえない。
そういうことを言う人は、今の日本の状況が一過性のものであって、景気循環論的に、遠からず再度、好景気が訪れると思ってるらしいからだ。
戦後の成長神話はバブルの狂乱をピークに終焉し、もはや、財政的テコ入れをいくらしたって、日本はもう90年代以前には戻れない。
今後、税収は減り続け、社会保障は崩壊するだろう。
今は非常事態なのではなく、始まりなのではないのか?
老人の行方不明の問題や、一方で子供の虐待が日常的にニュースで取り上げられるが、これが、今後の崩れ行く時代の端緒ではないことを願いたいものだ。

 

桐野夏生の「メタボラ」を読んだ。
おそらく、これは、ゼロ年代の最重要小説の1つだろう。
何一つ何かの道標が提示されるわけではないが、現状認識において完璧に的確だと思う。

 

先週、何十年ぶりかで奈良の東大寺へ行った。
猛暑だが、すごい人出で、しかも半分が外国人観光客なのに驚いた。
それにしても、大仏殿の中は何時から撮影解禁になったのだろう。
フラッシュを浴びる大仏は記憶よりはるかに縮んで見えた。
柱の穴を我が子に潜り抜けさせる為に並ぶ長蛇の人々。
その先頭で中国人の母親が怖がり泣き叫ぶ子供を穴に押し込め大騒ぎ。

 

勤務先の事務所で数日前から腐臭が漂っていた。
いつまでも臭いが消えないので、横の建物との隙間に入ってみた。
暗がりの隘路の遠くに見える排水溝に何かが見えた。
小さな何かが周囲を飛び回っている。
そして、その表面には小さな何かが山ほどうごめいている。

 

そんな時代もあったねと、きっと思える日がきてほしい。