男の痰壺

映画の感想中心です

シカゴ7裁判

★★★ 2020年10月24日(土) テアトル梅田2

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市民運動団体のリーダーであるジョン・キャロル・リンチが裁判所の余りの横暴に激昂して官吏をぶん殴って拘束される。非暴力を家族に誓ってデモに参加した彼は傍聴席にいる妻と幼い息子に哀しげな視線を送って退廷させられる。

多分、俺がこの映画で最も涙腺が刺激されたシーン。

 

裁判の終盤で学生運動家のエディ・レッドメインと青年国際党のサッシャ・バロン=コーエンが運動のやり方で言い争う。背景にあるのは格差と見てとれる。運動が組織化されれば、セクト主義的な内部対立が起こる。

 

マーク・ライランスの弁護士はポロリと本音をもらす。ベトナム戦争ではなく、第二次大戦だったら弁護は引き受けないと。原理主義的な反戦主義ではない。ベトナム戦争の理が通らない事実は最早覆いようがなくなっていた。

 

こういった法廷の外での多くのファクトが、目を開かせるし、ときには心を揺さぶる映画である事は確かだが、それでも諸手を挙げて評価しきれないのは、肝心の裁判の茶番性による。

彼らの立件は、ニクソン政権発足で新司法長官になったジョン・N・ミッチェルの前長官への意趣返しが発端であることが描かれる。そして、フランク・ランジェラのクソ裁判官がどれほど酷い独善と恣意性で法廷を牛耳ったかが克明に描かれる。

ああ、こんなに酷いことが嘗てあったんですよってことはわかっても、シカゴ7は後に無罪になったってこともわかってる。勝ち馬に乗っかっただけのように思えるんです。

 

いやいや、権力者っちゅうのは時にとんでもない誤った道を進んじゃうんです。だから、よーく監視しとかないといけませんよ。

監督のアーロン・ソーキンは大統領選挙前にどうしても作って公開したかったのでNetflixで作ったと言っている。

であるから、権力者とはトランプなんだろう。

しかし、民主党政権になったって良くなることは多分ない。トランプ政権下で顕在化した中南部の貧困と疲弊はいや増す。そして分断は深まる。

今、映画が描かないといけないのは、現状の否定ではなく、そういった未来への提言なのではないでしょうか。