★★★★★ 2020年12月17日(木) 梅田ブルク7シアター5
桐野夏生の小説に「女探偵ミロシリーズ」ってのがあって、これが1〜4作目までは普通の探偵小説なのだが、5作目の「ダーク」で突如それまでの世界観を放逐して砂漠のような人間の暗闇に踏み込んでいく。
この「破」を見終えて「ダーク」のことが頭をよぎった。極私的な連想だが。
のっけから初出キャラのメガネ女子マリが、何処ぞやで使徒を迎撃するのだが、このいきなり渦中に投げ込まれる五里霧中は「帝国の逆襲」を思わせる。本来なら「また美少女かよ」と斜めに見る俺だが、そう思わせない疾走感であった。
で、パチンコでも馴染み深いアスカのチーム加入となるが、思いの外この陽性キャラも心地良い。シンジ・綾波のダウナーキャラが牽引する世界を中和してきたのが前作ではミサトだけだったところに強力な陽性の援軍。世界は均衡する。
まあ、この辺までは「序」よりかなり良いわな程度だったんですが、終盤の畳み掛けるようなキャラ放逐と新たなファクターの鶴瓶うちの投入で、ここまで壊すのかとの驚きを覚えた。
こんなことやっちまったら「Q」と「シン」はロクなことになんねえぞと思いました。
とどめは70年代フォークソングの「今日の日はさようなら」ですな。
情緒的なシーンに情緒的な楽曲のヘタレた禁じ手が丸っぽ使い切る覚悟でアバンギャルドな領域に達してしまった。これで★1個加点しました。
新キャラで幕開け渦中に置かれる混迷が心地良い。陽性アスカの加入もあり内省的ダウナー世界が一気に拡張。矢継ぎ早のファクター投入で螺旋状に深耕されゆくかに見えた物語は終盤でシンジ・綾波の極私世界に収斂してしまう。それを最開放する昭和歌謡の朗詠。(cinemascape)