「そこのあなた、マスクずれてるから、ちゃんと鼻まで覆ってくれるかな」
「…」
「うーん、聞こえた?適正な着用が決まりだから、鼻出てるとダメなの」
「…」
「あなただけが受けてる試験じゃないから、決まり守ってくれないと」
「…」
「なるほど、そういうことね、あーめんどくせー、いるよね、こういうやつ、ゴネどくの消費者権利ふりかざすクレーマーみたいな」
「…」
「ふっふっふっ、お気の毒さま俺が試験官でさあ、やっちまったなあ、お前さん」
「…」
「いつまでもダンマリ通そうったって、そうは問屋がおろさねえぜ、もう1回だけ言ってやる、これがお前のラストチャンスだ」
「…」
「っていうか、お前はすでに半分死んでいる、ふっふっふっ、えっ、なんだよ、できるんじゃねえか、最初からそうすりゃいいんだよ」
「…」
「うーん、でも上げすぎて今度は口が半分出てるよ、もうちょっと下げて、って今度は再び鼻が出ちまった、なんだよ、これってもしや」
「…」
「アベノマスク」
「…」
「しかも、洗いすぎて縮みまくってやんの」
「…」
「お前なあ、ちゃんと説明書読めよなあ、書いてあったろう、優しく手押し洗いしろって」