男の痰壺

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鵞鳥湖の夜

★★★★ 2020年9月27日(日) シネリーブル梅田1

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この監督の前作「薄氷の殺人」は、どうにも表層的な感じがして好きになれなかった。これも相変わらず気障ったらしいポーズが鼻につく部分がある。

のであるが、中国アンダーグランドに於けるグループ間の抗争を背景にしてることから、監督イーナンの統御が及ばない混沌が現出しているように思われた。

同じような混沌は、本年公開のジャ・ジャンクー「帰れない二人」、ビー・ガン「ロングデイズ・ジャーニー」なんかにもみられ、テイストも近似してるようだ。中国の急速な高度成長と表裏の関係である非合法集団。成熟してしまった日本のそれとは活力が違うのだろう。

 

警察も介入した騒乱の果てに、女の為にとの思いを胸に逝く男。

その一枚も二枚も上で絵を描く女たち。

類型的な括り方だが、それでも、この監督らしからぬ風がラストには吹き抜けていた。

 

60年代日活アクションを髣髴とさせるダサ鯔背なノワールで浸り切ったポーズに辟易もするが急激な経済成長下のアンダーグラウンドな混沌が否応なく滲み出る。それがグループ抗争と警察介入を混え統制を振り切るカオスとなって顕現する終盤。ラストも鮮やか。(cinemascape)

 

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