★★★ 2021年5月6日(木) シネヌーヴォX
ケネス・アンガー初見です。
で、これが一般には最高作と言われてるらしいが、なんのことはない、これは前衛映画というまえに紛うことなき真性ゲイ・フィルムだ。
バイクをメンテする男たちを舐めるように撮って、ピッチリパンツのチャックを上げるとき、股間に釘付けのアンガーの視線がビシビシ伝わってくる。鍛え上げられた素肌に皮ジャン、辛抱たまらんわーってなもんです。
街に繰り出して野郎同士でバカ騒ぎ。1人の男の下半身ひんむいて、あそこに何かかけてギャハハーって楽しそう。
マーロン・ブランドの「乱暴者」が頻繁にインサートされる。ジミー・ディーンの写真も。男たちにとっても彼らはアイコンであった。
イエス・キリストの映画(タイトル知りません)もインサートされるが意図は不明。受難の聖者に自分たちを擬えてるんでしょうか。
20年代に欧州で花開いたアバンギャルド映画の流れが40年代のアメリカに伝播してアンガーの初期作を産む。そしてアンダーグラウンドで映画を撮り続けた彼が60年代にこの作品に行き着く。その映画史の中の蓋然性は興味深い。
しかし、ここには前衛というようなものは余り見受けられない。代わりに余りにアメリカ的なポップソングに全篇彩られている。
マシーンを念入りにメンテするのが楽しいというより、その夢中な男どもを愛でるのが愉しいんですという宣言であり、街に繰り出しての男騒ぎもキリスト巡礼みたいなもんだぜの言うたもん勝ち。欧州発のアヴァンギャルドがアメリカンポップと邂逅した1コマ。(cinemascape)