男の痰壺

映画の感想中心です

おもひでのしずく (2010年10月8日 (金))

※おもひでのしずく:以前書いたYahoo日記の再掲載です。

 

切ない想い

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1ヶ月ほど前のことになる。
俺は長居陸上競技場に居た。
大阪市内の中学生の陸上部の大会があって、俺の息子も選手に選ばれて出るらしかった。
正直、そんなもん見たくもなかったのだが、見に行きたいと騒ぐやつがいて仕方なかったのだ。
案の定、父兄なんかで嬉しがって見にきてる姿もまばらなスタンドで、淡々と8人1組で繰り返される100メートル走を見てても何の感興がわくわけもなく、やっと、俺の息子が走って2位になったのを見届け、帰ろうかと思ったら、横で大騒ぎしてたやつの姿が見えず、どうも感極まってゴール付近のグラウンド近くの席に走っていってしまったらしい。
仕方なく、中学生だらけの会場をひとしきり見渡し、まあ、なんのかんの言っても運動してる男女の、それなりに真摯な熱気と興奮をわずかに感じて、一抹の郷愁と羨望を感じたりしつつ、俺は競技場を出てぶらぶら歩いていると、壁に張り出された成績表みたいなのに人が群れていて、見れば20人くらいの中に息子の名前もあった。
息子と同じ体操服を着た女子中学生たちに
「ここに載ってるのは府の大会に行けるってことなん?」
と聞くと
「○○君のお父さんですか!」
と嬉しそうに聞いてくるので、俄かにチョイ悪オヤジオーラを発しながら関東弁モードに切り替え
「うむ…君たち同級生ですか。息子のことよろしく」
と言いつつ、ワイルディッシュ且つ女殺し悩殺微笑若干の加齢臭風味を送りつけてやった。
女子中学生たちは嬉しげに笑っていた。
そして、さりげなく立ち去る俺。
視線を意識しながら、俺はかつて感じたことのない感情を覚えた。
それは、若さへの羨望であろうか。

俺は歯軋りしながら独りごつ。
「息子の野郎…羨ましすぎるやんけ!」

数週間後の休日。
「休みの日とか近所うろつかんといて!」
と言われた。
「は?なんなん」
「あんたな、子供が、○○君のお父さんトドみたい言われて落ち込んでんねん。出かけたいんやったら暗なってからにし」

そのときから、俺のオーラは消えてしまったのだ。
今日は久々に親爺どもの映画を見てオーラを取り戻したい。
十三人の刺客」と「ヌードの夜」と「悪人」を見よう。