男の痰壺

映画の感想中心です

おもひでのしずく (2011年6月25日 (土))

※おもひでのしずく:以前書いたYahoo日記の再掲載です。

 

親爺のパラダイス

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「行かはったんですか?」
「いや…なかなかなあ…勇気いるやろ、やっぱ」
「…」
「多分さあ、女子中生とか女子高生とかOLとかでいっぱいやと思うし、男なんて彼女にイヤイヤ連れて来られたのがちょっとおるかおらんかやろし、50の親爺が1人でってのは…絶対浮く思うし」
「平日の最終回とかやったら空いてるんちゃいます?」
「うん…1ヶ月くらいたったら空いてくる思うし…」

とかなんとか会社で事務員相手に言ってた金曜日の翌日土曜。
俺は、抗い難い衝動に突き動かされ、大阪はミナミ、なんばパークスシネマにいた。
連チャンで見る予定の「マイ・バック・ページ」と「さや侍」のチケットを購入し、更に振り絞る魂の叫びを告げたのだ。
パラダイス・キス」10時回の大人1枚…と。
一瞬、空気が止まった気がしたが、気のせいだったのだろう。
世界は何事もなかったかのように流れていく。
第2の関門、開場の列もカップルばっかりの中、寧ろ堂々と俺は1人悠然と入場した。世界を手に入れた気がした。
席に着くと両脇が若いカップルであった。
男の習性として、自分の彼女を男の横には座らせたくない心理がある。
必然として、俺は両脇を男に挟まれてしまった。
苦痛であった。
しかし、映画が始まると俺は文字通りパラダイスへと誘われた。
めくるめく景子ちゃんの可愛らしい表情や仕草に陶然とした。
不覚にも下半身まで反応し、2時間ずっとテントを張ってしまった。
そして、このスクリーンの中のミューズへの思いがもたらす回春効果に感謝した。

見終わったあとも、脳内が麻痺したように朦朧としていた。
おかげで、「マイ・バック・ページ」と「さや侍」は集中できなかった。
むしろ観ない方がよかったかも知れない。

あれから2週間。
脳内の景子ちゃん占有率は直後の99%から10%以下に低下した。
映画を観た感想などHPのファンメールに託し送ったりもしたが、彼女は読んでくれただろうか。

おじさんの日常は、再び灰色につつまれております。
あの原色のカラフルな世界で最高に輝いていた君。
届くわけない手を伸ばし夢幻の世界へ浮遊する。
これぞ泡沫の親爺の「パラダイス」。