★★★ 2020年12月26日(土) テアトル梅田1
女性としての生きにくさみたいなのを、これでもかと自己正当化して描いてるんだけど、正直わからんでもない部分がある一方で、それでももうちょっと折り合いつけてかなあかんのちゃう?
とオジサンは思ってしまいます。
お一人様行脚とでも言うべき序盤から痛さ全開で、それはそれでいい。痛さから目を背けて虚しい仮構世界で充足してると自分を騙すより余程いい。
であるが、そこからの脱却が、あの程度の自己確認で終わるのでは、前途多難やなあと思えて爽快さのかけらもないのである。
俺は同じ原作・監督コンビによる前作「勝手にふるえてろ」を高く評価する人間だが、今回、世界は収縮し後退したように思えます。
温泉旅館のシーンがいい。出し物の演芸ショーで酔客の慰みものにされる女芸人。それを見て怒りを覚える主人公。
この映画に欠けているのは、そういう外世界へ向けた怒りがドラマの閉塞を打ち破ってエモーションを発動する瞬間だ。
のんは良い。不思議ちゃん少女でいられる年代を過ぎ、多くの苦労を経験した大人の女性として地に足ついた内実を獲得したように思える。これで女優賞とれたらいいのに。心から思います。
お一人様を肯定してくれる内的多重人格との訣別を描いているが、こんなにも3歩進んで2歩退がる的では大丈夫なのかと思える。欧州旅行の件は何の為だったのか。温泉旅館で女芸人を慰み者にする男達への怒りの発動のようなエモーションこそ脱却の要件のはず。(cinemascape)