★★★★ 2021年2月27日(土) TOHOシネマズ梅田8
自慢じゃないけど「ハリー・ポッター」を1本も見てない。シリーズ終焉後にダニエル・ラドクリフが己が生きる術をこういう方向に見出したことに特に感慨もないが、それでも嘗ては2の線でメガシリーズを牽引した自負を脱ぎ捨てて、トホホなパン1野郎を誠心誠意演じる彼を支持したいと思った。
そういえば、彼の出演作で唯一見てる「ボーンズ」ってのも、ある日突然頭にでっかい角が生えてあたふたする映画で、ある日突然両手に銃を溶接されてあたふたする今作と似ておりました。
VHX畑出身の監督だそうで、狂躁的に狂った世界を描いて澱みなく闊達で、そういう方向で極北まで達したと俺は思っている「アドレナリン ハイ・ボルテージ」に迫る勢いだ。
そこにラドクリフのトホホ演技が加味されて諧謔趣味も十全。こりゃもしかしたら傑作なのかもと思い始めた後半で、映画は普通になってしまった。
裏ネットで行われている対戦殺人ゲームのスターでニックスなる女がいて、ラドクリフは彼女からロックオンされて追われる。このニックスの最強・最凶ぶりが映画の暴走の何割かを牽引してたのだが、強はともかく凶が徐々に薄れてしまう。彼女と会話が成立するんや、とわかった時点で嫌な予感がして、父娘の挿話が出てきて彼女は小娘と化してしまうのであった。それじゃつまんないっす。
まあ、そういう不満もあるのだけど、トータルでは快作といっていい出来だと思います。
最早お家芸のラドクリフ巻き込まれ型トホホなパンツ1丁野郎が過不足なく全篇を縦走するが、加えてサマラの最強・最凶ぶりがポケツッコミの如くに映画を均衡させる。その暴走は更なる地平さえ伺わせたが、土壇場の乙女チック堕ちが映画を収縮させた。(cinemascape)