男の痰壺

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すくってごらん

★★★★ 2021年3月14日(日) TOHOシネマズ梅田4

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和製ミュージカルの本当の傑作がいつの日か現れてほしい。常々ずーっとそう思っているわけだが、これは、ダンスナンバーの欠如はあるにせよかなりの線までいっていると思う。

 

まず、鈴木大輔の楽曲がキャッチーなメロディラインで且つ懐旧的ロマンティシズムを帯びているのがいい。

それを、歌舞伎の尾上松也劇団四季柿澤勇人といった舞台の発声で鍛え上げられたパフォーマンスで歌い上げられるのが気持ちいい。ヒロインのももクロ百田夏菜が彼らに拮抗する力がないのが惜しいが、許せる範囲だ。

 

東京の本店営業部からヘタこいて左遷されたエリート銀行マンが奈良の大和郡山くんだりで奮闘するって話を縦軸に、金魚の産地で名を馳せる郡山で金魚すくいの勝負だなんだを横軸にしているのだが、ミュージカルとして程よいどうでも良さであります。

この金魚にからんだ意匠をこれでもかとばかりに凝りまくる美術も秀でており見てて楽しい。

 

ただ、惜しむらくは恋の成り行きがどうにも半端且つ尻切れトンボであり盛り上がらない。ヒロインは主人公に最初から最後まで関心がないんです。ここを何とか捌いて終盤に怒涛の盛り上がりを見せてくれたら★5でも良かった。

初見だが監督の真壁幸紀は才能あると思いました。

 

キャッチーで懐旧的ロマンティシズム溢れる楽曲と、それを舞台で鍛えた発声で朗々と歌い上げる尾上・柿澤2枚看板が揃った和製ミュージカルの新たなベンチマーク。凝った美術と展開の程よいどうでもよさ。惜しむらくは恋の成り行きの尻切れトンボ。(cinemascape)

 

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