男の痰壺

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真夏の夜のジャズ

★★★★ 2020年9月27日(日) シネリーブル梅田4

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ジャズに余り興味もないし、造詣もないのでわからんが、60年のこのフェスはジャンルミックス的な混沌を呈している。ゴスペルや前衛やロックやソウルの始祖が入り乱れている。

 

ニューポートでのジャズフェスの記録映画なのだが、このアメリカ南部富裕層の避暑地での4日間を捉えたカラー映像の美しさは「気狂いピエロ」の南フランスを連想させる。大型船で金持ちたちがやってくる冒頭は「ベニスに死す」みたい。

 

ライブの記録映画のアプローチとしてステージ上でのパフォーマンスに特化するスコセッシの「シャイン・ア・ライト」みたいなのを一つの極だとすれば、これはその対極だ。

とにかく、観客席を抜きまくる。観客席どころか、同時期に行われたヨットレースも挿入する。パフォーマンスをじっくり見せろとイライラしそうだが、そうはならなかった。抜き方のセンスがキャッチーだからでしょう。

 

公民権運動の渦中に、かつて奴隷交易の総本山であった富裕層白人避暑地で黒人由来のジャズフェスを行う。これが、どういう意味を歴史的に持つのかわかりません。

ただ、抜かれた観客席の情景には白人と黒人が違和感なく混在している。そして一様にステージのパフォーマンスに興奮している。

意図的な切り取りで演出されたかどうかは知りませんが、適正な視座を感じます。

 

奴隷交易の中心だった避暑地で白人セレブが企画したジャズフェスは混沌時代のとば口の熟れた錯綜を描出する。陽光とデカダンと黒人シンガー。夕刻の薄暮から夜の熱暑へ。対比を強調し時間が造出された1日。ジャンル分化前のジャズの始原と観客の熱気は真実。(cinemascape)