男の痰壺

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ヒッチャー

★★★ 2021年1月17日(日) シネマート心斎橋

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カルティックな評価を受けた作品で、それだからこそ40年弱の歳月を経て再上映されたんだろうが、やっぱ少なからず風化してると思う。初見です。

 

車の運び屋が主人公ってところが「バニシング・ポイント」を、理不尽な追撃を受け続ける点で「激突」を想起させるのだが、その2作にあった遍く全篇を貫く疾走感と行けども果てない大地の寂寞が本作では足りない。

 

理不尽な奴を描いているのだから言っても詮ないのだが、それでも、このサイコパスに一貫した行動原理が見られないのも恐怖を拡散してると思います。我々は狂った奴なりの思考論理のってのに戦慄するのだと思うから。出たとこ勝負の感があるし、いざとなったらあんまり強くもないっす。

演じるルトガー・ハウアーも、一見したところ冷徹な無機性を感じさせるのだが、その実どこかで心情を醸し出してしまう。それが「ブレードランナー」のレプリカントではドンピシャだったんですが、この役ではそれがジャマしてる。

と感じました。

 

出たとこ勝負なサイコパスで、それが作り手の怠慢の気がしてしまう。異常者なりの行為の整合性に我々は戦慄するのであって、ハウアーの役者としての資質に依存しており、その資質が内面の論理性を醸すのでやってられない。茫漠な大地の疾走感も足りない。(cinemascape)

 

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