男の痰壺

映画の感想中心です

Swallow スワロウ

★★★★★  2021年1月5日(火) 梅田ブルク7シアター4

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何度か見ていた予告篇から受ける予断は、異物食がエスカレートしてリンチやクローネンバーグ的に不条理に振れていく展開であった。腹の中で釘や押しピンが人体を侵蝕しメタモルフォーゼが始まる、みたいな。

しかし、いい意味で裏切られた。予告篇を作った人、グッドジョブだと思う。

 

【以下ネタバレです】

映画の中盤で、異物食癖が医者にバレてしまう。俺の予想していた不条理展開ならバレちゃまずいはずなので、あれ?と思った。

そして、映画は徐々に違う方向にドライブし始め、ある件を契機に大きく転がっていく。

だが、不穏な空気は持続され、彼女の思考もわからないので展開の道筋は見えない。

 

結局のところ、「テルマ&ルイーズ」的な男権的な抑圧からの女性の解放。そういう帰結と絵解いてしまうと元も子もないのだが、猫っかむりの貞淑妻の衣を脱ぎ捨て、本性を剥き出しにした彼女のハードボイルドな居住まいはカッコいい。

 

新人女性監督による作品だが、圧倒の演出力といっていい。フィックスのフォトグラフィックな構図の連鎖もいいが、主人公が実父に会いに行く件。心理のゆらめきを表現するため、そこだけが恐らく全篇の中で唯一手持ちカメラを使っている。したたかだと思う。

 

主演のヘイリー・ベネットは「マグニフィセント・セブン」の紅一点くらいしか見た覚えないけど、本作では制作にも関わり期するものもあったんだろう。力演です。ちょっとだけ俺の好きなシャーリー・マクレーンに似てるのもいいっす。

 

剣呑な不条理展開を予感させつつ大きくドライブしていく。不穏な情動を内包したまま。枝葉を削いでみればよくある女性の社会的抑圧からの脱却譚なのかもしれないが、内面にまで侵蝕するかのような研ぎ澄まされたショットの連鎖は内在する意味さえ変容させる。(cinemascape)